「良かったなぁ」焼肉ドラゴン aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
良かったなぁ
60年代の終わり、世は高度経済成長期を迎え、明るい時代を期待させる時期。バラックの立ち並ぶ在日韓国人街の隅にある、小さな焼肉店。焼肉といっても狭い店に座敷と小さなテーブルを並べたホルモン焼き。仕事にあぶれた近所の常連が集う、寄り合い所の体だ。ほとんどのシーンがこの店の中と前で展開される。
少年のナレーションから始まり、そこで暮らす夫婦と、娘3人と末っ子の息子の、厳しく懐かしい日常の物語が綴られる。歴史と政治的な話になると、なんか生臭くなってしまう題材を、彼らの生活として違和感なく描いていて、すんなり入れる。
それぞれが、様々な問題を抱えながら、涙あり笑い人生を生きている様を、活き活きと描いている。真木よう子、井上真央、桜庭ななみが雑然とした海街ダイアリーのような個性的な姉妹を見事に演じた。大泉洋がアクセントを入れつつ、とても厳しい環境の中、娘たちの恋愛模様を縦糸に、問題を抱える末っ子と、それを支える両親を横糸に、全く飽きさせずに、ラストまで持っていく。派手なところもなく、奇もてらわず、ここまで練られた物語が素晴らしい。
キム・サンホ演じる寡黙な父親が、訥々と語る昔話やある事件で感情を爆発させるシーンが、心に残る。楽しいながら、ジーンとさせる映画。
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