「ネットの世界で描かれる 二人の友情物語」シュガー・ラッシュ オンライン sigmaさんの映画レビュー(感想・評価)
ネットの世界で描かれる 二人の友情物語
ズートピアのスタッフの作品とネットの世界が舞台という事で公開前から非常に楽しみにしてました。
ズートピアは差別や偏見と言ったデリケートなテーマをタブー視する事なく、本質を抉り出しつつもポップなキャラで描き切った傑作でした。今回はネットが舞台であり、SNSの光と闇などがどう描かれるか?その辺非常に興味深々でした。
また事前の予告で歴代のディズニープリンセスが総登場していた事も見逃せませんでした
(現代風3DCGで蘇ったアリエルが見たかったんや…)
なお1作目は観ておりません。事前知識としてはヘンなオーバーオールのおっさんとちいさな女の子が活躍する物語、って位のイメージでした。2人がゲームのキャラクターである事を知ったのも映画を観てからです。
けれど1作目を観てなくても何も問題ありませんでした。むしろ前作のイメージに囚われず今作の世界観に浸れたので非常に良かったと思います。プリンセス目当てで観てみようかな〜というミーハーなあなたも是非。
〜あらすじ〜
ゲームセンターのレースゲームのキャラであるヴァネロペ。ある日、彼女の仕事場であるレースゲームの筐体のハンドルが"事故"により壊れてしまう。古いアーケードゲームでありハンドルの修理代がゲームの売上金を上回ることからゲーム機の廃棄を決めた店主。しかしそれはヴァネロペたちゲームのキャラクター達の居場所がなくなってしまう事を意味する。
ヴァネロペのピンチを知ったラルフは彼女と一緒にネットの世界へ入り込み、壊れてしまったハンドルとその購入資金を調達する為、バズる動画をアップたりしてヴァネロペの窮地を救おうとするが…
〜みどころ〜
①ネットの世界
"ウィーフィー"でネットの世界に飛び込むシーンはさすがディズニーって感じです。ズートピアでジュディが初めてズートピアシティに訪れるシーンと重なります。
色んなネットワークサービスのロゴが所狭しとカラフルに描かれてます。中国で見たときは天猫や百度のロゴがありましたが日本ではLINEや楽天のアプリアイコンになっていました。ここら辺の芸の細かさはさすがディズニーといったところです。
個人的に面白かったのがポップアップ(広告)の描写。クリック欲しさにうっとおしくまとわりつく姿にあるある〜と膝を打った人も多いのでは。
バズる動画とそれが視聴者に拡散していくシーンは風刺を交えつつ現代社会をなかなかに上手く描いている思いました。心ないコメントを見て気落ちするラルフにかけられたセリフ
「コメントを見ないのはネットの鉄則よ」にどきりとした人も多いのでは?(ぶんぶんはろーYouTubeはコメント見るって言ってたような)
荒廃した街を舞台にしたオンラインのレースゲーム「スローターレース」のシーンでも随所にパロディが散りばめられてて何度もふふってなります。ギャングのリーダーで紅一点のシャンクがクールでビューティーでカッコ良かったです。
これまたパロディですが荒廃した街の中、泥棒や街のゴロツキをキャストにヴァネロペとシャンク達がディズニー映画の"お約束"よろしく突如ミュージカル調に歌いだします。菜々緒さん(シャンクの声優)も歌ってます。良い声でした。汚ねえ花火も打ち上がります。
②ディズニープリンセス総登場
ネット世界の一区画としてディズニーワールドが登場します。これがまた豪華。「無限の彼方へ〜」の一言のためだけに所ジョージさんの声取りをしたと思うとある意味配給会社泣かせの映画です。個人的にアナ雪エルサの松たか子さんの声が聞けた時点で元は取れたと思いました。
成り行きでヴァネロペがプリンセス達の控え室に潜り込み、そこで歴代プリンセス達と遭遇。突然の侵入者に対し皆さんなかなか物騒です。アナは拳を握りしめファイティングポーズ取るし、シンデレラに至っては例のガラスの靴を椅子の淵に叩きつけて割り(ええんかいな)、鋭利なガラスの割れ目をちいさな女の子にほぼ脊髄反射で構えるシーンはある意味衝撃です。彼女達がヴァネロペに対しプリンセスかどうか尋問する場面はディズニー映画のパロディに溢れ非常にユーモラスでした。また、その後ヴァネロペと打ち解け各々のプリンセスがヴァネロペの着ているようなカジュアルな部屋着に"ドレスアップ"してお部屋でくつろぐ姿は本当に見物です。ディズニーファンにとってはまさに眼福といった所ではないてしょうか。フィギュアにツムツムにネズミーランドにネットの外でも彼女達の新たな姿が並ぶのが今から楽しみです。
その他プリンセス以外にも様々なディズニーキャラクターが登場します。「予告で見たシーンが出ないよー」と愚痴る女の子のセリフはディズニー側の自虐でしょうか。やたらと人間味あふれる演出でした(ネットの世界との対比を意識?)。
いずれにせよディズニーにしか出来ないやり方で、歴代のディズニー映画とは一線を画つつも、観るものを楽しませてくれる手法の数々に「さすがディズニー!」となる事請け合いであり、それがディズニーをディズニーたらしめているんだなと今更ながら再確認。人を喜ばせるのってほんと文化的な営みですよね、ウォルト・ディズニーさん…。
③ラルフとヴァネロペ 2人の友情
物語序盤では二人はいつも一緒にいる大親友として登場。
仲良しながらも、現状に満足しているラルフと、満足しつつもマンネリな日々に少し飽き気味のヴァネロペ。そのわずかな気持ちのずれが徐々に埋めがたい差となり、物語後半では二人を分かつ決定的な溝となってしまいます。
物語の発端もラルフの「良かれと思って」した行動。そのある種一方的な善意の押し付けとも取れる子供的おっさんラルフの行動に、「友達の夢を邪魔することは友情じゃない」と正論をぴしゃりと言い放つ大人なちいさい女の子ヴァネロペ(大人なお姉さんシャンクに諭されるシーンも個人的にお気に入り)。
変化を好むヴァネロペと保守的で独善的で少しストーカー気質なラルフ。少しラルフの分が悪いようです。がんばれおっさん。
そんなラルフもクライマックスでは自身の"脆弱性"を認めプログラム上のバグを克服します。がんばりましたおっさん。(その後プリンセス達が一丸となってラルフを救出するシーンにも思いがけずほろりとしてしまった、、)
エンディングでは二人それぞれの道を歩むことになりますが、お互い自分達の弱さを知った分だけ成長し、また一つ友情が厚くなったところで物語は幕を閉じます。可愛いポップなキャラながらも毎回鋭い問いかけをしてくれるのがディズニー映画の素晴らしいところです。
以上、今作の見どころです。
ディズニー好きならとりあえず見て損はない、と断言出来る傑作でした。“FROZEN2”と合わせて次回作も期待大です(その前に1を見ようっと)。
あと今回は4DXで鑑賞致しました。4DXに向く作品と向かない作品があるかどうか分かりませんが、本作はカーチェイスの場面などが多々あるため非常にエキサイティングな映画体験となりました。プラス千円ちょいでアトラクション施設にもなるので4DXでの鑑賞を是非お勧めします。
長々と失礼。お読み頂きありがとうございました。