「ヴァネロペがただの嫌な女に」シュガー・ラッシュ オンライン こんじさんの映画レビュー(感想・評価)
ヴァネロペがただの嫌な女に
まずは良かった点。
さすがディズニーと言わんばかりの映像美、コミカルな演出を見ることができた。特に検索→サイトへの移動時の移動の仕方など「インターネットってこういう風に接続されているのかも」「バグってこんな風に侵入してくるのか」などと、日常のネットの在り方をこの作品に置換してみるとよく楽しめると思う。0と1の存在が擬人化してもう一つの世界で暮らしていると想像すると、夢が膨らんで良い。
またメッセージ性という点では友情の在り方だと思う。いつも一緒にいることだけが友情、大事ではないということをよく伝えてくれると思う。
エルサやアリエル、シンデレラなどプリンセスが揃うのも好きな人にとっては楽しめる要素。
続いて不満であった点。
1番はヴァネロペが、前作でやっとの思いで復帰したシュガーラッシュを、いとも簡単に捨てたこと。そもそも「家がなくなって困る!ラルフ助けて!」ってことでネットに侵入したにも関わらず、いざ自分が満たされれば、シュガーラッシュの住人を無視して「私はここが居場所だ!」などと我儘にもほどがあると感じてしまう。「私はこんな生活が夢だった」とは言うが、ストーリーを見ると「もうシュガーラッシュ飽きたから、こっちの新しい方行くわ」という見方に偏ってしまった。
ファンタジーにいちゃもんをつけるのは如何なものかとは思うが、シュガーラッシュは他のディズニー作品と違い、ゲームという現実世界を題材にした作品だ。そこでゲームの主人公とも言える存在がいきなり元のゲームから消え、プログラムに組み込まれてすらいないのに他作品デビューとはどうだろうか。残された住人は?ヴァネロペには「私には帰る場所がある」くらいのことは言って欲しかった。
残念だが前作と違い今作はヴァネロペに肩入れ、同情などということはできない。これでは前作でヴァネロペが厄介者扱いされるのも納得してしまう。
また、最後にヴァネロペをシャンクが、ゲームプログラムに組み込んだようだが、人工知能ということ?それで管理者の知らないところでどんどんプログラムが勝手に書き換えられていくということなのか。普通そのようなデータが管理者に発見されたら、緊急メンテなどで取り除かれると思うのだが。とにかく現実を切り離せない作品であるにも関わらず、現実部分を端折りすぎではないかと思った。勝手にプログラムが変わる、これがAI社会への警鐘であるならば感心をせざるを得ない。
ストーリーに対してはがっかりの部分が大きいが、映像に関しては衰えない、どんどん進化していると感じた。数年後に次作が来るかもしれないが、その時は夢物語だけではないことを期待したい。