「三鮮ビーフン」詩季織々 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
三鮮ビーフン
『三鮮』とは肉、魚介、野菜等の三種?を使った中華料理のことをいうらしい。湖南省、広州、上海を舞台に繰広げられるノスタルジー溢れる三つのストーリーになっているのだが、ここでポイントは、“チャイニーズ版新海誠”を少しでも脳裏に掠めながら観に行ってしまうと痛い目に合うことである。『君の名は』のあのイメージを自分も残念ながら払拭できずに鑑賞してしまい、その期待値の下を低空飛行されてしまうことのガッカリ感はなかなか抜けない。ただ、だからなのか鑑賞料もお安くなっております的な“保険”は、ここにきて効いてくる。まぁ、仕方ないわな。
中国の話なのになんだか日本のような背景が透けて見えるのがチグハグな印象。1部目の話は、食にまつわる青春時代の思い出。食レポ系の小説を中国でも出来るぞということなのだろうか。まぁビーフン自体は大変美味しそうな描かれ方をしていたので、それだけで成功かと思う。2部目がこの中で一番ダメな作品。これを日本の監督がやっていたことを後で調べて、益々落胆だったのだが。。。物語の発想力の無さに、日本のアニメの将来の暗さを浮き彫りにされた内容であった。まさに“陳腐”
この中で3部目が一番可能性を感じた作品だ。アイデアとしての交換日記ならぬ交換テープという発想が、レトロフィーチャー的で興味深い。お互いに好き同士だが、中々恥ずかしさで思いを告げずにいた二人が、進路で行き違いが起こり、その後の人生に暗い影を落とすという構成は、確かに色々と手垢がついてはいるが、それでもこの切なさ、甘酸っぱさは、万国共通なのだろうか?それをキチンとドラマティックに演出、構成されているこの作品が見どころが多い良作だ。『石庫門』という、遺跡的な建築群の存在も初めて知ったし、こういう長屋的建物は、ノスタルジックな演出としては最良であろう。
アニメだから仕方ないのだが、もう少し、中国ならではの雑多、又は汚さ、そしてそれを飲み込むほどの悠久な画角を表現して貰えたら、もっと中国の発見が期待できたのだが・・・・