「カンニング:インポッシブル」バッド・ジーニアス 危険な天才たち 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
カンニング:インポッシブル
2014年、中国で実際に起きたカンニング事件を題材にしたタイ映画。
タイ映画ってあまりイメージ沸かないが、これは面白かった!
劇場公開時の口コミ評判の良さから密かに期待していたが、期待を上回る面白さ!
教師の父親と二人暮らしの天才少女リンは、特待奨学生として名門進学校に転入。
勝ち気な性格でなかなか友達が出来なかったが、フレンドリーだがちと勉強が苦手なグレースと仲良くなる。
あるテストの時、困っていた彼女を“助けた”事をきっかけに…。
カンニング大作戦①
消しゴムに答えを書くという、誰もがやった事のあるカンニングの定番。(←あるのか?)
巡回する先生の監視の目をすり抜け、靴に答えを書いた消しゴムを入れて後ろの席の友達に渡そうとするが…。
友達を助けるほんの出来心だった。
しかしこれをきっかけに、ディープなカンニングの世界へ…。
グレースの金持ち彼氏から、“カンニング・ビジネス”を持ち掛けられる。
当初は渋るが、たんまりの報酬を条件に引き受ける。
次なる作戦は…
カンニング大作戦②
中間テスト。
密かにカンニング・ビジネスが知れ渡り、“生徒”が増える。
複数にカンニングさせなければならない。
そこで考え付いた方法は…
ピアノの手の動き。
答案はマークシート。
ある手の動きならA、別の手の動きならB…と覚えさせ、リンの手の動きで合図する。
が、ここで問題発生。
テストは2種類。皆、受けるテストはそれぞれ。
試験時間も限られる中、天才少女リンは機転を活かし、これを切り抜ける。
このカンニングを見抜いた者が居た。
リンと同じ特待奨学生の秀才、バンク。
真面目で不正は許さない。
リンらのカンニングを告発。
リンは奨学生を取り消しに。
やっぱり、やるんじゃなかった…。
しかし、再びグレースとその彼氏からビジネスを持ち掛けられる。
グレースと彼氏は、アメリカへ留学する為に各国で一斉に行われる“STIC”を受ける事に。
リンの協力ナシでは合格は不可能。
先の中間テストで痛い思いをし、当然乗らないと思われたが…、リンは引き受ける。
更なる莫大な報酬もさることながら、一度ハマったカンニングの世界からは抜けようにも抜けられないのか…?
だが、今回のテストは世界的なものなので、監視も当然厳重。これまでの比じゃない。
この“超難問”にどう挑むのか。
リンは、ある大胆な作戦を思い付く。それは…
カンニング大作戦③
世界で一斉に行われるテストだが、時差の関係で何処よりも早く行われる国がある。
シドニー。
時差は4時間。
リンがシドニーに行ってテストを受け、答えを暗記し、あらかじめトイレにスマホを隠しておいて、テストの合間の休憩中に答えを連絡する。
でも、さすがに一人じゃ不可能。もう一人、同じレベルの天才の協力が必要。
そこで白羽の矢が立ったのが…
自分に苦渋を舐めさせたバンク。
勿論バンクは断るが、グレースの彼氏がある卑劣なやり方で仲間に引き入れる。
はっきり言って、皆自己チュー。
でも、やるしかない。
リンとバンクはシドニーに赴き、グレースと彼氏も準備万端。
いよいよ、史上最大のカンニング大作戦が始まった…!
とにかくこのカンニング・シーンが、ハラハラ、ドキドキ、スリリング、緊張感、緊迫感…どんなに該当する言葉を並べたって足りない。
最近見た映画の中でも随一!
自分たちもテストに合格しなければならない。
と同時に、正確な答えを連絡しなければならない。
休憩の度にトイレに少々長く籠る。
やはり、疑いの目が…。
遂には、バンクが…。
テストのプレッシャー、カンニングのプレッシャー、グレースたちから答えの催促、孤立無援…。
本当に目が離せず、グイグイ引き込まれる!
このカンニング大作戦の“答え”は…!?
キャストでは誰よりも、主人公リン役のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンの、凛とした魅力と好演光る。
全くの無名、初めましてだったが、要注目!
演出、脚本、映像、編集、音楽、音響に到るまで、洗練されたセンス。
監督ナタウット・ブーンピリヤの手腕は見事!
本作から見えてくるのは、学歴社会の国の実態。
学歴が全て。物を言う。
それがかえって学生たちの重荷になる。
不正を産み出す。
それを通じて浮き彫りにされる、格差、校内ヒエラルキー、受験戦争…。
各々何かを背負っている。
思惑や駆け引き。
シリアス面だけではなく、学園コメディ要素や青春、友情、淡い恋…。
それらも巧みに織り交ぜた。
カンニングを題材にしても、決してそれを肯定して描いてる訳ではない。
カンニングは不正。
得たもの、失ったもの…。
罪を認め、告白し、ほろ苦くも、爽快ですらある。
カンニング・シーンはクライム・ムービーか『ミッション:インポッシブル』のような大作戦、
センスは『ソーシャル・ネットワーク』のようなスタイリッシュさ、
ティーンの葛藤や社会派テーマ…。
第一級のインテリジェンス・エンターテイメント!