「大掛かりな学芸会の芝居」X-MEN:ダーク・フェニックス 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
大掛かりな学芸会の芝居
X−MENシリーズは何本か観た。特によかったのは2年前の「LOGAN ローガン」で、ヒュー・ジャックマンが自身のレーゾンデートルに悩みながら闘うX−MENを上手に演じていた。
主人公ジーン・グレイは本作品で初めて見た。そのせいか、グループの中での立ち位置や性格、テレキネシスの能力がどれほどのものなのかなどが不明のままだったのでいまひとつピンと来なかった。この感覚は最後まで続いた。もしかしたら前作の「アポカリプス」を見ていればすんなり受け入れられたのかもしれないが、映画は一作ずつで完成しているべきだと思う。
ハリウッドの商業主義の作品の中には続編ありきで製作されたと思しきものがある。逆に前作の鑑賞ありきで製作されるものもあるだろう。本作品はまさにそれではないだろうか。
前後作と無関係に本作だけを見ても、いろいろな齟齬がある。まずジーン・グレイの性格に整合性がない。子供の頃に両親の死に対してさえ冷めていた女の子が再開した父親の部屋に自分の写真がないと激昂するだろうか。本作の悲劇の最大の原因が主人公の性格にあるはずなのに、その性格が一定しないのではご都合主義の誹りは免れないだろう。
ニコラス・ホルトとジェニファー・ローレンスのロマンスには華がない上に、互いに対してアバタもエクボのおおらかさがない。I love you と何度言わせても二人の間に親密さを感じないし、そもそも I love you は恋愛関係でなくとも使う言葉だ。このあたりの演出がとても安易だと思う。
総じて作品としての出来がよろしくない。群像劇の中でひとりにフィーチャーした物語を作るには、短時間でひとりひとりの個性を表現すると同時に互いの関係性も明らかにしなければならない。そうでないとプロットがぼやけるのだ。CGに莫大な金額を費やした映画にもかかわらず、なんだか大掛かりな学芸会の芝居を見せられた気分である。