「映画と呼びたくない」雪の華 i22さんの映画レビュー(感想・評価)
映画と呼びたくない
つまんないだろうなと思って見たが、その上を行くつまらなさだった。
「8年越しの花嫁」との時もそうだけど、この監督と脚本は恋愛も病気も本気で描くつもりはない。ただ人気のタレント目的の若い子供たちが観に来てくれたら真剣に映画なんて作らなくても稼げるんだろうか。若い子が好きなように作るってことも才能かもしれないけど、そんなことしてもただ映画というジャンルを貶しているとしか思えない。私はそういう映画が他の素晴らしい映画と並んで上映されていることが許せない。
まず、脚本が練られていない。ストーリーが不自然。主人公の女性がなぜオーロラにそんなにもこだわるのか全くわからない。心理描写も心の声や独り言ですませて演出しようという気もない。本当に怠惰な映画である。
恋愛映画なのに「恋に落ちる」ことを製作者が真剣に考えていない。人間はどういう時に恋に落ちるのか。顔が好みだったとかデートして楽しかったとか様々だ。また恋をすると人間はどんな風になるのかという描写が恋愛映画の楽しいところだ。だが、この映画は恋をする過程が全然わからない。お互いがどこに惹かれているのかとかわからないし、いつのまにか好きになっているから観ている方は感情移入できない。この映画の中で主役の男性はぶっきらぼうだけど優しいという設定だけど、ひったくりにあった女性に「追いかけて取り返せよ」とどなるハラスメント男だ。主人公の女性に100万円で1ヶ月間恋人関係になると契約したのにデート中にため息ばかり。「こんなのでいいの?」とか「こんなんで満足?」とか女性を馬鹿にしており、価値観の違いが明らかである。女性の方も内気なようでいきなり明るくなったりと人物描写が下手なためにどういう人間かが終始わからなかった。これも感情移入できない所以だ。病気というものをロマンスの都合の良い道具にしているのも不愉快。病気を行動の理由にしておきながら、病気によってどんな生活の制限があるのかはほとんど描かない。最後の場面で女性が「なんか長生きしそうな気がする」って言って二人で微笑むんで終わり…って病気をなめてるのか。
中島美嘉の歌の「雪の華」を題名にした意味も全くわからない。歌詞がストーリーにあってるってそんなものは大体の恋愛映画に当てはまるだろうね。私だったら「VOICE~契約から生まれた愛~」か「赤いオーロラの奇跡」とかクソダサいタイトルをつけるだろう。