「神話とおとぎ話の前作から、神話と冒険物語へ」アナと雪の女王2 のんたさんの映画レビュー(感想・評価)
神話とおとぎ話の前作から、神話と冒険物語へ
6歳の娘と吹替版を鑑賞。
娘には難しい内容だった。最後もどうしてそうなったのか理解出来ていなかった。しかし、愛らしいオラフや、新キャラブルーニ(火の精霊)のお陰で「楽しかった‼️」とのこと。なら良かったよ。
一方保護者は大変楽しめた。子を持つ親の世代には、ジーンとするシーンが要所要所につまっていて涙を誘う。
前作の分かりやすい万人受けする「おとぎ話プラスα」とはテイストがかなり違う。公式パンフレットを読むと、続編を作るにあたり、前作の姉妹の心理を心理学者やトラウマの専門家と追求したり(自分たちで作ったのに?)、北欧の神話やおとぎ話をさらに掘り下げたりと、矛盾や違和感を無くすために、新ストーリーにかなり非ファンタジックな観点からアプローチした様子。そのせいか、ファンタジーでありながら、論理的過ぎる部分があり、ディズニーのミュージカル映画がそこまでする必要があったかどうか…と思ってしまう。果たして観客がこれを求めていたかな…と。エルサだけ魔法が使えてあら不思議〜でも綺麗ね〜で良かったわけだ。そこに理由はなくても誰も疑問に思わなかったし、みんなその不思議な魔法をファンタジーとして何なく受け入れたのだが、今作はその理由付けが超現実的アプローチでメインストーリーとなっている。
それで少し、ストーリーが一人歩きしている感は否めない。前作の、子供でも分かる今までにない新しいプリンセス物語とは違い、今回は少し複雑。エルサの魔法の謎解きがメイン。コミカルな要素は、とりあえず入れとかないと!と取ってつけたかのよう。閑話休題的な立ち位置。
オラフの何気ないウンチクすらも伏線となっていて、冒険アクション要素が高く、エルサの魔法も、華やかというよりは不気味な美しさが際立つ。テーマが「秋」だけあり、全体的にダークな色使い、暗闇や夜の描写が多い。紅葉の森は大変美しいが、霧に包まれ一度入れば二度と出られないと言われる閉ざされた森に入ってしまったのに、(エルサ)「この森、とっても綺麗だわ」は、普通の心臓の持ち主にはなかなか言えない台詞かと。さすが雪の女王。故郷というか、自分のルーツに戻って来たような感覚だったのだろうか。
精霊たちとの闘いで、エルサは経験値を得てどんどん強くなる。水の妖精ノックを突破できたのは、ノックが互角に闘うエルサの力を認め、尊敬を勝ち取ったからだという(公式パンフレットより)。この水の馬を手に入れたエルサはまさに無敵。ダム崩壊から王国を救うために馬に乗って走るエルサはロードオブザリングのピンチに駆けつけたガンダルフさながらな神々しさ。
今回も、エルサはエルサで、アナはアナで問題に立ち向かう。ところがメインキャラの一人であるクリストフは残念ながら蚊帳の外。そうこうしていると、アナのそばに終始ひっつきもっつきのオラフにピンチが訪れる。そしてアナにも大ピンチ!さぁ、どうする?!となっても「クリストフ…!」と名前を呼んでもらえることもなくクリストフはメインストーリーから完全につまはじき。彼は今回、呼ばれてもないのに困った時に突然現れて「お待たせ!」…いや、完全に忘れられてたよ、キミ。結局都合よく現れて現場までのアシになるだけの男だった…。それなのに、アナはプロポーズされて、「うん、いいよ!」
ハッピーだけど、アナにとってクリストフって何だろうと、いい大人には疑問がわいてしまう…。そういえば前作の時も、真実の愛とか何とかで、ハンスにキスをしてもらうのを「早く早く」と急かしていた割に、あっという間にクリストフに鞍替えしていたのを思い出す…。アナちゃんよ、あなたはいつも軽快過ぎるね…。少しは姉を見習おうか。
矛盾のないように綿密に下調べや計算しつくしただけあり、あぁそうだったのねとしっくりとくる内容。ただ、閉ざされた森の中で普通にそのまま人が閉じ込められながらも何十年も生活していたという設定は少し違和感。それなら時が止まっていたとかの方が良かったような…とは思う。
あとは、into the unknown 。英語版を聴くと、ミュージカル風、それを無理矢理日本語訳で歌う。サビは耳に残るが、台詞のような部分は耳に残らず、前作程のわかりやすいメロディラインでは無いためこの曲が大ヒットとはいかないだろう。歌唱力は圧倒的にイディナにあり、彼女を気持ちよく歌わせるために書いたような曲。でも松さんもなかなかで、聴いていてとても気持ち良かった。そのほかで耳に残る曲が皆無だったのが残念。ミュージカル映画にあるまじき…。クリストフのPV風のシーンはお遊びで入れた80年代の有名アーティストたちのオマージュだそう。私の世代には懐かしく面白かったが、果たして若い世代にあの笑いが理解出来るかは不明…。
ラストについては、それでよかったのか?と考えさせられる。前作でありのままの自分をようやく受け入れたエルサ。自信を持ち、周りにも受け入れられた。頑固な引きこもりからついに卒業、オシャレにも目覚め、寝る前は家族でジェスチャーゲームを楽しむ呑気な生活を送れるまでに社会復帰。ところが今作では心のままに、全く別の新たな自分の生きる道を選択する。それが真のハッピーエンドなのか、見終わった後に考えさせられる余韻が残る。この余韻を心地よいと感じるか、違和感と感じるかは人それぞれ。好みの分かれるところだろう。
そして、それでもジェスチャーゲームはするんだね、というツッコミは、みんな入れたと思う。