半世界のレビュー・感想・評価
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声が都会っ子
じわじわくる作品
自分がいる世界。
もともと期待度はそんなに高くはなかった。脚本もとりわけ新鮮味があるわけでもなかった。だけど、エンドロールを見送りながら素直に、友達っていいなあ、と思った。そして、親子って言葉だけじゃなくて通じるものがあるなあ、とも思った。この物語の最後にあのエンドロールを見せられただけで、十分満足できた映画だった。
出てくる役者がみな演技が達者で、どんどん気持ちを持っていかれる。吾郎が父親なんてちょっと違和感も感じるけど、その感覚さえも紘のキャラ作りに一役買っている。嫁役池脇千鶴の溶け込みっぷりは毎度感心するほどの自然さだった。瑛介役長谷川博己の抱える後悔の闇には心打たれた。そしてその周りの役者の作り上げる空気が、片田舎特有の、誰がどこの誰だかみんな知ってる閉塞感と親密感が見事にあらわされていた。時には一緒にバカをやり、時には本気で叱り、時には我が身のように悲しんでくれる。瑛介が帰ってきたのも、ほかに行き場がないからじゃなくて、それを知っていたからなんだろう。紘(吾郎)や光彦(渋川)が放っておかないことをわかってるのだ。ある意味、それは甘えかもしれない。でも、そうして甘えさせてくれることもわかっている。それは、彼らの親の世代から(もしかしたらもっと上の世代から)ずっとそうだったのだから。
そしてちょっとフラグも立っていたラストの展開。もしかしたら、息子明も、この先アイツとそういう関係を築いていくのだろうか、と思えたらまた泣けてきた。
ストーリーとか脚本が魅力的だった
人生で何度でも繰り返し観たい映画
南伊勢の美しい風景を挟みながら、物語は進んでいきます。
派手さはありません。どこにでもいる登場人物、相互関係、それぞれの葛藤、悩み、傷。それなのにとても心に残るのはどこにでもある風景だからこそ自分の世界に置き換えてその風景を見られるからだろうと思います。生きていると自分の小さな世界でもいろんなことが起こる。半世界というタイトルはそういう気づきをあらゆる面から教えてくれる映画だと思います。ラストに山の中で光彦が2回繰り返し呟くセリフに人生を感じました。繰り返し繰り返し何度でも観たい映画です。言わずもがな、役者陣は主役を始め特に主要の四名は素晴らしいです。オススメします。
心に染みる映画
行間の余韻
何度も味わいたくなる。
半人前のレビューですが…
ちょっと考え事してたら聞き逃してしまいそうな自衛隊の話。海外に赴任したとか、子供が銃で撃ってきたら撃ち返すしかないとか、最もシリアスだったのは海外派兵から帰国した際に起こりがちなPTSDの一種コンバット・ストレスといった話が盛り込まれている。
全体からすればかなり控え目な表現なのですが、これがタイトルの意味に繋がっているという面白さ。更には憲法第九条に自衛隊を認めようという画策がある中、PTSDや自殺者が多いことを公表しない政治家にも憤りを感じてしまう。
「世界」と「世間」という言葉が使い分けられていて、元自衛官を演ずる長谷川博己の言う海外派兵をも含めたグローバルな見識が「世界」と言うが、炭焼き職人を演ずる稲垣吾郎もまた反論せずに自分たちの住むこの田舎だって「世界」だと言う。
伊勢の田舎町に平凡で淡々と生きている人たち。亡き父は継がせたくなかったのに意地で炭焼き職人となった稲垣、普通に父の中古車店で働く渋川清彦、そして突如実家に戻ってきた長谷川のアラフォー同級生3人組。二等辺三角形という伏線も最後には氷解するのですが、正三角形じゃないところもいいし、誰が底辺なのかと答え合わせをする楽しみも残してくれた。
そんな平凡の中にも息子のイジメ問題や、池脇千鶴の内助の功など、いい話が盛り込まれている。
残念なのは竹内郁子の話が笑えなかった点や、長谷川の部下だった早乙女誉くんが全く登場しなかったことだろうか…せめてお母さんの姿があればなぁ…
稲垣吾郎はもちろん良かったし、池脇千鶴も良かった。個人的には石橋蓮司の酔っ払い演技が真に迫っていたと思う(笑)
【追記】(2月21日)読む人によってはネタバレになるかもしれないので読まないでください。
2回目鑑賞してきました。
突如入ってくるカットが凄く意味あるものに思えてきました。
閉じこもった長谷川に襲い掛かるキーンというノイズ。
居眠りした稲垣が見た幻想的な夢(これは2回出てきます)。
半世界を表す半月が大写しになったり、それが大きくなったり。
さらに竹林が風にざわめくカット。
きつねの嫁入りと、サングラスの転校生。
ボクシングでも明とライバル関係になるのかもしれないと予感させてくれる。
こうして全てが半世界に絡んでくる。
ラストシーンの脇にチラッと出てくる、「竹とんぼ」への想いも感じられた。
最初に書いた二等辺三角形は渋川の気持ちの現れだったんですね。
常に正三角形を目指したのに、中学生ながら自分が控えめな気持ちで二人を支えていたという写真。映画そのものも、二人の人生を陰ながら支えていた渋川の位置にも納得しました。
なぜだか2回目のほうが泣けました。
「私も一緒に入る!」の台詞には、恥ずかしながら嗚咽が漏れてしまいました・・・
余韻
人生半ば
コスプレ実写化や原作付きばかりが横行する昨今の邦画においてオリジナル脚本作品は貴重であり
役者の顔ぶれもよく東京国際映画祭や各所で評判がいいようなのでかなり期待して鑑賞したものの
けして悪くはないがそこまでの深い感動は得られず佳作の域を出ない印象だった。
それぞれの人生を抱えた幼馴染みの男達の生活や葛藤を描きながらお互いへの理解を模索していく過程は良いのだが全体的には描写が表面的で薄く物足りなく感じてしまった。
話が紘と瑛介の関係に偏っているため2人には何か過去の確執があるのかと思いきや特になにもなく
キーパーソンとなるべきの光彦はあくまでオブザーバーで2人の本質には余り絡まず非常に残念。
物語自体も素直というかベタすぎるほどにフラグの全てがまんまの流れで何一つ裏切る事なくやっぱりそうかという展開へ集約していきラストもありがちな締めくくりなので意外性は薄い。
ただ、作品内に流れる品性や空気感は静謐で朴訥としながら監督自身の真摯な人間像が垣間見え観心地はいいものではあった。
特に三重の海や山々の景色が素晴らしく波風の音、森にそよぐ風の音、備長炭作りの爆ぜる炎の音など自然の息遣いをじっくり丁寧に描いている点にはこの作品に込められた愛情を感じた。
主人公の妻役の池脇千鶴の存在感が母として妻として非常にリアリティに溢れ妙な安心感があり素晴らしかった。
全ての人間が己の為すべきことを見出し達成できているわけではない人生志し半ばをも示唆しているような様々な意味を含む作品タイトルのセンスは秀逸だと思う。
それぞれの人生が半世界
ストーリーとしては、派手なところはなく、普通の40代になる男3人の物語。
ただその物語が誰にでもあることなのに、つい自分の人生に重ねてしまう。
夫婦の関係、親子の葛藤、幼なじみとの微妙なバランス。
こんなはずじゃなかったんじゃないかと思いながら、人生の折り返し地点を迎え、
今の状況を受け入れながらも 少しずつ現実と向き合うことをやめていってしまう。
小さな自分の世界のみに生きて、家族や仲間との微妙な心のズレが生まれていくのに
そこからも目を瞑りたくなる。
伊勢志摩の素朴で美しい景色と黙々と炭を作る主人公の姿が、
違う人生を生きているただの人なのに
観ている人それぞれの感性に訴えかけてくる。
ラストは、思わぬ方向で、改めて、その小さな半世界を考えさせられる。
個人的には、稲垣吾郎さんが、今まで演じたことがない粗野で男っぽい無神経な男の人生を
彼自身のオーラをまったく消して鉱になっていたところも見どころ。
ただ、黙々と木を切り、釜で焼き、炭を作る姿は、
役者として、丁寧に役に向き合い、自分が目立つという演技よりも作品をひとつひとつ大切に作り上げていく
職人のような吾郎さんに通づるような気がした。
見終わった後に心にずっと残り、自分の半世界を俯瞰で見てみたくなる映画。
少し会話の減ってしまった、旦那さんや奥さん、子供と観にいくのもいいかもしれない。
生きる力になる良作、ラスト以外は。。
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