「ウチナーンチュでも知らない沖縄」洗骨 shi-naさんの映画レビュー(感想・評価)
ウチナーンチュでも知らない沖縄
ガレッジセールのゴリさん(照屋年之監督)が手がけた作品ということで、正直、あまり期待はしておりませんでした。(照屋監督、スタッフさん、キャストさんすみません…。)
物語の始まりから笑いの渦に包まれます。
笑いを誘うのが、島の人演じるゆうりきや〜の城間祐司さんで、沖縄の大御所お笑い芸人さんです。
母(妻)の死から4年後、洗骨の儀式のため、家族が集まります。
信綱(奥田瑛二さん)は妻の死を受け入れられず酒浸りの日々を過ごし、息子剛(筒井道隆さん)との親子関係は最悪。
名古屋で美容師をしている娘優子(水崎綾女さん)はシングルマザーとして生きる道を選び、家族の理解を得ようとするのですが…。
一見暗そうな内容ですが、絶えずに笑いがあります。
笑った後には涙涙で、また笑い、感情が大忙しです(笑)
観客を飽きさせない手法は、お笑い芸人でもある照屋監督だから作れた映画だと思います。
脱線しますが、タモリさんの言葉で、涙の意味は、
〝子供は自分のために大人は他人のために流す、感情のリセットボタン〟
と発した素敵な言葉があります。
優子が島の女性に悪いように言われるシーンがあるのですが、信綱の姉演じる伯母の大島蓉子さんが最高に格好いい。
『適当に傷ついておきなさい』
という言葉は、優子だけでなく、普段からいろんなことで傷つきやすい私にも胸に響き心癒されました。
あんな伯母が居て欲しかったなぁ…。
女性なら、こんな強い女性になりたいと憧れるのではないでしょうか。
女優大島蓉子さんをもっと知りたいと思いました。
妻恵美子が信綱の前に一瞬だけ現れるのですが、信綱が愛した女性がどんな人だったのか、たったワンシーンですが想像ができます。
信綱が何故4年も立ち止まったままなのか。
男女が恋に落ち、夫婦になり、親になり家庭を築き、家族の原点は人が人を深く愛した時に訪れるものだということを、信綱の弱さから、改めて気づかせてくれます。
子供たちにはわかることのできない、夫としての思い。
子供たちも家庭を持ち、離別があり、親の有難さに気づく。
離れても、いつかまた、家族が一つになる日がやってくる。
見事なキャスティングで、素敵な映画でした。
照屋監督の舞台挨拶付き上映ということで、上映後に観客とのトークディスカッションもあったのですが、観客には洗骨を経験された方や粟国島の方や粟国島と関わりのある方もおり、経験者の方は昔洗骨を経験し怖かったという思いが映画を観て変わった、とおっしゃっていました。
照屋監督は、洗骨を経験された方からこれは洗骨ではないと言われるのではなく、そのように言ってもらい良かったとおっしゃっていました。
本島に住んでおり40年近く全く聞いたことも知ることもない洗骨でしたが、洗骨という風習に、怖さよりも神秘的だという思いが先にきて学べたことは大変良かったです。
家族と、恋人と、友人と、一人で、どなたにでもおすすめできる映画です。