「それぞれの人生が半世界」半世界 まおさんの映画レビュー(感想・評価)
それぞれの人生が半世界
ストーリーとしては、派手なところはなく、普通の40代になる男3人の物語。
ただその物語が誰にでもあることなのに、つい自分の人生に重ねてしまう。
夫婦の関係、親子の葛藤、幼なじみとの微妙なバランス。
こんなはずじゃなかったんじゃないかと思いながら、人生の折り返し地点を迎え、
今の状況を受け入れながらも 少しずつ現実と向き合うことをやめていってしまう。
小さな自分の世界のみに生きて、家族や仲間との微妙な心のズレが生まれていくのに
そこからも目を瞑りたくなる。
伊勢志摩の素朴で美しい景色と黙々と炭を作る主人公の姿が、
違う人生を生きているただの人なのに
観ている人それぞれの感性に訴えかけてくる。
ラストは、思わぬ方向で、改めて、その小さな半世界を考えさせられる。
個人的には、稲垣吾郎さんが、今まで演じたことがない粗野で男っぽい無神経な男の人生を
彼自身のオーラをまったく消して鉱になっていたところも見どころ。
ただ、黙々と木を切り、釜で焼き、炭を作る姿は、
役者として、丁寧に役に向き合い、自分が目立つという演技よりも作品をひとつひとつ大切に作り上げていく
職人のような吾郎さんに通づるような気がした。
見終わった後に心にずっと残り、自分の半世界を俯瞰で見てみたくなる映画。
少し会話の減ってしまった、旦那さんや奥さん、子供と観にいくのもいいかもしれない。
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