「惜しい!」クワイエット・プレイス ユージーンさんの映画レビュー(感想・評価)
惜しい!
作品のアイデア、雰囲気はとても好みでした。
ほとんどセリフがなく、BGM以外の音も極力抑えた作りには、観客も思わず静寂を保とうと、飲食や衣擦れの音、咳などを我慢しよう、という意識を持たされます。
また、主人公である五人の家族のうち、音を立ててはいけないにもかかわらず、音を認識することのできない聴覚障がいを持つ長女と、怖がりだが注意力に欠ける長男、そして、末っ子の四歳の男児がいる、といった点でも、子どもたちがいつヘマをするかとヒヤヒヤ、ハラハラさせられました。
さらに、母親のお腹の中には、赤ん坊までが……。
そういった、家族構成や演出面はとても良かったがために、設定の甘さが心底、悔やまれます。
それというのも、
ほかのレビュアーさんが指摘されているように、
なぜ、滝や川の近くで生活しなかったのか、という点です。これはかなり深刻な欠陥だと思います。
今回のクリーチャーは、目は見えないが、音には敏感に反応して襲ってくる、という性質を持っています。しかし、滝や川の流れなどの大きな音の近くでなら、会話をしたり叫んだりしても、クリーチャーには感知されない、と父親が息子に教えるシーンがあります。
それならば、普段はそういった、川や滝の近くで生活をし、必要なときにだけ民家を利用する、としておいたほうがよかったような気がします。仮に、そういった生活が無理なのであれば、その理由を作中で語ってほしかったです。でないと、父親が有能なのか無能なのか、よくわからなくなってしまいますから。
他にもいくつか気になる点はありましたが、上記のことがもっとも大きな欠陥であり、この作品の完成度を大幅に下げてしまっているため、非常にもったいなく思うばかりです。