「最近の阪本順治は新しい」半世界 たけはちさんの映画レビュー(感想・評価)
最近の阪本順治は新しい
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「せかいのおきく」を観て感銘を受けた彼女のお陰で、未見の阪本順治作品を観る機会を得た。
それにしても、淡々とした日常でありながら、なにかが起きそうな炸裂する瞬間の予感に満ちた本作は、近頃の物語偏重の傾向の中にあって、極めて異質でそれゆえに優れた脚本に思えた。
登場人物も魅力的で、中心の幼なじみの男3人の関係には羨ましさを感じた。長谷川博己演じる、訳あって自衛隊を追われるように除隊し、行く場所もなく故郷に居場所を求めるキャラクターはよかった。勿論、主役の稲垣吾郎やその妻役の池脇千鶴、親友の一人渋川清彦始め、石橋蓮司他、脇を固めるキャストの演出も大袈裟に振る舞うことなく、静かで圧倒的な存在感を見せる。
阪本順治の演出は、美しい風景を随所に織り交ぜながら、田舎の人間社会の交歓を的確なキャメラワークで映し出し、移動ショットはひたすらに美しい。
中でも葬儀シーンの雨とスローモーション、黒い傘の葬列には、ジェームズ・グレイのマフィア映画を思い起こした。
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