「この衝撃、見逃さなくてよかった」愛しのアイリーン 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
この衝撃、見逃さなくてよかった
何の気なしに配信で観て、寒々とした情景と途方もない熱量に衝撃を受けた。吉田恵輔監督の作品については、「純喫茶磯辺」「ばしゃ馬さんとビッグマウス」あたりを好ましく思った一方、「麦子さんと」から「ヒメアノール」まではあまり自分に合わない気がしていた。本作は新井英樹による原作漫画と吉田監督の作風との相性が格別で、相乗効果が生まれたのだろう。衝撃の余韻は尾を引き、吉田監督作の「さんかく」「犬猿」、そして新井原作の「宮本から君へ」のドラマ版~映画版へと立て続けの鑑賞に繋がった。配信は便利だが、時間を奪われる…。
安田顕は前半のさえない中年ぶりから、ある事件以降の眼光をギラつかせた凄味へ、変貌の振れ幅が圧巻。木野花による地方の保守性と閉鎖性を体現する老母の怪演も、河井青葉が醸し出す投げやりに生きる女の色気もたまらない。吉田監督の2021年公開予定作「空白」が待ち遠しくなった。
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