「カメオ出演は吹替声優で楽しめるし、スローターレースは4DXが最高!」シュガー・ラッシュ オンライン Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
カメオ出演は吹替声優で楽しめるし、スローターレースは4DXが最高!
ディズニーアニメ57作目の長編作品で、2012年の「シュガー・ラッシュ」(原題:Wreck-It Ralph)の続編。ビデオゲームの世界のキャラクターが活躍する世界観、ディズニーマニア垂涎のカメオ出演オンパレード。何度見ても楽しめる映像要素があるわけだが、あながち"子供向け"とはあなどれない。それ以上に、"人生を問う"作品になっている。
「シュガー・ラッシュ」はビデオゲームの中のキャラクターたちが擬人化され、観客の現実世界と同様、仲間や友達との関係性に悩んだり、自分自身の生き方で壁にぶつかる。
今回は、"友達とともに今のまま変わらないことを選ぶ"のか、"新しいことに挑戦して生きがいを見い出す"のかが問われる。
監督は引き続きリッチ・ムーア監督であるが、共同監督として脚本のフィル・ジョンストンが兼任しているのが大きい。フィル・ジョンストンは大ヒット作「ズートピア」(2016)の脚本にも関わっている。「ズートピア」は、現実世界を動物たちに置き換えた、ディズニー版"鳥獣戯画"だったが、その風刺センスはもともと本シリーズにも流れている。
さて、前作からの流れで観るなら、<吹替版> ということになる。前作は<字幕版>がなかったので、日本のファンにとってラルフは山寺宏一だし、ヴァネロペは諸星すみれである。加えて、カメオ出演における日本語吹替声優を楽しむこともできる(後述する)。字幕で見るのはもったいない。
また本作は3Dアニメーションの傑作なのに、今回は3D上映がない。かなり残念だが、前作は日本に4D映画館がなかったので、今回は<4D2D上映>を優先したということだろう。実際、劇中の「スローターレース」のカーアクションは、4D上映に最適化して作られている。これは絶対に4DX(MX4D)で体験する価値がある。
ディズニーアニメに、他の作品のキャラクターが多数カメオ出演するのは「ロジャー・ラビット」(1988)が原点だが、今年は実写化された「レディ・プレイヤー1」で多数の有名キャラクターが登場していたので、だいぶ見慣れた光景である。
しかし本作はそれを超える、ディズニーグループの総力戦である。ディズニーアニメのみならず、"ピクサー"からは"トイ・ストーリー"、「スター・ウォーズ」からはC-3POやストームトルーパー等、「アベンジャーズ」からはアイアンマン、ベビー・グルートも登場している。バズ・ライトイヤーの声はちゃんと所ジョージだし。
もともと「シュガー・ラッシュ」は前作でも、パックマンやソニック・ザ・ヘッジホッグ、「スーパーマリオ」のクッパや「ストリートファイター」などが登場していた。今回はインターネットに接続することによって、"amazon"や"Facebook"、"twitter"、"eBay"など有名なネット会社のほか、日本版では"楽天"も描かれている。また世界的に有名なYoutuberも実名でたくさん出てくる。日本語吹替版では、HIKAKINが声優として登場する。
やはり最大の見どころは、ディズニープリンセスの総登場である。ここで日本語吹替の声優の楽しみが出てくる。
松たか子(エルサ)、神田沙也加(アナ)、中川翔子(ラプンツェル)はもちろん、モアナの屋比久知奈も出てくる。そして白雪姫は、80年版の小鳩くるみ(わしづなつえ)、御年70歳である。わしづさんといえば「アタックNo.1」の鮎原こずえ役である。
シンデレラは、92年版の鈴木より子。またラプンツェル(中川翔子)の歌唱部分を担当していた小此木まりが、人魚姫アリエルの声優を担当している。これは本来、すずきまゆみなのだが、すずきさんがオーロラ姫役・ムーラン役も兼任しているためにこうなったのだろう。
「アラジン」のジャスミン姫(麻生かほ里)、「ポカホンタス」の土居裕子もそのまま。「美女と野獣」のベルは伊東恵里から平川めぐみに変更されている。劇団四季の舞台にも立つ、鈴木ほのかは「プリンセスと魔法のキス」のティアナだ。
「メリダとおそろしの森」のメリダは、元AKB48の大島優子である。メリダだけ、"ディズニー/ピクサー作品"なので、制作スタジオが違うということで劇中でイジられる。
本シーンでヴァネロペが、"ディズニープリンセスかどうか"で問い詰められる。吹替という意味で、ヴァネロペ役の諸星すみれは、ラプンツェルの幼少期や、アナの幼少期も演じているので、堂々とプリンセスである。
さらに、ここで思わずのけぞるシーンがある。先日11月12日に亡くなったスタン・リー(享年95歳)がアニメバージョンでカメオ出演している!
ヴァネロペが、ディズニープリンセスに会う直前、"オー・マイ・ディズニー"でストームトルーパーから走って逃げるシーン。アイアンマンと話している老人はまさしくスタン・リーだ。
マーベル映画でのカメオ出演は毎回、"スタン・リーを探せ!"として有名だが、ディズニーアニメでも「ベイマックス」(2014)のエンドロールでフレッドの父役で登場している。
故スタン・リーのカメオ出演は、「キャプテン・マーベル」(2019年3月公開)。「アベンジャーズ/エンドゲーム」(2019年4月公開)でもあるかもしれない。しかし偉大なるマーベル原作者の姿がアニメで拝めるのは最後だろう。
観れぱ観るほど楽しめる本作は、3D版として観るためにも、Blu-rayパッケージが待ち遠しい。
(2018/12/21/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ/吹替翻訳:杉田朋子)