ドント・ウォーリーのレビュー・感想・評価
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アルコール依存症と半身麻痺で人生とどう向き合うか
どうしようもない過去にとらわれ、
未来に絶望するしかなく、
ネガティブに陥ってしまう人生を、
真の意味で立ち直るために必要なものは何なのか。
主人公はアルコール依存症で、かつ、飲酒運転が原因で半身不随に陥る。
持ち前のタフさとシニカル性で、笑い飛ばす・・・わけにはいかず、周りも自分も傷つけながら生きていく。
禁酒セラピーを通じて立ち直っていく男の、実際に会った物語。
最悪ともいえる状況に陥った際、
それを改善するために、
人生を真っ当に生きるために必要なものは、「赦し」だった。
自己を肯定し、事実を受け入れ、人を憎まず、相手を許す。
実に宗教的な思想だが、自己啓発の手段としても、時に人生にはこうしたことも必要なのではないかと考えさせられる。
Gus Van Sant
ガス・ヴァン・サント監督の脚本と演出が光る最高の一本。
彼の作品といえば、一番の有名作は、”Good Will Hunting"(1997)です。この作品は、日本でも超有名で多くの人が目にした作品ではないでしょうか。2人の関係に涙する、未来に残る作品の一つです。そのガス・ヴァン・サント監督が手掛ける、2018年の最新作。主人公となる、実在の人物カートゥーニストのジョン・キャラハンが今回の題材です。予告編を観てもわかるように、ジョンは車椅子生活を余儀なくされたカートゥーニスト。彼が描くカートゥーンには賛否両論があり、そのストレートで辛辣なテーマは、物議をかもすものばかりです。
この作品に驚かされたのは、ジョンのキャラクターの描き方。ジョンは車いすに乗って生活していますが、そこへの経緯や、彼のほかの問題点はまだまだたくさんあります。一見、バイオグラフィーを読んだだけでは、散らばった特徴だと思いますが、この映画を観ると、彼が生まれて、幼少期を過ごしてから、彼が描くカートゥーンまでのすべてがつながっていることに気づきます。また、その描き方も単純に時間軸に沿っていくのではなく、むしろ、時間軸とは逆方向に彼の生い立ちや、カートゥーンに描かれた内容が解き明かされていきます。その順番も、時間軸というよりも、キャラクターアークやストーリーに沿っているので、少しずつ明らかになっていく彼のキャラクターに感情移入できるようになっています。特に、彼の親の話が出てくると悪露は、彼の人生の礎になっている部分で、とても深くますぐに描かれています。
そして、技術的な面をいうと、編集もかなり、トリッキーでした。先ほど述べたように、時間軸に沿ってではなく、彼の感情でストーリーが動いていくのは、編集の力が大きく影響する部分です。アルコール中毒のしみなーで自分のストーリーを語る部分で、動くストーリーは、導入はとてもインパクトがあり、テンションを高めますが、そのストーリーに入っていく流れは。とてもスムーズ。それは、セミナーでの彼の感情が、過去のストーリーの当時の彼の感情を示唆するように、2つのシーンの橋渡しを見事に果たしています。
また、彼のだめ石友いうような180ラインのクロスの仕方は面白い。一目見ただけで感情の移動がわかるのはすごい。ガス・ヴァン・サント監督がやりたいことは、そこが中心だということもよくわかります。
ホアキン・フェニックスもかなり来てますね。強いキャラクターに負けないような、強い演技は今後も見ものです。
自身を風刺してしまう自虐的ドラマ
自虐的ドラマというか、まさに自業自得。酔っぱらって交通事故に遭い四肢麻痺になってしまった、実在した風刺漫画家ジョン・キャラハンを描いた伝記映画。
人や社会をバカにする風刺漫画を描いている本人が、最低のバカ人生を背負っていることを、自虐的カミングアウトするように作られている。
本作は、2014年に逝去した名優ロビン・ウィリアムズが、自分自身が主演することで約20年前から映画化を考えていたもの。
当時、公開されていた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1998)のガス・バン・サント監督に声がかかったが、紆余曲折を経て、ついにホアキン・フェニックス主演で完成した。
現在公開中の「ビューティフル・ボーイ」のコメントでも書いたことだが、ハリウッド映画には年に何本も、アルコール依存や薬物依存の主人公が出てくる。日本映画にはめったに見られない。むしろ薬物依存症に関しては、社会追放して臭いものに蓋をしてしまう。
本作には、AA(アルコホーリクス・アノニマス)という、"アルコール依存症"を脱するために自由意思で参加・活動する社会互助グループが出てくる。
日本にも500~600グループがあるのに、一般的には知られていない。この依存症への認識の低さが日本とアメリカの大きな違いであり、映画での描かれ方の差である。
キャラハンがアルコール依存を克服するまでの経緯を、"アル中あるある話"を織り交ぜながら、風刺漫画家として社会復帰するまで、かなり奇妙な実体験として披露する。
そのなかで支えあい、尊敬する仲間たちとの関係性や、過去の自分と向きあい克服するために"赦しあう"ことの大切さが印象に残る。
感動ドラマではないが、リアルな体験談だ。
(2019/5/7/ヒューマントラストシネマ有楽町/ビスタ/字幕:栗原とみ子)
☆☆☆★★★ 観る前は、単純に車椅子に乗った風刺漫画家の話だと思っ...
☆☆☆★★★
観る前は、単純に車椅子に乗った風刺漫画家の話だと思っていた。
勿論、彼自身が実在した人物であり、その彼の生き様を描いているのですが。その為、映画自体が前半はアルコール依存性。中盤からは神の存在を感じるが如くの、宗教的な側面が強調されて来ます。
彼の住む部屋には1匹のペット(ハムスター?)が籠の中で飼われている。
それまでの長年に渡って抱いていた母親への憎しみ。
だが、その様な憎しみや怒りを抑える事によって、神への赦しを請う。
それまでは、多少絵を描く場面は有るものの。アルコール依存の話が延々と続いていた。
だが、或る奇跡(おそらくはアルコール依存による禁断症状による)から、彼の考え・生活環境は一変する。その際に、このペットが籠の外へと出るのは。おそらく演出上に於ける、彼の内なる心の解放を意味しているのでは?と感じました。
以後、彼は。それまでの鬱憤を吐き出すが如くに、漫画を通して 本物の自分を曝け出す。
但し、生来のシニカルな性格はそのままな為に。神の存在を感じながらも、差別的な表現すら厭わなくなるのが何ともではありますが…。
…と、此処まで書いて来ると。一見して難しい映画の様に見えますが、全く逆で。物凄く分かり易い。
ただ、…ただ、何となくなのですが…。
後半に行くに従って、彼の心の解放を手助けする或る人物。
禁酒会のリーダーで、その中でのグループリーダーでも有る彼(実はゲイ)の存在。
或る意味では新興宗教の様にも映るこの会との関わりから、映画本編の色合いに宗教的な色が増して来る。それが、終盤でのこのリーダーとの対話等を含め。最終的に、ホモセクシャル的な要素が色濃くなって行く感じがします。
極めて単純な映画に見えて。体操をする人達等の比喩的な(おそらくは)宗教的な要素の意味だったり。(この監督だからなのか?…と言える)ホモセクシャルな部分等。我々日本人にはなかなか理解し難い部分の本質的なところは、どれだけの人が理解出来るのだろう?…と言う気が少ししたのが正直なところでした(。-_-。)
2019年5月8日 ヒューマントラストシネマ有楽町/シアター1
突き刺さらない
下半身麻痺になってからの苦悩や、アル中の克服、母親のことなど波乱万丈な人生の生き様が真に迫って来ない感動するような場面にも何か拍子抜け。
気が付けばソコに居るヒッピーなヘルパー、ちょっとした出会いで付き合ってる影の薄い役柄なR・マーラなど説得力のある描写が希薄で実話がうやむやに!?
J・ヒルに心酔して洗脳されてしまうのか?ってなP・トーマス・アンダーソンの「ザ・マスター」を思い出してしまいそうなJ・フェニックス。
キム・ゴードンの出演はさすがG・V・サントと頷ける起用が良し。
弱者からの復活
主人公のジョンが新たな人生に幸福を感じている描写もナイスな気分になったが、それ以上に、グループセラピーの主催者ドニーの言葉に惹かれた。相手の心理状態を把握し、言葉を選んだ質問やアドバイスは、哲学的で美しい姿勢だと感心した。この映画好きだ。人に対する慈しみがある。風刺的な鋭い視線もある。自分を許すことで、次に進める教えもある。ストーリーの展開もよく練られていると感じた。神は決して見放さないと信じたい。
依存症治療映画みたい
交通事故による脊髄損傷で胸から下が麻痺したが、新聞や雑誌に掲載されたブラックな1コマ風刺漫画家として活躍した、ジョン・キャラハンの人生を描く作品。
予告編では、生きることを支え助けてくれた人々との心の交流が……という雰囲気でしたが、観てみるとさにあらず。
事故の原因となった【アルコール依存症】からの脱却映画の要素が大きかった。
しかも、薬などの医療にはあまりスポットライトは当たらず、家族や他人を恨み自分を憎んできた考え方を変えようと取り組んだ、懺悔を軸にした自己啓発プログラムに近いキリスト教の宗教洗脳的治療が主軸でした。
普通なら感動するんでしょうが、中島らも『今夜、すべてのバーで』、吾妻ひでお『失踪日記』を読んだ私には、内容的には普通に感じてしまいました。
おまけに、作中の時間軸がいったりきたり。
何かトラブルがあるごとに、その原因と解決を導くのに、回想シーンなどを挟み込みすぎ。
しかもワイプを多用して、インサートやプレイバックばかり。
こちらの理解力や記憶力が低いせいなのかもしれないですが、終わったと思ったらまた昔に戻るの繰り返しで、全体の流れを理解しにくく、編集処理が下手に感じてしまいました。
人生はいつも美しい
たとえ糞のようでも、人生はいつも美しい、ということを素晴らしい撮影からも教えてくれる作品。特にルーニー・マーラの登場シーンは至宝のように美しく、実生活の二人の愛が溢れているかと思うほど。
ただ、時系列に従わずに作られているので若干分かりづらく、一方でドニー(ジョナ・ヒル!!)のもとで行われるグループセラピーの「ステップ」がなに由来か不明ながらかなりバイアスがかかったものに見えて、気になった…
胸に染みるセリフが目白押し
己と心底真剣に向き合う経験なんて
既に50年以上も生きているが
今まで皆無と言っていい。
グループセラピーのシーンが
とても魅力的だった。
事あるごとに自分に言い訳したり
自分に嘘をついて蓋をしてしまった
置き去りのおいらの思いを
もし掘り出すことができたなら
おいらも生き方が変わるだろうか。
映画館を出るとき
少しだけ心が軽くなるような
おいらにとって大切な1本となった。
ジョンとは表と裏のように
付かず離れず寄り添っている
どこか胡散臭く謎めいたドニーの
悲しき顛末に心が震えた。
フォアンキンの表情がいい。
ガスバンサント監督は、いつまで
経ってもガキンチョだな。
それがいいんだ!
ルーニーマーラーがいいね。
はやくいってね。笑
ジャックブラックや
いろんな芸達者たちが
笑かしてくれるね。
GWに飽きたら、人間ドラマで心を洗って
まず、予告でガス・バン・サントの作品がやると知った時こんなに興奮するんだなと我ながらビックリした。それくらい自分にとっては好きな監督で、パラノイドパークや小説家と出会ったら、エレファント、グッドウィルハンティングなど立て続けに観たのを覚えている。全ての作品を観たわけではないが、バッドエンドみたいのは基本的になく日常にありそうな事、普段視界に入っているが見落としているような人を掘り下げ、今この世界で生きていくには何が大切かを優しく教えてくれる。
ガス・バン・サント未体験の人はこれを機に是非見ていただきたい。
今作も依存症と身近な人を許せずにいる主人公を通して、ゆっくりと自分を取り戻していくことの大切さを教えてもらった。
印象的なシーン
ラストのホールのような所で講演をしているシーン
鑑賞後詩作…
ずっと最悪な日に
僕は生まれてしまったと
思っていたんだ
でも、最悪な一日はきっと
何気ない一歩で
最高の一日に変わる
それを教えてくれたのは
僕自身なんだ
いくら靴が汚れても
この一歩は
最高の一日への
スタートなんだ
キツかった
60本目。
ホアキン・フェニックスの演技が良かったんだけど、酒を止めた俺にとっては観ててキツかった。
流石に手が震えるとかはなかったし、禁断症状とかもなかったけど、他人事には思えなかったな。
ストーリーの展開、構成が面白かった。
ジャック・ブラックが坊主になって出てきた時は、クリス・オドネルにソックリ。
ま、痩せればだけど。
許すこと、信じること
神は、こんなにも大変な困難を課してしまったのか。
だが、ジョンは少しづつだが、克服していく。
物語は、時代前後させながら、ジョンがなぜ車椅子の生活になったのか、アルコール依存になったのかを徐々に明らかにしていく。
そして、どのようにして、それらを克服したのかも…。
多くの依存症の人たちに共通なのかは、僕には分かりようもないが、ジョンは最後に依存症の一番の原因と思われる母を許した。
これは、依存症から回復するために大きなステップとなった。
また、身体が思うように動かずとも、僅かに使える手で書ける絵が、自身の才能を発揮できるツールになるかもしれないことを知り、自分を信じてトライを重ねてみた。
結果は、実在の人物で証明済みということだが、おそらく、ハンディキャプや依存症も関係なく、多くの人に許す勇気や、自分を信じてみる勇気の大切さを気づかせる作品なのではないかと思う。
こいつ酒がキレると沢じ…泉ピ…齋と…
実在した車椅子の風刺漫画家ジョン・キャラハン話。
身体が不自由な主人公の苦悩や救いの話ではあるけれど、メインはアルコール依存症との戦いだし、風刺漫画もどうでも良い感じ。
13歳で酒にハマり友人と呑みながら車を乗り回す主人公。友人がハンドルを握っていた際に事故になり、脊椎損傷。首から上と両肩以外動かない状態に。(描写からは肘、手首は動かせる模様)
自暴自棄やショックからもあるだろうけれど、元々の性格が人に対する感謝はなく、悪いことは人のせいという感じの主人公。
メンタル強すぎなのか?セラピーでのグループトークの有効性がイマイチ理解できない自分には結局は意志の強さと信念だろうという思いと、人を許すのは自分を許す為という宗教がかったところがみえつつも成長して行く主人公に温かい気持ちになった。
障害者が特別なものであってはいけないのはお互い様。頭と終わりは素晴らしかった。
深酒で消化不良気味のアル中復活物語
主人公を描くのに、アル中、障がい者、アーティスト3つの視点が、いまいち絞りきれていない中途半端な印象でした。漫画が動き出すシーンや漫画を通じてスケボー少年たちと仲良くなるシーンは非常に味があるので、アーティストの側面からもっとアプローチして欲しかったけど、中盤はアル中セミナーのお説教が繰り返されるばかりで寝落ちしそうになります。J・フェニックスは相変わらず上手いけど、同じ時系列なのに太って見えたり、痩せて見えたりするのはなぜ?
もう少し偏った方が良かったかなと。
劇場での予告編を観て、なんとなく興味が湧いて鑑賞しました。
感想はと言うと…なんと言うか…
故ロビン・ウィリアムスが好みそうな作品ではありますが、ハートフルで何処か毒気があるんだけど、なんか中途半端な感じがしなくもないんですよね。個人的に。
酒に溺れ、自暴自棄的な行動を取るジョンが交通事故から半身麻痺になり、身障者として車椅子の生活を余儀なくされるが、酒浸りで周囲にも高圧的な態度は相変わらず。
だが、グループセラピーを通じて、断酒から自身の変化と周囲のフォローに触れ、徐々に変わっていき、風刺イラストで自己の解放と改革をしていくと言うのが、大まかなストーリー。
グループセラピーの部分が結構中弛みがしなくもなく、2時間の上映時間が割りと長く感じます。
言わんとしている事は分かるけど、ジョン自身が切り替わるのがちょっと遅い。
この辺りはもう少しテンポ良く行く事と風刺作家とエッジの効いた風刺イラストを使った部分の創作にもう少し焦点を当てて欲しかったかな。
ジョンの様々なイラつきは幼少期の母親との件がトラウマとなり、威圧的な態度から周囲との摩擦を作っていくがアル中寸前の酒浸り。
グループセラピーと断酒をしていく事で自身を見つめなおして、周囲との協調を図っていくが、個人的にはそこまで綺麗にまとめなくてもと言う感じがします。
誰だっていろんな過去があるし、お酒を失敗もあるでしょう。勿論重度のアルコール依存には量を減らすと言った生半可な事では追いつかないと言うのも分かりますが、どうも極端な感じがしなくも無いんですよね。
また、グループセラピーの距離感も人によるかな?と言うのが感想。
グループセラピーと言うカウンセリングに接する事が多くないからなのか、踏み込む事と時には少し退いて距離を取る事が大切であっても、それって感じ方は人それぞれじゃない?と言う感じがします。
一番の違和感は日本との制度の違いでしょうか。
身障者には生活保護費から介助人のお世話まで国がすると言うのはビックリ。
正直事故を起こしたのが自業自得な部分もあるので、正直恵まれてるなぁと思いますし、ここにどうしても引っ掛かってしまった。
ただ、ちょっとした切っ掛けで世界は変わると言うのは分かってはいるけど、それが実は難しくて、大半はそこに葛藤する訳なので、簡単に変わってもどうかなとなりますが、他人事にせず自身の事と考えた時にいろんないろんな事が垣間見えたりします。
それでも変われない部分もあるし、誰かの手を借りなければ、食事1つ取っても不自由な身体には変われなければいけないのも分かるけど、綺麗にまとめようとし過ぎて、ちょっと乗り切れなかったかな。
この辺りは昨年末に公開された邦画の「こんな夜更けにバナナかよ」の方が身障者の方の振る舞いや気持ちが届いたかなと感じます。
ホワキン・フェニックス、ルーニー・マーラ、ジャック・ブラックと良いキャスティングでもっとガツンと来る作品に仕上がるかと思うだけにいろんな部分でもう少し偏った方が良かったかなと思うからこそ、ちょっと惜しい作品ではあります。
全68件中、41~60件目を表示