「人生半ば」半世界 二度寝の犬さんの映画レビュー(感想・評価)
人生半ば
コスプレ実写化や原作付きばかりが横行する昨今の邦画においてオリジナル脚本作品は貴重であり
役者の顔ぶれもよく東京国際映画祭や各所で評判がいいようなのでかなり期待して鑑賞したものの
けして悪くはないがそこまでの深い感動は得られず佳作の域を出ない印象だった。
それぞれの人生を抱えた幼馴染みの男達の生活や葛藤を描きながらお互いへの理解を模索していく過程は良いのだが全体的には描写が表面的で薄く物足りなく感じてしまった。
話が紘と瑛介の関係に偏っているため2人には何か過去の確執があるのかと思いきや特になにもなく
キーパーソンとなるべきの光彦はあくまでオブザーバーで2人の本質には余り絡まず非常に残念。
物語自体も素直というかベタすぎるほどにフラグの全てがまんまの流れで何一つ裏切る事なくやっぱりそうかという展開へ集約していきラストもありがちな締めくくりなので意外性は薄い。
ただ、作品内に流れる品性や空気感は静謐で朴訥としながら監督自身の真摯な人間像が垣間見え観心地はいいものではあった。
特に三重の海や山々の景色が素晴らしく波風の音、森にそよぐ風の音、備長炭作りの爆ぜる炎の音など自然の息遣いをじっくり丁寧に描いている点にはこの作品に込められた愛情を感じた。
主人公の妻役の池脇千鶴の存在感が母として妻として非常にリアリティに溢れ妙な安心感があり素晴らしかった。
全ての人間が己の為すべきことを見出し達成できているわけではない人生志し半ばをも示唆しているような様々な意味を含む作品タイトルのセンスは秀逸だと思う。
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