「東西統一後の負け組を描く」希望の灯り odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
東西統一後の負け組を描く
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東西統一後の東ドイツ、スーパーの倉庫係として働く青年の試用期間の日々を淡々と描く。
ドイツ表現派の典型のような説明を省き、描写の中から何かを感じ取れれば由とする演出手法だから、ただ観ているだけでは真意が分からずもやもや感が絶ち切れない。
人妻でありながらちょっかいを出してくるマリオン、明らかに不道徳路線なのだが孤独な青年にしてみれば純愛路線の様、DV夫らしいが彼女の私生活は殆ど語られないので真意は不明・・。
親身に目を掛けてくれる上司のブルーノがなぜか首吊り、昔の長距離トラック運転手時代を懐かしむが、そうまで拘るのなら何故復帰しなかったのか、東西統一の被害者のようだが自由を手に出来たことは彼には意味をなさなかったようだ。妻と同居と嘘までついていたのは逃げられたのか、寂しさに負けるような軟な男には見えないから、邪推すれば青年に責任者の地位を譲ろうとしたのかも・・、ことほど左様に真意不明。
タイトル、原題はIn den Gangen(通路で)、原作の日本語書名は「夜と灯りと(新潮社)」だからその辺から邦題の「希望の灯り」となったのだろうが、陳腐に思える。
原作者で脚本のクレメンス・マイヤーは自身も東ドイツ出身、東西統一で経済的に負け組となった東ドイツの労働者に視点を据えている、そういう意味では社会派の作家なのでしょう。自身も少年院に入り、タトゥーも入れ、建設現場や、警備員、フォークリフトの運転手として働いていたらしい、まるで主人公は彼の投影にも思えます。
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