「白人側の一方的な反省物語」荒野の誓い ウッディさんの映画レビュー(感想・評価)
白人側の一方的な反省物語
評判の高さとあらすじを見て、西部劇というジャンルに対する、現代ならではのストーリーの描き方を期待してました。
しかし、、結論からいうとテーマの重さに対してあまりにも浅い話だと思いました。
まず、白人vs先住民の構図を作っておきながら、先住民サイドを人間として描く気が全くありません。
最初から最後まで、”寛大な心で許し、協力的な”都合のいい”一面的なインディアン。
一方で主人公たち(白人)は二面性がありしっかり”人間的”に苦悩。喧嘩両成敗ですらなく、白人が反省さえすれば解決という話になってます。
クリスチャンベールのしかめっ面を大仰な音楽で撮りまくる尺があるなら、先住民側の心理描写を描けば?
ラストサムライでも日本人がやられてた、典型的な”悟りを開いたように深げなセリフしか言わない非西洋人キャラ”としか描写されていません。これ2017年製作ですよ?
一番ビックリしたのが、
冒頭に40〜50年代の西部劇のような、先住民が完全に悪役として描かれる襲撃シーンがあるのですが、「ここから先住民側の素性とかが明らかになってひねりになるんだろうな〜」と期待していると、、
まさかの「あの部族は凶暴だから」の一言で回収。しかもそれを先住民に言わせる。その後の部族同士の偏見とかの展開もなし。
これは驚きました。それなら”駅馬車”や”リオグランデの砦”のアパッチ族も「あいつら野蛮だから」で済ませられるのでは??
今作では、主人公や戦友の曹長が一方通行的に反省して、贖罪の為の機会を都合よく与えられてます。(白人の囚人と終盤の自称地主たち)
違う映画ですが、”一方的に復讐の連鎖断ち切った気になるなよ”ということを描いてる”アメリカンヒストリーX”は、改めて多視点という点では名作だと思いました。西部劇ですらないですが、、
他にも言いたいことはありますが、好きな点としては、ロザムンドパイクの”ゴーン・ガール”的な強さと脆さの両面的な演技は流石でしたし、アクションシーンの迫力と緊張感は素晴らしかったです。
ちなみに、先住民を人間的に多面的に描いた映画なら、同年製作の”ウィンドリバー”がオススメです。これこそ2017年に作る価値がありました。
最後に、
監督の狙いが、偽善だらけの”古き良き西部劇”の復興にあるのだとしたら大成功じゃないでしょうか?