希望の灯りのレビュー・感想・評価
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スーパーマーケットというかりそめのユートピア
スーパーマーケットという閉ざされた空間をひとつの小宇宙に見立てるというアイデアは決して物珍しいものではないが、ルーティーンの繰り返しのような職場が、主人公に取っては自分を閉じ込めるのではなく、社会というものに繋がるための扉として機能していることに新鮮さを感じた。
一方で主人公に限らず、本作に登場する個人の「家」は一種の牢獄のように描かれている。「家」は孤独を色濃く感じる場所であり、彼らにとってスーパーマーケットは人と触れ合い、仲間意識を共有することができる場なのだ。
しかしやがてそのスーパーも、世の中の大きな流れの中にポツンと浮かんだ避難所のようなものであることが示唆されるのだが、だだっ広いところにポツンとある無機質なスーパーマーケットから豊かな人間ドラマを生み出し、オアシスのような温かみを感じさせてくれた監督の視点に、大きな魅力と希望を感じています。
終始、静かに流れる感じ…
です。
旧東ドイツの大きなスーパーマーケットで働く人々の人間ドラマです。
それぞれが余計なセリフが少なく、周囲の余計な音も少なくて終始静かなやりとりが続いていきます。
セリフが少なめなので、各登場人物の気持を感じ取ろうと引き込ませる意図を感じさせたかった作品なんですかね?
ヨーロッパの方はこんな雰囲気の作品が多い気がします。
嫌いじゃないです。
私はたまにこーゆー感じの観たくなります。
ただ、終始静かで単調な流れなので眠くなりましたが…
笑
オフ・ビート
ジム・ジャームッシュの様な映画だと思った。オフ・ビートってやつ。しかし、フランス映画の様に理屈をこねない。
物語の流れの後ろにあるもう一つの流れを想像させてくれると思った。そう言ったアイテムが映像の中に散りばめられている。
それでいて、立派なコメディ。
ネタバレさせたくないが、テーマが分かりさえすれば、凄く面白い。3つのオムニバスとして、フランス人なら作るだろうな。
東西統一後の負け組を描く
東西統一後の東ドイツ、スーパーの倉庫係として働く青年の試用期間の日々を淡々と描く。
ドイツ表現派の典型のような説明を省き、描写の中から何かを感じ取れれば由とする演出手法だから、ただ観ているだけでは真意が分からずもやもや感が絶ち切れない。
人妻でありながらちょっかいを出してくるマリオン、明らかに不道徳路線なのだが孤独な青年にしてみれば純愛路線の様、DV夫らしいが彼女の私生活は殆ど語られないので真意は不明・・。
親身に目を掛けてくれる上司のブルーノがなぜか首吊り、昔の長距離トラック運転手時代を懐かしむが、そうまで拘るのなら何故復帰しなかったのか、東西統一の被害者のようだが自由を手に出来たことは彼には意味をなさなかったようだ。妻と同居と嘘までついていたのは逃げられたのか、寂しさに負けるような軟な男には見えないから、邪推すれば青年に責任者の地位を譲ろうとしたのかも・・、ことほど左様に真意不明。
タイトル、原題はIn den Gangen(通路で)、原作の日本語書名は「夜と灯りと(新潮社)」だからその辺から邦題の「希望の灯り」となったのだろうが、陳腐に思える。
原作者で脚本のクレメンス・マイヤーは自身も東ドイツ出身、東西統一で経済的に負け組となった東ドイツの労働者に視点を据えている、そういう意味では社会派の作家なのでしょう。自身も少年院に入り、タトゥーも入れ、建設現場や、警備員、フォークリフトの運転手として働いていたらしい、まるで主人公は彼の投影にも思えます。
無口な映像から受ける感情。
旧東ドイツの空気感は知らないが、
ちょっと暗くて寒くて堅い感じ。
そして無口なイメージ。
主人公は脛に傷を持つ青年クリスチャン。
表情は柔らかいが社交性があるわけではない。
スーパーマーケットの同僚たちは、
そんなクリスチャンを好青年として感じている。
国柄なのか土地柄なのかは知らないが、
あまり身の回りの深い所を話してこないし
詮索したりもしない。そういう人たち。
それが居心地の良さにもつながってくる。
無口な人ってのは、よく観察する。
それゆえ、表面的な会話よりずっと
その人の内面をよく知られる。感じられる。
しかも古参の従業員たちはみな
旧東ドイツ時代からの同僚で気心を知っている。
だからこそ、ブルーノが抱えていた闇を感じられなくて
深い悲しみに包まれてしまう。
映像表現からも、その人種性のようなものは
強く感じられる。
ドリーやパンは多用されず、
基本的にフィックスカット。(カメラは固定)
アングルは平面的で奥行きは出さない。
人物のカットは真正面から真後ろへの直線的な切り返し。
セリフ前後の間は、一般的な映画よりも長め。
この「間」が実に内容に合っている。
北野映画を思い起こさせる映像表現に近い。
だからこそ、観客は余計な映像情報を入れずに
登場人物の内面を読み解けられる。
無骨だが実に感情豊かな、
スーパーマーケット=家族のような温かい場所。
じんわり胸に染みわたる、とても柔らかい、いい映画でした。
これが日本のスーパーマーケット映画だったらどうだろう。
パートのおばちゃんの井戸端会議から始まる根も葉もない噂話。
表面的な仲の良さを装って、同僚を陥れる人間模様。
異性にほんの少し好意を持っただけで不倫話にまで膨らませる想像力。
そんな映画は見たくないなぁ。
穏やかに
色々と匂わせながらも、壊れることなく流れる
何かを期待するこちらを、心地よくはぐらかす
うまいなあ
そして最後、ほんの少しのことで幸せになれる
いやあ、いい終わり
孤独の闇、寒くてしかたない寂しさ
主人公は、無口で孤独な青年である。寂しさから、わずかでも暖かみを感じられる人とのつながりに全てを注ぎ込んでしまう。
一方、ブルーノは、孤独の闇に吸い込まれてしまったのだろう。あの酒の飲み方とタバコの吸い方には、鬼気迫るものがあった。
ともすると、自分も孤独の闇に落ちてしまいそうなことがあるから、みんなが寒さに震えながら誰かとの繋がりにすがっている姿が心に沁みた。
なんとも評価のしづらい
仕事場を延々と舞台にしてるのがちょっといい。そして、薄暗いけどあの倉庫みたいな店内が美しくみえる。なんか倉庫でバイトした記憶が蘇って親近感もおぼえた。人間関係や雰囲気も悪くない。
ただ、個人的にどうしてもダメだったのが主人公のキャラ。家勝手に入ってウロウロするシーンはほんとどん引き。。完全なる変質者。職場恋愛で悩みすぎるのもキモいしどういう男だよ、と笑 そういう設定なんで仕方ないが、そこでちょっと気持ちがはなれた。
良い点もありながら、個人的に合わない部分もあった、なんとも評価のしづらいということで平均かな。。
日常の中の小さな喜び
事件らしい事件も起こらない淡々とした物語。たまにはこんな映画も良いものだと思う。まるで実人生を映したかのようで、もしかしたら私も、今こんな生活をしているのかもしれないと、そんな気持ちにさせられる。
特に夜の映像が美しい。主人公の青年が家路に急ぐ横を、何台ものトラックが連なって走るシーンとかとても幻想的。無機質な環境の中に、必死に生きる人間達がいる。特に中年以降の人達には、ずしんとくるものがあるのではないだろうか。
淡々と
ちょっとキムラ緑子みたいなマリオンに惹かれるクリスティアン。
惹かれ方も近づき方も唐突だが、ま、いいでしょう(笑)
フォークリフト、操縦できたらカッコイイだろうなぁ。
淡々と進む映画。静かに鑑賞したい方へ。
理想の職場
刺青を微妙に隠して大型スーパーで働ける寛容さが羨ましい限り、初心者でフォークリフトを運転する不安定さは経験があればハラハラ、ドキドキしてしまう場面でもあり、深夜帯だからこそ?の周りの緩さが和める優しさを感じてしまう。
フォークリフトの練習場面で"Son Lux"の「Easy」が流れるが「モン・ロワ 愛を巡るそれぞれの理由」の主題曲でもあり、映画のジャンルが違うだけで曲の雰囲気も変わってしまう不思議な感覚。
無口な主人公に訳ありな過去がありそうなのは上半身の刺青や昔の友人で何となく匂わせ、マリオンやブルーノに関しては描かない難しい事情が?
クリスティアンの存在感がギリギリに危うさを誤魔化しているような、挙動不審に思える表情を含めた不安定さ。
日常
ドイツのとあるスーパーマーケットで新規に働くことになった青年を中心とした日常が描かれています。
イベント的なものがないため、淡々とした印象が残ります。
そのため、尺が少し長いと感じました。
わたしにはタイトルにあるような希望は、感じ取れなかったのですが他の方はどうなんでしょうか?
静かな映画(^-^)
こういう静かな日常を描いた作品好きです、あのスーパーへ行ってみたくなりました!
夜勤で働いてみたいです、フォークリフトは上手くできないと思いますが(笑)
なんでもないようなことの良さ
冒頭の音楽は2001年宇宙の旅を想起させた。
さしずめ、あのコストコみたいなスーパーは太陽系宇宙、漂うフォークリフトはディスカバリー号か?
次いでに言えば、ブルーノはHAL9000、マリオンはモノリスになるのか?
余談はさておき
ストーリーは侘しい、それなりに過去のある独身男の日常を切り取った内容になっているのだが、その中にこめられた淡々とした流れがリアルに感じて安心感を与える。
いわゆる独身男あるあるもので、自分にとっても、昔自分が感じた一部分のようで、だよねぇと唸ってしまう。
物質的な西側社会ではない、精神的な東側社会の日常の質素な良さが滲んでくる作品。鑑賞後にじわじわ着ます、この作品は。
タイトルなし
旧東ドイツ生まれの作家
クレメンス・マイヤーの短編小説
「通路にて」の映画化
.
ライプツィヒ近郊の大型スーパーを舞台に
社会の片隅で助け合う人々の様子を描く
.
其々苦悩を持つが
皆素朴で優しい従業員たち
人との繋がりの中から生まれる
生きる希望
小さな希望が日常を潤す
静かな映画です
フォークリフト戦争
見始めてすぐ、ちょっと黄色がかった映像のためアキ・カウリスマキ作品かと思った。いや、それは『希望のかなた』ですから!タイトルも似ていた・・・そんな最初のBGMは「美しく青きドナウ」や「G線上のアリア」。最後はクレイジーケンバンドか?と期待したけど違ってた。
青年クリスティアンが仕事を始める際に必ず七つ道具と腕に施されたタトゥーを隠すカットが必ず映される。元は窃盗などを繰り返す不良少年だった彼も心機一転、働くことに喜びを覚えるようになっていく。
ブルーノという直属上司。休憩時間がやたら長かったり、ユルゲンとチェスを楽しんだり、どことなく統一される前の東ドイツでの生活スタイルから脱却できなかったのかもしれない。コストコみたいな大型スーパー。その場所はトラック集配所だったところをスーパーに買収されたらしく、再統一という言葉もベルリンの壁崩壊と絡めていたように感じました。
メインとなるのは人妻でもある菓子部のマリオンに恋心を抱いたクリスティアンの話で、周りの同僚たちもみんな気付いているところが可笑しい。でも、誰も「人妻だからやめときな」などとは言わない。「マリオンの夫は乱暴者でなぁ・・・」などと彼に伝える程度。大型店ではあるが家庭的な優しがにじみ出るスーパーなのです。
フォークリフト講習会でのビデオはまるでホラー映画。逃げたくなります。恋する男はちょっとしたことでミスをする。やばいよ!なんだか事件が起こりそうな気もする。しかし、もっと悲しい事実も訪れる。「海」とか「シベリア」とか倉庫の中の再発見や、天井の高い通路での人生観。どこか寂しい人ばかりが集う店には温かさが満載だった。
いい人
この映画には珍しく悪役がいない。
みんないい人。
観てたら、コストコで働きたくなった。
みんな必死に生きている
ドイツの巨大スーパーマーケットが舞台、主人公は内気で刺青の多い青年、在庫管理係として採用されて先輩から仕事を教えてもらう。
いろんなタイプの人たちがいるが、みんな必死に生きている感じ。
主人公は自分より年上の同僚女性に恋をしてしまい・・・。
みつめる視線が温かい。
大量消費時代の終わりに
旧東ドイツ領内にある巨大な会員制スーパーマーケットが舞台である。
天井に届かんとする陳列棚いっぱいに並べられた品々。
どこか暗さを感じる店内。まばらな買い物客。
廃棄処分となった食品を貪る従業員たち。
資本主義に凌駕されつつも、夢のような生活を送れると信じたが、
結局、持つ者と持たざる者との乗り越えがたい断絶に打ちひしがれた人々が、
かつて培った連帯感の残滓を求めて避難したシェルターのようだ。
彼らは、スーパーマーケットに集い、共に働く。
スーパーマーケットこそが本当の家庭で、職場の仲間こそが本当の家族だと信じている。
虚飾まみれの家庭に、旧体制の瓦解を知らない世代の若者クリスティアンが仲間入りする。
体に刻まれた後ろめたい過去の名残である刺青を、制服の襟や袖で隠すようにして着替えるクリスティアン。
彼のルーティンが板についた頃、事情は異なれど職場以外に居場所がないという共通点からか、クリスティアンと古参の従業員たちの心がつながり合う。
上司のブルーノ宅で酒を酌み交わしたあとの帰り道の情景が美しくも哀しい。
大きな通りを大量消費の象徴然とした大型トラックが連なって駆け抜ける。
その脇を、そのトラックが運ぶものの恩恵に決して浴することのないクリスティアンがとぼとぼと歩いて帰途に着く。
その頃、かつてはそのトラックの運転手をしていたブルーノは、自宅で人生における決定的な決断を実行に移していたのだ。
クリスティアンが心を寄せる人妻マリオンとの、プラトニックな恋愛関係が清々しくも痛々しい。
エンディングで二人が聴く波音は、クリスティアンがマリオンの自宅で見た作りかけのパズルに描かれた海辺の音ではなかったか。
決して訪れることができないであろう彼の地のイメージを、寄り添いながらフォークリフトで共有する二人の後ろ姿に、タイトルとなっている「希望の灯」を見出すことは、正直できなかった。
あのスーパーマーケットもまた永遠ではないからだ。
あそこに集う彼らが、いつかほかの居場所を見出すことはできるのだろうか。
大量消費時代に終焉が訪れようとするいまと重なって、彼らの姿が淡く滲んで見えた。
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