判決、ふたつの希望のレビュー・感想・評価
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フィルターでないのに。
個人対個人なのに、
個人に国や宗教を投影してしまう。
そんな見方が無くなればいいのになんて、
そんな綺麗事言えないけれど、
劇中、
個人対個人になる、
静寂の一瞬が訪れる。
その瞬間こそ、この映画の、
最も崇高な瞬間ではないだろうか。
思考を促してくれる良い映画。
しかし、序盤中盤の盛り上がりに対し、
終盤の感情の推移が、
いくらか、乱暴な気がした。
終わりよければほにゃららに、
鑑賞後ならなかったのが、ちと残念。
観て良かった
とにかくめちゃくちゃ良かった。最近観た中で一番好きかも。映画で中東問題を多少でも勉強できるのは幸せなことだとも思える。
きっかけは小さなトラブルでも2人の背景によりおおごとになってしまう。でも結局は人と人で、あの車の部品による仕事への拘りでお互いが個として歩み寄ろうとする。久しぶりにパンフレット買ってしまった。
ちょっとした口ゲンカのはずが…
素晴らしい映画だった!
台風接近という悪天候に、正直、ちょっと面倒だなと思っていたのだけど、行って良かった!
観た甲斐があった映画だった
発端は、どこの国でもある口ゲンカだった
しかし、それをきっかけに国を二分する論争へと発展してしまう
私たちが、目の前にいる人と口げんかをしている時、思わず口に出てしまう言葉がある
例えば、小学生だったら「お前の母ちゃんデベソ」のような幼稚な言葉
その言葉を言われた側は「俺の母ちゃん侮辱すんなよ!」と言って激怒する
この映画は、その「侮辱」についての物語なのである
中東という地域のイスラエルに隣接しているレバノンという国だからこそ、「つい出てしまう一言」があって、後から冷静になって考えれば、それは相手を酷く侮辱している言葉だったと分かる…続きを読む
社会性&娯楽性→名作
映画試写会「判決、ふたつの希望」。
些細な口論が発端となり、国家を揺るがす法廷闘争へとエスカレートする様を描くレバノン映画。
民族と歴史、誇りと寛容、暴言と暴行、宗教と難民問題...様々な問題の耐えられない重みを感じ、考えさせられる。
一方で、スリリングな法廷ドラマにもなっており、社会性と娯楽性を兼ね備えた名作。
2018年トップ10入り間違いなし!
痛みをもたらした過去も受容するしかない
ことしの米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたレバノン・フランスの合作映画。
レバノンの首都ベイルート。
レバノン人トニー(アデル・カラム)と妊娠中の妻が暮らすマンションのある一帯は不法建築が多い地区で、住宅補修の工事がはいった。
現場監督のヤーセル(カメル・エル=バシャ)はパレスチナからの難民。
トニーとヤーセルで間でちょっとしたことからイザコザが起こるが、それは国を揺るがすような大事へと発展していく・・・
といったところから始まる物語なのだけれど、まず、レバノンというお国柄を知らないとはじめで躓きかねないので、映画でわかることとと調べてたことを記しておきます。
レバノンという国は中東にあり、西は地中海に面しているが、東はシリア、南はイスラエルと国境を接しています。
中東というと、アラブ、イスラム教というイメージが強いのですが、レバノン国民の4割はキリスト教徒です。
残りはイスラム教徒ですが、イスラム教徒は、スンニ派とシーア派に分かれており、まぁとにかく険悪な関係。
で、問題は南の隣国イスラエル。
そこは、ユダヤ人国家なのですが、イスラエルは第二次世界大戦後に建国され、その後の内戦やなんやで、もともとそこで暮らしていたイスラム教徒のパレスチナ人の多くがレバノンに難民としてやって来、現在は、もともとレバノンで暮らしていたレバノン人とは関係がよろしくない。
しかし、レバノン政府としては、パレスチナの難民を見過ごすこともできず、保護政策も打ち出している・・・
というのが現状。
現在の日本では、そこいらあたりがあまり知られていないので、はじめの方は、状況を理解するのに時間がかかりました。
で、レバノン人トニーは、毎朝の日課であるベランダでの水やりをしていたところ、壊れた雨どいから漏れた水が、下で作業していたヤーセルと同僚にかかってしまう。
下で作業するから・・・と苦情を言いに行ったヤーセルに対して、トニーは、けんもほろろ、取り付く島もない。
というのは、トニーは、レバノンの民族政党のような党のメンバーであり、いまの難民政策を快く思っていない。
そんな彼には、パレスチナ人は、はなから憎しな相手、というわけである。
相手にされなかったヤーセルは、その後、野外の作業場からトニーに対して侮蔑的発言をし、それに腹を立てたトニーは、修理した雨どいを壊してしまう・・・と物語は展開する。
その後、態度を硬化したトニーに対して修理作業を請け負っている会社のレバノン人のボスとともにトニーの仕事場に訪れたヤーセルは、さらに侮蔑的な発言(イスラエルで殺されていればよかったんだ、というような意味)を浴びせられ、暴力行為に及んでしまう。
そして、法廷闘争へ発展する・・・
かなり長々とあらすじを書いたけれども、ここまでが20分程度。
ここまでで、ふたりの社会的な立場が分からないと、映画この後の展開が理解しづらい、です。
(といっても、この後、もっと複雑な過去がわかるので、ここまでは前提みたいなもの)
トニー=レバノン人。キリスト教徒、(小さいながらも)BMW専用の修理工場を営んでいる。そして、パレスチナ人には悪感情を抱いている。
ヤーセル=パレスチナ人。イスラム教徒。難民収容所で暮らしている。が、仕事への信頼は厚く、レバノン人の会社で(不法であるが)就労している。ただし、かっとなる一面は否めない。
まとめると、こう。
このふたりの小さな事件は、その後、レバノン人のパレスチナ人への感情をあらわにし、パレスチナ人の立場を明らかにし、彼らの過去を詳らかにし、プライヴェートの領域にも踏み込んでいく。
そして、レバノンの70~80年代にかけての内戦とそれによる傷跡を明らかにしていきます。
それらの傷は、いまはもう痛まない傷跡ではなく、ただ、痛いことから目をつむっているだけだということも明らかにして、その痛さをどこかしら別のところ(難民=異人といってもよい)に目を向け、内部に抱えた痛みはさらに増幅させていることが描かれていきます。
そんな傷を癒すには・・・
それは、傷は傷、痛みは痛み、そういったものをもたらした過去は過去として受け容れて許容するしかない。
それが「希望」であるだろう・・・とそういう意味で付けられた日本タイトルは、なかなか奥深いものがありました。
原題「THE INSULT」というのは、侮辱の意味だそうです。
必見の感動作
この映画を観て、「国家というのは生身の人間の集まりである」とつくづく感じました。それぞれに家族や仲間、喜びや苦痛、歴史や思想があり、ふとしたきっかけでそれらの違いが揺れ動く様を見事に描き出しています。ストーリーも素晴らしかったけれど、主人公2人が「もう争いたくない」オーラを出しながらエスカレートする裁判に巻き込まれていく、その微妙な感情をデリケートに表現した演技が秀逸でした!
是非20代の若者に観てほしい!
こんなにも、心がゆさぶれるとは思いもしませんでした。
想像以上に深く考えさせられた、素晴らしい映画です。
パンフレットには、どんでん返し連続の裁判映画と書かれていましたが、これはただの裁判ではありませんでした。
人と人の尊厳を訴える、人種を超えた社会派なヒューマンドラマです。
きっかけは些細な口論が始まりでした。
雨樋を勝手に工事したことにより、家の主人から暴言を吐かれてしまった事件。
工事の男は激昂されたことにより、つい感情的になって、汚い言葉で男を罵ってしまいます。
それが許せなかった男は、謝れと彼に訴えますが、工事した男には全く謝る気がありません…。
謝れば許してやると訴える男と、頑なに謝らない男。
なぜこんなにも2人は「謝る」ことに固執したのでしょう…。…続きを読む
舞台はベイルート、妊娠中の妻シリーニと暮らす自動車修理工のトニーが...
舞台はベイルート、妊娠中の妻シリーニと暮らす自動車修理工のトニーがベランダで水撒きをしていると外に突き出した排水管から水が滴り、路上で作業中だった現場監督のヤセールにかかってしまう。ヤセールは配管を修理させて欲しいとトニーに告げるが工事の騒音が気に入らないトニーは拒絶、ヤセールは勝手に修理してしまう。それに気づいて配管をすぐさま叩き壊したトニーを見てヤセールはつい侮辱の言葉を口にしてしまう。近所で揉め事を起こしたくないヤセールの上司はなんとかヤセールを説得して謝罪させようとするが、今度はトニーがパレスチナ難民であるヤセールを侮辱する言葉を口走ったことからヤセールをトニーに殴ってしまい、怒りの収まらないトニーはヤセールを告訴。この裁判をきっかけに二人の些細な諍いがレバノン中を揺るがせる大問題へと発展していく。
互いに譲らないトニーとヤセールの心情を丁寧に描写し、宗教間の対立や内戦の歴史がレバノン国民の胸に深い傷を刻んだことをつぶさに見せつける実に力強いドラマ。裁判を通じて次々に露わになっていく事実とトニーとヤセールが胸の内に秘めた思いが引き寄せる意外な結末に胸を打たれました。
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