「映画の黎明期」カツベン! odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の黎明期
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弁士と言っても古舘さんのプロレス実況やアニメの声優さん風のアテレコ演出もあり若い人達にも直感的に分かるようにしています。
実際は人形浄瑠璃や講談のような話芸文化が下地にあってこそ、まさに和魂洋才を地でゆくような日本ならではの映画鑑賞法を編み出したのですね。
しかし、弁士次第で喜劇にも悲劇にもなってしまうのは困りもの、海外の監督が知ったら冒涜だと怒ったでしょう。
今でも語り草のカツベン士としては、間(話の間隙)の天才と言われた徳川夢声さんや喜劇を得意とし後に新東宝の社長になった大蔵貢、自死した須田貞明(黒澤明の実兄)など個性豊かな人が多かったらしい、本作にもモデルはいるのでしょうが昔過ぎてわかりませんでした。
プロットは映画小屋が取り持った幼馴染の梅子と俊太郎、その再会のロマンスにやくざな興行主一家の悪行を絡めたドタバタ・コメディといった感じ、演出も時代背景と溶け込んでどこか往年の斎藤寅次郎の長屋喜劇を思わせる懐かしさを醸し出しています。俊太郎役の成田凌さんも熱演でしたが子役の牛尾竜威くんも上手かったですね。
個人的にはもっとストレートなハッピーエンドでほのぼのしたかったのですが梅子が女優として夢を叶えられたなら俊太郎としては身を引くという浪花節、確かに「ラ・ラ・ランド」ではありませんが悲恋の方がロマンティック、周防正行さんの感性としてはありだったのでしょう。
劇中映画もそれ風に撮影という凝りよう、映画の黎明期を描いた力作でした。
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