アメリカン・ヴァルハラのレビュー・感想・評価
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ロック史上貴重でありつつ「バンドマンあるある」ドキュメンタリー
伝説の男(by ジョシュ・ホーミ)イギー・ポップが音楽人生の集大成「ベルリンサウンドの最終作」として放ち、ベテランオルタナファンを狂喜させ、イギーにあるまじきチャートアクションを記録した(全米最高位17位、全英最高位5位、全仏最高位4位)アルバム「ポスト・ポップ・ディプレッション」の制作模様とアルバムリリース後のツアー「ポスト・ポップ・ディプレッション:ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」の舞台裏を記録したドキュメンタリー。本作でイギーへのインタビュアーを務めたイギーの友人にして著名なTVパーソナリティー、アンソニー・ボーデインの遺作でもある。
構成としてはイギーとホーミの回想録。イギーファンとしては意外にもホーミに感情移入できる内容。イギーを神のように崇めるホーミが、憧れの人物から制作協力の誘いを受けてパニックに陥ったことを語るシーンは笑えるとともに妙に共感でき、夢から覚めたように全てが終わった後の心情を語るラストがまた切ない。
プロフェッショナルたちが集うバンドというものはどのように始動し、どのように形になっていくものなのかが記録されているという点からも興味深い内容。
ツアー舞台裏の特筆すべき点としては、ツアーリハーサル初日が偶然にもイギーの盟友デヴィッド・ボウイ逝去と重なったため、親友の死にイギーがどのように対峙し、周囲がどのような心情で彼を支えたのかという、ベテランオルタナファンが涙なしには見られないというだけでなく、ある意味ロック史上でも貴重なシーンが収録されている。
ライブシーンも大量に収録されているが、全て「お、ここから」というところで切られているので、続きを見たくなった方は是非「ポスト・ポップ・ディプレッション:ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」を。生で見たくなった方は来日署名活動を展開中なので、フェイスブックで「イギー・ポップ」と是非検索を(個人情報不要)。
日本人の琴線に触れる『音楽仁侠映画』
ジム・ジャームッシュ監督の『ギミー・デンジャー』はストゥージズを”学ぶ”為の映画だったが、今作はイギーの”今の姿”を切り取ったドキュメンタリー映画であり、バンド再結成で大団円を迎えた『ギミー〜』の続編的映画でもあると思う。イギーのソロ時代〜とりわけデヴィッド・ボウイとのベルリン時代のコラボ〜がサクッと割愛されていた『ギミー〜』と違い、2人の絆にもスポットが当たっている。…と言ってもボウイ自身が出てる時間は多くはない。にもかかわらず映画全体を覆うボウイの幻影。それはもう一人の主人公のジョシュ・ホーミとイギーとのコラボレーション『ポスト・ポップ・ディプレッション』が、ベルリン時代にボウイと共作した『The Idiot』『Lust For Life』を意識して制作された事からも自然な事だと思える。都会から隔離された砂漠にあるスタジオでジョシュ達と切磋琢磨する前半のシーンにかつてのボウイとイギーの姿を重ねて見てしまう。長い間、憧れ続けていたヒーローと共演する喜び、怖さを吐露するジョシュ。彼のイギーに対する熱い思いが伝わって来て思わず感情移入してしまう。そのジョシュ始めメンバーのイギーに対するリスペクトの精神が胸を打つ今作は、日本人の琴線に触れる、いわば『音楽仁侠映画』。単なるアルバム制作&ツアー・ドキュメンタリーではないのだ。後半からクライマックスのロイヤル・アルバート・ホール・ライブの素晴しさはもう四の五の説明する余地もない。ただこの場に居る事ができた観客を心から羨ましいと思う。(映画ではライブは完走しないので、見た後は『ポスト・ポップ・ディプレッション・ライブ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール』のDVD/Blu-rayがお勧め)そして最後には祭が終わった後の寂しさを「ポスト・ポップ・ディプレッション(ポップ後の憂鬱)」と溜め息交じりに呟くジョシュと自分が同化している錯覚に陥るのだ。
時間の外側に立つ者
イギー・ポップは最高のロッカーだ。ジョシュ・ホーミが「時間を止めたくても止まらない。止まらないから、瞬間瞬間がとても重要だ。時間の助手席に座るだけで、自らが動かすことが出来ない。」みたいなニュアンスで語っていたが、その発言に違和感を覚えた。「イギーと仕事をして、君は何を学んだのか?」と彼に問い掛けたい。
イギーは既に軽く時間を超えていて、クラシックであり、レジェンドである反面、常に新しく、常に夢中にさせる現在の音を作り出す。
残念なことに、彼の肉体は既に老いてしまい、ビルドアップしてはいても、弛んだ皮膚は惨めだ。
しかし、彼の才能は肉体美ではない。
魂のレベルで音楽を生み出し、その輝きは余りにもまばゆく、永遠の命を宿したまま、時間の外側で爆音を轟かし続ける。「最高だ!」思わず口からこぼれる魂の返答だ。
思えば、ジョシュ・ホーミもイギーと仕事したからこそ、時間の内側に住む者と外側に立つ者との歴然とした違いを感じたのかもしれない。
愛されイギー!!
ジョシュ・ホーミ?
あぁThem Crooked Vulturesのアルバムは偶然にも聴いたことがあった。
あぁEagles of Death Metalのメンバーなのは知らなかった!?
だからQueen of the Stone AgeとドラムがメンバーのArctic Monkeysが大好きでI・ポップも好きなら最高の映画になる本作。
もちろん「POST POP DEPRESSION」は発売日に買って聴いていたし近年のI・ポップのアルバムと比べても上質なロックンロールを聴かせてくれて最高だし久しぶりにスクリーンを通してライブ映像で観させられると最高が何倍にも。
一枚のアルバムに一本の映画が作られてしまうI・ポップという稀な存在だからこその成せる技。
映画監督から今のミュージシャンなど昔から今現在と変わらず慕われ愛され続けるイギーの姿が堪能出来る。
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