「観られて良かった…!」半世界 earlgrey bergamotさんの映画レビュー(感想・評価)
観られて良かった…!
公開から少し時間が経ち、日々観に行きたいと思いながら日延ばしになっていましたが今朝、何となくWEBで調べてみたら明日までの上映とのことで驚いて急ぎ、息子を誘い出かけました。
なんとしみじみとした温かい作品…。三重の美しい風景と、古くからの年輪のきいた平屋。そして紘、光彦、瑛介の均衡のとれた三角形。そして初乃、明とのやわらかな関わり。どれをとっても本当に深く沁み入りそれが温かな輪になって広がるような感情が湧きました。
人間は誰もが人には言えない苦悩、傷、悲しみを背負って生きています。人の悲しみを無くすことはできなくとも、それを慮って寄り添うことの大切さを改めて噛みしめています。
吾郎さん扮する紘の表情や仕草、人生を折り返した男の寂しさや切なさ、そして他の全てを諦めながらも信念を貫く姿にグッと惹きつけられました。
最後のエピソードは少なからず衝撃を受けましたが、だからと言ってエンドロールで悲しさを引きずることのないとても不思議な作品。最期の紘からの初乃へのメッセージが、衝撃を幾分和らげ優しく撫でてくれるような気持ちをもたらしてくれます。
同じ言葉を自信を持って繰り返します。
とても、とても良い作品でした。
余談になりますが、横浜在住親子ですがこの作品はどこのシネマも日に一度上映が多く、近くに丁度良い時間の上映がなく困り果て、千葉は流山のシネマまで息子を急き立てほぼ70キロの道程、車を走らせてもらいました(笑)。
現在大学生の息子も作品を見終わってからポツンと「なんかうまく言えないけどすごく心に響いた」「とても良かった」と口にし、流山まで来た甲斐があり過ぎるほどあったねと、親子共とても貴重な時間をもらったと思っています。
派手さはない作品かも知れませんが、こういう人間の機微に触れるような作品こそもっと評価されるべきです。
やわらかで穏やかな時間をありがとう。