「キャラクターの心情描写がもう少し欲しい」芳華 Youth つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラクターの心情描写がもう少し欲しい
自由を制限され選択すらままならない激動の時代を生きた人たちの恋は、作中で披露される舞や音楽と相まって、非常に甘く、そして苦い、青春全部盛りのような魅力があり、良い映画だったと断言できる。
しかし、良い映画と面白い映画はイコールとは限らない。本作は少々退屈に感じた。
まず前半の半分くらいがベースになる文工団のシーンだが、登場人物が多く誰が誰やら把握しきれない。最後まで観れば、シャオピンとリウ・フォンとスイツ以外は覚えなくても大丈夫だとわかるが、初見では判断が難しい。
しかし、誰が誰に恋心を抱いているかは重要だと思うので、出来れば把握したいところだが…
次に、長い歳月の経過がある作品なので中盤以降は唐突な変化が多く、明らかに描写不足。途中経過のようなものがなくて結果だけが急にくる感じだろうか。
映画の尺に合わせなければならない苦労は理解できるけど、序盤の文工団のシーンに尺を使いすぎてバランスが悪かったように思う。
それと、シャオピンの恋心は、ちょっと秘めすぎじゃない?
彼女が主人公だと思うけど、気持ちが隠れすぎててどう応援していいのかわからないんだよね。せめて観ている私たちにはもっとハッキリ示して欲しかったな。
結果、気持ちが乗らないので、仮にシャオピンの想いが成就したとしてもあまり嬉しく感じないし、破れたとしても悲しく感じない。
恋、舞、音楽、映像、なんなら戦闘シーンも、美しさに変えて、苦い歴史の上に乗せた美と醜の対比、甘と苦の対比が素晴らしいけど、物語がとっ散らかって、出来の悪い「さらば我が愛 覇王別姫」のようだと思った。
青春映画としてシャオピンたちと同世代の中国人には刺さるのだろうか?
世代も国も違う私には美しさを感じ取れる以外には何も刺さらなかった。