ガチ星のレビュー・感想・評価
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もがけもがけもがけもがけ
ネトフリドラマ『サンクチュアリ 聖域』を見終わってからまもなく本作の配信がスタートされ、気づいた時には観始めていました(笑)
本作もサンクチュアリと同様、クズが主人公で序盤から終盤手前まで、画面の濱島に悪態を吐きながら眉間に皺を寄せながら観ていました(苦笑)
落ちこぼれ状態から抜け出せない濱島の姿にイライラしながらも観続けてしまったのは、「最後には一変するだろう」という期待がイライラを感じる度に倍増していったからです。
物語の佳境でレース中に接触事故を起こし、花形選手である久松に大怪我を負わせてしまい、彼の入院する病院を訪れるシーンがあります。
唯一の取り柄を奪われ、一心不乱にリハビリに専念する久松は濱島の手助けを拒み、泣きじゃくり取り乱す久松の姿に戦慄を覚えました。
病院を後にしてからの濱島は、実際にご覧になって確認して頂けたらと思います。熱くなれます。
競輪学校の過剰と思えるシゴキや、同期の陰湿な嫌がらせ、謙虚になれず堕落した生活から抜けられない濱島、濱島に翻弄される家族や友人達の姿に、体験した事のない世界の発見や、反面教師的な見方ができ、フラストレーションが溜まりながらも楽しめる作品です。
マイナスポイントは、夜を拒む女性を半ば無理矢理乱暴している様に見える描写が不快だった事のみです。多くの女性は男性からの暴力を恐れ、強く拒む事が出来ません。〈女は酒飲ませて押し通せば何とかなる〉と誤解させる表現はやめて欲しかったです。
とは言え、人によりけりかも知れませんが、溜まりに溜まったフラストレーションは、個人的に最後には大半が発散できました。
CGなどの特殊効果に頼らない日本映画の良い見せ方を模範してくれたと思います。北九州の人もそうでない人も競輪好きもギャンブル嫌いな人も楽しめる作品です!
現在(2023/06/11)Netflixで配信しているので、気になる方は是非ご覧下さい!
予想外
元プロ野球選手の男が上手くいかない人生を取り返す為に競輪の道へ歩む事になる。
競輪とは、全く未知の世界であまりイメージが無かった。けど、競輪学校での生活は、まるで軍隊の中にいるかのような厳しさがあり、そこがリアルな感じを思った。
人生でなんだか上手くいかない男。
何が悪いんだ?俺が何をした?
そんな事を思いながらも競輪で一旗あげてやろうと考えている。
それでもやはり上手くいかず、四苦八苦するばかりで少しヤケクソのような気持ちになってるところがあった。
同期でものすごい才能がある久松。
自分とは、何が違うのか?
ただひたすらペダルを漕ぎ続ける事が出来るのか?
何がそうさせるのか?
「俺には、これしかない。」
ただ、ひたすらやるのではなく。それしかないから。
自分が全てを投げ出しても向き合い続ける事が出来る事が自分にとっての生きがいに変わってくるんじゃないかのと感じる作品で面白かったです。
元気がもらえる作品というよりも泥臭くて、それでも前向きに進もうとする男の生き様を感じた。
「しんどいよな、もがけ」「もがけ、もがけ、もがけ・・」
映画「ガチ星」(江口カン監督)から。
う~ん、正直、あまり入り込めなかった。
競輪選手として再起をかける元プロ野球選手の姿を描いた作品、
それでも上映時間106分の中で、60分以上も、主人公のダメ男ぶりを
これでもかってくらい見せられると、もう思考停止状態になってしまう。
いくらこの後、一念発起して頑張っても、受け入れられなかった。
本当に、観ている方が「しんどかった」。
そんなこと言うと、主人公が入学した競輪学校の教官に怒られそうだ。
「しんどいよな、もがけ」「もがけ、もがけ、もがけ・・」と。(笑)
そして、主人公にも「努力せえ、努力だけが結果に結びつくんだ」と。
それくらい、主人公の自暴自棄の様子が長すぎた気がする。
さらに、こんな練習をしたくらいで、一流として通用するほど、
競輪の世界は、甘くないことも知っているからこそ、
ストーリーに共感ができなかたのだと思う。
正直、もう少し、期待したんだけどなぁ。
これでは、東京オリンピック・パラリンピック2020の
自転車競技の宣伝にはならない気がするな。
努力スイッチ
いや、努力スイッチ入るの遅いでしょ。何時入るのか、誰がどうすれば入るのか、何が起きれば入るのかと。イライラを通り越して、このままクタバレと悪態ついてしまうくらいに遅い。
競輪学校から出て行こうとした夜、久松はローラーの上で振り向きもせずにこう言います。「これしか無いから」。
「今、ここで出ていけば俺には何がある、何が残る。何も無い。」ってことでやる気を起こしてプロにはなったが、やっぱり酒も煙草も止める気無し。
病院で久松の姿を見て気付く。「これしか無い」の、「これ」は競輪のことじゃ無い。「努力するしかないから」って事だったのか。。。これでスイッチON。いや単純すぎないか、引っ張って引っ張った割に。しかも気付き方が大げさすぎだ。
ラストの第五レース最後の直線、「えっ、何これ。良いじゃん!」。ドラマが服着てペダル踏んでる100mは感動した。競輪って、本当に良いですね。思い切りケイリンに忖度してのお終いは、少しシラケタ。
問題は、やはり努力スイッチのタイミングでしょ。遅すぎるし、スイッチの入り方がおかしすぎる。残念です。
久松母の演技には脱帽。吉崎瞳が川島海荷に見えてしまう俺の視力には不安。
負け犬たちのOnce Again
ダメ中年の再挑戦と再生をとても誠実に描いた秀作。ものすごく良かったです。胸を打たれました。
元プロ野球選手で戦力外通告を受けてから完全に転落した主人公・濱島は、パチ屋と酒に逃げる・実家でクダを巻く・友人を裏切る等、数え役満のようなダメ中年。妻子にも逃げられ、ひとり息子には慕われているものの、もちろん彼にちゃんと向かい合えない。現役時代と同じ茶髪を中年になっても続けており、それがメチャクチャ汚らしくて、彼の内面を表現しています。惨めな甘ったれ中年、それが濱島です。
この濱島の造形がすごくリアルでした。彼はかつてスポーツエリートとしてチヤホヤされ、いい車に乗ったりしてました。そんな過去の栄光が忘れられないので、それにしがみついて新しいスタートを切る気持ちが生まれない。なぜならば、もう二度と輝かしい日々は戻らないことを理解しており、絶望があるからです。
ただでさえ中年以降の再スタートは、将来の可能性がかなり限定されます。九分九厘わかりやすいバラ色の結果は手にできません。長い時間堕落した生活を続けているとますます焦るものの、簡単にドロ沼からは抜け出せません。頑張っても未来がないから頑張る気持ちも生まれない。変わりたくとも、こんな生活止めたくとも簡単には変われないし止められないのです。この変われなさがリアル!痛い!
息子についた嘘をきっかけに、年齢制限のない競輪選手を目指す濱島。この競輪学校での濱島の態度がまた痛いんですよね。年下に威張り散らすとか、人としてダメな感じがリアルです。過去しかないから威張るしかない。ボロクソにしごかれるシーンも、濱島の態度を見ると同情や共感は難しいです。再チャレンジしているものの、謙虚ではないですから。あのシゴきは、濱島の傲慢さを打ち砕こうとしていたのだと感じました。
「もがけ!もがけ!」と怒鳴る教官。濱島はもがいているが、それは本当のもがきなのか?もがきのポーズなんじゃないのか、そんな風に教官は叱咤激励していたのだと思います。
で、なんとか卒業して競輪選手になった濱島ですが、再び茶髪にして酒とタバコの日々に逆戻り。本当にダメから抜け出せない。
本作はダメ描写が想像以上に長いです。本当に長い。いかに堕落した生活が長く続くとそこから這い上がれないかがすごい説得力で伝わってきます。中年の再挑戦はそれだけ難しいのです。
ダメなまま挑戦しても、結局無惨な結果が待っています。ある事件をきっかけに、ついに濱島は自らの内面と向かい合わざるを得なくなります。
これ以後の濱島の態度は、どのような困難にでも向かっていける人間の偉大さ・勇敢さ・可能性を感じさせるのもでした。人間は心の奥底で何かが決定的に変わると、180度態度が変わります。まるで生まれ変わるように。日本映画史に残ると言っても過言ではない、濱島の逆襲、過去への落とし前のつけ方は、是非劇場に足を運んでご覧になっていただきたいです。
本作は、ダーレン・アロノフスキーの『レスラー』とスタローンの『ロッキー』が混在したような、極上の負け犬たちのOnce Again映画でした。
主演の安部賢一さんも、これが最後のチャンスと決めて、本作のオーディションに挑んだとのこと。このエピソードも本作とパラレルになっており、映画に漂う魔力を増強してます。また、安部さん顔がいいんですよね、すげー汚くて、生々しくて。実際はさっぱりしたイケメンおじさまのようですが、本作ではリアルな役作りをされていました。今後の活躍も期待しています。
涙なくしては観れない人間劇
ドブ恋というドロドロした人間劇がある。この作品も、脚本家の金沢知樹氏によると競輪選手版ドブ恋なのだという。
健康保険?弟のを使う、というドブ恋9そのものの主人公、濱島。
汚い木造家屋の2階でドブ恋6のポスターそのままのポーズで肌を重ね合う濱島と彼の親友の妻麻美。ちなみにに麻美を演じるのはドブ恋にも出演して好評を博した女優の古崎瞳さん。古崎瞳さんの人妻の艶の極みの迫真の名演技が、試写会後のトークショーでも話題でした。
金沢さんの脚本の凄さは、後半更に過激さを増す!
濱島ぁーつ、競輪選手になって挫折しかけた濱島に再会した鬼教官のセリフは、何度観ても感涙して涙が止まらない名台詞。青春だ!
ぜひ、劇場でその台詞を味わってください。
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