「メッセージが強すぎて、エンタメ感が薄れている。」アナと雪の女王2 s kさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセージが強すぎて、エンタメ感が薄れている。
アナ雪は社会現象とも言える作品になったが、こちらの2は、あまり話題にならなかった印象がある。
何故、ならなかったのか。
個人的な見終わった感想は「お、おう……」と言った感じで、確かに1のようなカタルシスは無かった。
では何故そうだったのか。
個人的に感じた疑問を箇条書きにしてみた。
・2人の主人公の物語が並行で進む割りに、混じり合うのが最後の最後なので、視点のブレが酷い。特に3人目扱いのクリストフは、物語の蚊帳の外で、彼のパートは進行の妨げになっている。
・エルサは1で気づいた真実の愛を蔑ろにしがち。声が聞こえても周りには黙っているし、一般人に危ない事はさせられないとアナとオラフを突き落とす。クリストフに至っては話もせずに置いて行く。3年の月日は、彼女から魔法の力への偏見を取り除いても、コミュニケーションの向上は出来なかったようだ。
・エルサの魔法の秘密は、明かされるようで明かされない。魔法の森⇄王国の架け橋として生を受け、だから第5の精霊に選ばれたってのは……。BDで両親がエルサの事を語るシーンがあるらしいが、そこを削ってしまった事で、エルサの魔法への深度が浅くなってしまっているように感じた。あと、魔法の森の住民であるノーサルドラの人々は、精霊の力と共に生きてきただけで、精霊の力を自由に使える人種ではない。だからこそ、アートハランでの描き方を丁寧に行う必要があるはずなのだが……。
・同じ境遇のアナは、エルサの対比のポジションの為に、一般人の代表になっているように感じる。
・クリストフは、物語の進行において、ただただ邪魔。コメディパート担当なのは分かるが、格好良い女性キャラの対比に貶められている。
色々書いたが、この作品の根幹は、やはり、
・歴史修正と民族間融和の意義
・自分らしく生きられる場所を探す事の素晴らしさ
の2点とも言える。
そのメッセージ自体は、やはり大切な問題であり、蔑ろにする事は出来ない。
ただ、大事なメッセージを二つともエルサに担わせているので、アナ居る?ってなってしまう。
音楽は前回と同じ作曲の為、世界観を崩す事はない。特に後半の曲も良い。特に「みせて、あなたを」は、「イントゥジアンノウン」よりも、よほど名曲だ。物語の根幹の曲の為、マーケティングで使えないのが悔やまれただろう。
盛り込むべき強いメッセージのせいで、物語がぼやけてしまう。
近年のディズニーはエンタメを蔑ろにしがちにも感じ、社会性へのアプローチに踊らされているようだ。
結局、つまらなくもないし、メッセージも大切だが、普通程度の作品と言った印象を受けてしまった。
子供ならもう少し違う捉え方をするかも知れないけど、作品全体がダークな印象なのと、視点がブレるせいで、キャラ物程度の印象しか与えられないのかなぁとも感じてしまった。
p.s.
セクハラを容認する訳ではないが、ラセターが抜けてから、ぼやけた物語が増えたように感じる。ラセターが抜けたのか、それとも多様性時代に配慮しなければいけないものが増えたからなのか。