「成田凌の役者ぶりを堪能」カツベン! kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
成田凌の役者ぶりを堪能
キャスティングがいい。
それに応えて役者たちの演技もいい。
セットなどの美術も所々いい。
撮影も悪くない。
…なのに、何か物足りなかった。
周防監督の映画愛が結実した作品なんだろうか。
片島章三氏(経歴は存じ上げないが)が永年暖めてきた脚本らしいが、このお二人の意識にズレはなかったのか。
ドタバタ喜劇なら、それはそれでいいと思うが、だとすれば笑えない。
何かを伝えたかったのではないかと思うが、それが伝わらない。
自分の理解力のなさが原因かもしれないが。
例えば、山岡秋聲(永瀬正敏)が説明し過ぎる弁士を否定するような場面がある。
だが、クライマックスで山岡は「つぎはぎ活動写真」を作らせ、染谷俊太郎(成田凌)ならそれを上手く語れると言う。さらに、俊太郎が間に合わないと見るや自分が舞台に立とうとする。
ここに矛盾がありはしないか。
事件が起き、小屋の窮地を救うためだからポリシー云々は関係ない場面ではある。
ならば山岡がポリシーと流行とのギャップに苦しむ場面の意味は何だったのか。
俊太郎がそのポリシーを受け継いで花を咲かせるという訳でもないのだ。
よく知らないが、
当時の活動弁士は小屋付きとフリーランスの二種類いたのだろうか。
主人公俊太郎は、山岡秋聲の巡業を騙る窃盗団に加担する。
一方で、山岡を初めとした弁士たちはみな劇場との専属契約の様だった。
山岡は落ちぶれて小屋付きになったということか。
また、
映写技師が細切れのフィルムをコレクションしていたが、劇場で編集していたのだろうか。
フィルムは興業主が買い付けて所有するので、劇場どうしでフィルムの貸し借りをすることも昔はあった。(昔と言ってもこの映画の当時のことは知らないが)
でも、作り手が編集した完成品を買い付けていたはずだ。
当時は劇場が編集し直したりしていたのだろうか。
ただ、フィルムを編集している場面は「つぎはぎ」を作る過程以外には出てこない。
とは言え、見所は多い。
映画の冒頭で描かれる大正時代の撮影風景は、往時を想像させて面白い。
そこに主人公たちの幼少期が重なって、郷愁を誘う。
靑木館の3人の弁士は特色がハッキリしていて、良いキャラクターだ。
何より、主人公の成田凌と高良健吾は、語りの演技が見事だった。それなりのトレーニングを積んだのだろう。
最も残念だったのは、「つぎはぎ」上映の後のドタバタだ。
可笑しい場面もあったが、無駄に長く引っ張った印象だ。
これでは笑えるものも笑えなくなる。
ヒロイン梅子(黒島結菜)を絡めたラストのシークェンスは、セオリーと言えばそうなんだが、良かったと思う。
「終わり良ければ全て良し」に従うなら、冒頭も良かったし、及第点かもしれない。
イエスタデーの方にコメントありがとうございました。
ずうとるびデビュー1974年でしたね。恋のパピプペポ、みかん色の恋、恋があぶない あたりはよく覚えております。当時、ラジオ関東でよく聞いていました。ウキぺで確認しましたら、その後、5年間ぐらい曲出してたんですね。