「自身を風刺してしまう自虐的ドラマ」ドント・ウォーリー Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
自身を風刺してしまう自虐的ドラマ
自虐的ドラマというか、まさに自業自得。酔っぱらって交通事故に遭い四肢麻痺になってしまった、実在した風刺漫画家ジョン・キャラハンを描いた伝記映画。
人や社会をバカにする風刺漫画を描いている本人が、最低のバカ人生を背負っていることを、自虐的カミングアウトするように作られている。
本作は、2014年に逝去した名優ロビン・ウィリアムズが、自分自身が主演することで約20年前から映画化を考えていたもの。
当時、公開されていた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1998)のガス・バン・サント監督に声がかかったが、紆余曲折を経て、ついにホアキン・フェニックス主演で完成した。
現在公開中の「ビューティフル・ボーイ」のコメントでも書いたことだが、ハリウッド映画には年に何本も、アルコール依存や薬物依存の主人公が出てくる。日本映画にはめったに見られない。むしろ薬物依存症に関しては、社会追放して臭いものに蓋をしてしまう。
本作には、AA(アルコホーリクス・アノニマス)という、"アルコール依存症"を脱するために自由意思で参加・活動する社会互助グループが出てくる。
日本にも500~600グループがあるのに、一般的には知られていない。この依存症への認識の低さが日本とアメリカの大きな違いであり、映画での描かれ方の差である。
キャラハンがアルコール依存を克服するまでの経緯を、"アル中あるある話"を織り交ぜながら、風刺漫画家として社会復帰するまで、かなり奇妙な実体験として披露する。
そのなかで支えあい、尊敬する仲間たちとの関係性や、過去の自分と向きあい克服するために"赦しあう"ことの大切さが印象に残る。
感動ドラマではないが、リアルな体験談だ。
(2019/5/7/ヒューマントラストシネマ有楽町/ビスタ/字幕:栗原とみ子)