「過剰なデフォルメに乗れるか否か」来る わたろーさんの映画レビュー(感想・評価)
過剰なデフォルメに乗れるか否か
まず前提として個人的に「パコと魔法の絵本」が生理的に無理というか、絶対ダメでしょっていう脚本&演出をしてくるので、見る態度が良くないと言うのもあるのかもしれませんが、やっぱりこの監督の作品は苦手だと再認識できた映画でした。
一応ホラー映画という枠組みだと思います。最近は不条理性よりも根拠を持って襲ってくるからこそ現実世界とリンクしてくるから恐ろしいというホラー映画が増えてきているし、実際そっちの方が自分も好きです。でも、最後まで動機がこれで良いのっていうあやふやさで終わってしまいます。不倫やら何やら程度でこの家族が狙われますかっていう。また、対象を狙って何かが来るわけですから、不条理性の欠片もないのもなーという感じです。直近に「ゲットアウト」や「アス」など、その辺りをクリアにしたホラー映画を観てしまったのが悪かったのかもしれません。
また、この監督は何でもかんでもデフォルメし過ぎ。だから、第1幕の時点で第2幕の展開も容易に想像できてしまう。もう少しイクメンぶりを徹底させておくべきだろうと思いました。原作からとあるキャラクターの設定を無精子症から中絶に変えてるのも自分としては好きではない。あと、ライターってこんな仕事ぶりなの?実質ニートじゃない?
良いところ。演者。特に伊集院光さん演じるパートの店長の「子育てに理解はあるけど理解がない上司」ぶりが最高です。あとは、柴田理恵さん、小松菜奈さんですね。
霊媒師たちが集まってくるラストの展開も迫力がありました。いいお金のかけ方だと思います。ラストカットの夢の件も、「良い現実に引き戻せた」とも言えるし、まだ理想は夢の中にしかないとも言える、転じてハッピーエンドともバッドエンドとも取れる着地にしてるのは面白かったです。もう靴を投げない、他人の肉体的にも精神的にも他人の痛みが知れる子に育ってくれると良いなと思いました(微妙にネタバレですかね)
あと、監督的には「人間が1番怖い」っていうところを強調させるために、襲ってくる何かの正体をはっきりさせなかったのだろうと思います。そういう意味で、冒頭の十三回忌でよやり取りとか結婚式でのやり取りとか、未だに「儀式」「礼儀とも言い切れない建前」に囚われている人間のリアルさが、この映画で1番怖かったかもしれません。だからこそ、最後のオールスター展開も儀式にこだわってるんだろうと思います。
過剰なデフォルメに乗れるか否か、この監督の作品の好き嫌いは明確にそこだと思います。ホラー映画を期待しすぎると肩透かしに合うと思います。人間ドラマという点と脚本&演出面でも、僕はやっぱり苦手だと思いました。「告白」が好きだったので、またこの監督の作品は見ると思いますが、「渇き。」より抑えられていたとは言え、もう少し散らかさず叫ばず演技で説得力を持たせて欲しいと思いました。偉そうですけど。