「田舎×暴走母×独身男のディストピア」愛しのアイリーン 財団DXさんの映画レビュー(感想・評価)
田舎×暴走母×独身男のディストピア
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吉田恵輔監督作品は、相反する感情が入り乱れる様を鮮烈に切り取る。『ヒメアノ〜ル』なら軽蔑と同情、『犬猿』なら嫉妬と信頼といった具合に。
国際結婚した岩男とアイリーンも愛情と憎悪が混濁した一筋縄ではいかない思いを抱えている。次第に愛を育むはずが、純粋すぎる岩男への愛情と周囲への憎悪をぶつける母親のツルの暴走が悲劇を招く。
過度な愛情の行く末は『いかに過不足なく親が子に正しく愛情を注ぐことが難しいか』を思い知らせてくれる。閉塞した田舎と暴走する母が岩男の負の部分を形成してしまった。そして岩男亡き後、今際の際でようやく自らと重ね合わせてアイリーンを受け入れたツルの表情は、それまでの醜く恐ろしい顔とは違い、なんとも惨めで切ない。
原作は90年代に発表された漫画で、田舎の嫁不足や国際結婚の問題を扱ったらしいが、母親の暴走が過剰が誇張されすぎて正直これらの問題点からはそれてしまっているように思える。
また、セックス中に吐いたり、母親が当たり前のようにオナニーを覗いたりととにかく神経を逆撫でするシーンが多すぎて、拒否反応が出る人がいるのも当然だ。ヤクザ者の拉致シーンも計画性がなく、あまりにも拙さすぎる。
賛否あるのはもちろんだが、安易な恋愛ものや御涙頂戴者では描けない壮絶な悲喜劇に圧倒された。
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