ラッカは静かに虐殺されているのレビュー・感想・評価
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現実の戦争と情報戦争
シリアのラッカに暮らす、市民たちが町の凄惨は現状を世界に伝えるために結成した市民ジャーナリスト「RBSS」(Raqqa is Being Slaughtered Silently=ラッカは静かに虐殺されている)の戦いを描くドキュメンタリーだ。本作における戦争は、文字通りのシリアで起きている悲惨な物理的戦争と、ISISとRBSSとの間で行われる「情報戦争」の2つだ。戦争の悲惨さを訴える虐殺行為を捉えた実際の映像も使用されていて、そちらに目を奪われるが、作品テーマとしては、インターネットを舞台にした情報戦の実態にある。
ISISのプロパガンダ映像に対して、命がけで現場の情報を世界に発信していく。スマートフォンは現代の武器だ。ISISにとっても彼らの情報発信力は脅威であるから、命を狙う。
「新聞記者は戦争を始めることができる」とサラエヴォ出身のイビチャ・オシム氏は言っていたが、戦争において情報戦は昔から重要だった。しかし、それはプロのジャーナリストや諜報機関の分野だったものが、市民レベルにまで浸透しているのが現代だ。
この映画は、その最前線を描いている。今の時代を知るためにとても有意義な作品だ。
命懸けで抗う市民ジャーナリスト
映画という映像作品から多くの真実と哲学を知り学ぶことができる
本作もまさにそんな作品の一つ
原題は City of ghosts、
邦題は ISIS に抗うラッカの市民ジャーナリストグループ名
スマートフォンを武器にして、
文字通り命懸けでISISと戦う市民ジャーナリストにフォーカスを当てた作品
とにかく凄まじい記録映画、観れば分かる
2017年発表の映像作品なので生前のバグダディが映っている
ISISは組織ではなく思想、まだ終わらない
仮に終わっても、
民主主義が根付かない国家では新たな専制組織が台頭してくる
民主主義と国民のための政府を確立するまで
RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)はその活動を続けるのだろう
【”我々の言葉は、間違いなく彼らの武器より強い” シリア北部の街、ラッカで起きてしまった、現実の出来事とは思えない事を克明に映し出した、苛烈なポリティカル・スリラー・ドキュメンタリー。】
ー 2014年6月 戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦下、過激思想と武力で勢力を拡大していた「イスラム国」(IS)が、北部の街ラッカを制圧。
その後、ISはラッカを首都とし、公開処刑が繰り返され、市民は死の恐怖におびえながら過ごす過程は、映画に描かれている通りである。
そんな中、海外メディアに、ラッカで何が起きているかを伝えるために、市民ジャーナリスト集団”RBSS ラッカは静かに虐殺されている”が秘密裏に結成される。
RBSSは、ラッカでの非人道的なISの行為をスマホで撮影し、SNSに投稿する。
だが、危機を強めたISは彼らや彼らの親族を標的に、非道な行為を次々に行っていく。ー
◆感想
・苛烈なポリティカル・スリラー・ドキュメンタリーとしか、書きようのない映像が次々に映し出される。RBSSの国内組のメンバーは情報を必死で発信するが、次々に暗殺されていく。
・主にトルコに逃げた国外組のメンバーもISによる、暗殺の恐怖に耐える日々。そんな中、RBSS創立の共同者ナジがトルコで暗殺。
彼らの多くはドイツに逃れる。だが、国外組の肉親も、ISに処刑されていく。
ー 臨場感が、尋常でない。そして、自分の父親がISに処刑されるシーンを見るメンバーの深い哀しみとISに対する怒りと恐れ。ー
・ドイツでも、移民排斥運動が激化し、彼らはベルリンから別の土地へ・・。
ー 2010年ころから、フランスを中心に、移民排斥運動が激化し、その波はネオナチ思想に毒された一部のメンバーの誘導により拡散していった・・。故郷を追われ、異国の地でもIS及び、その国の人々に追われるRBSSのメンバーの哀しみ、不安や如何に。想像もつかない・・。ー
<2021年 ISは今作でもその姿が鮮明に映し出されたアブー・バクル・アル=バクダーディのアメリカ軍の攻撃による死をきっかけに、壊滅状態になっていたが、新たな勢力が萌芽している。
そして、全ての元凶と言って良いアサドは、圧倒的な勢力を依然保っている。
ラッカにかつての、美しき街並み、寛容な精神を持つ人が多かったと冒頭で紹介された人々が、再び、穏やかに暮らせる日は来るのであろうか・・。
今作は、公開当時、ISの非道な所業を、全世界に命を懸けて発信した勇気あるジャーナリスト達の、生の姿を描いている。
RBSSの代表スポークスマンに対し、世界のジャーナリストがスタンディング・オベーションで称えたシーンは、可なり沁みた作品である。>
<2018年8月18日 京都シネマにて鑑賞>
<2021年8月5日 別媒体にて再鑑賞>
銃社会で無くても国家が崩壊するとどうなるのか?
シリア・ラッカにてイスラム国ISの極悪非道を世界に配信するジャーナリスト集団RBSSにカメラが迫ったドキュメンタリー。
40年近くあったアサド政権の崩壊、そしてアラブの春。
学生らが革命に参加。その後彼らはスポークスマンやカメラマンになっているのが興味深い。
政権空白期間、ラッカに進出してきた集団があった。
イスラム国だ。
彼らは「我らが来たからには大丈夫だ」と広場に来た住民に人殺しを見せ圧力を掛ける。
彼らは新国を建国する。
RBSSもこの頃発足するのだがにISが黙っている訳が無く、彼らにも危険が。
トルコやドイツに拠点を設けてもISはすぐに嗅ぎつける。
ラッカに残る人間、外に出て情報を発信する人間。
どちらも地獄だ。
ISは最新撮影技術や編集技術にて自らを正当化し兵士を募集。メディアにも力を入れていたのが分かる。
反逆者を見せしめ、配信して恐怖を植え付ける。
武力と情報操作。ISは巧みにした訳だが、私は他人事では無いと感じた。
もし、日本も国家が崩壊し第二第三勢力が侵入、もしくは巧みに乗っ取られ、日本の武力も掌握された時どうなるのか?
ISと方法や順番違えども、ある規模の団体なら1人の指導者にてやりかねない話であるし、過去オウム真理教なんてあった訳だし。
「国に隙を作るな」と感じたドキュメンタリー。
シリアの悲しい事実。
色々な国の人々に受け入れて貰いたい。
他人事では無い。無関心ではいけない。
そんな映画だ。
シリアを知る旅がここから始まる
知らないことは正しく知ろう
ウイグルは静かに虐殺されている
最近幕末の志士たちが影響を受けた陽明学とは何か?と思い立ち、王陽明の発言をまとめた『伝習録』を読み、さらにそこから派生して秦統一以前の古代の歴史書である『春秋左氏伝(略:左伝)』を読み始めた。
『春秋』は儒教が「五経」に定める教典の一種になるが、すべての基本が「徳」と「礼」であることがうるさいほど繰り返し言及されている。
徳礼のない国は民心が離れて滅び、徳礼のない人間は一族を滅ぼすという大原則に『左伝』は貫かれている。
『左伝』は西郷隆盛の座右の書でもあったという。
現在ISはシリアではほぼ壊滅したが、本作を観ていていかに民心が離れていったかがよくわかった。
恐怖政治はヒットラー、スターリン、毛沢東をあげるまでもなく最終的にはうまくいかないことは歴史が証明している。
ナチスは滅び、ソ連は崩壊し、チャイナも20世紀中は貧国のままだった。
では欧米が徳礼にあふれた国々かと言えばもちろんそんなことはなく、かつて植民地で有色人種を好き勝手に搾取していたヨーロッパは植民地であったはずのアフリカや中東から移民という形で国柄を破壊される逆襲を受けているし、アメリカも麻薬が蔓延していたり、銃乱射事件が多発していたり、移民問題もあり、とても幸せな社会とは思えない。
結局「アラブの春」も裏で糸を引いていたのは、ネオコンを中心としたアメリカのグローバリストたちであり、自分たちの利益のために他国を混乱に陥れる行動はまったく徳に欠ける。
やはり不徳の行動はいずれは我が身にふり返って来るのかもしれない。
国なら数百年は安泰でもその後先細りしたり、人ならその人物自体は天寿を全うしても孫や子孫の代で災難に遭ったり、一家が離散したりするかもしれない。
王陽明は目の前の不正に見ないふりをしないよう説いた。
そして生死に関わらず行動を起こすようにも説き、ここが最も幕末の日本で培養されたように思える。
まさに本作のRBSSのメンバーたちに相通じるものを感じる。
そして実は正義よりも親切の重要さを説いている。
そして現在アジアに目を向けると、チャイナでは南モンゴルやチベット、ウイグルで漢族とは違う他民族が塗炭の苦しみを受けている。
特に「一帯一路」の通り道であるウイグルでは、弾圧が激しさを増し、アメリカも問題視してたびたび言及するようになった。
なぜチャイナは自分たちの歴史から学ばないのだろうか?
異民族とはいえ初めての統一国家であった秦は恐怖政治を敷いたため統一後わずか15年で滅んだ。
たしかに清が欧米列強や日本の前に屈し、漢族的世界観である華夷秩序が完全に崩壊したため力の論理を信奉したくなるのもわからなくはないが、自国民すら監視して恐怖政治を展開する現在のチャイナは早晩人心も離れていくのではないだろうか?
現に習近平のポスターに墨汁をかける事件が多発したり、台湾どころか香港や上海でも独立派が育ち始めているという。
そして異民族であるチベットでは数千あったチベット寺院が一桁まで減らされ、ウイグル人は強制収容所に数百万人単位で送られ、イスラム教徒である彼らに火葬を強いているという。
インターネット番組の「チャンネル桜」にウイグル人活動家が登場したことがあるが、彼の90歳を超える母親も勾留されているというし、番組内で年端もいかないウイグル人の少年が漢族の青年から何度も蹴られて泣き叫んでいる映像も流された。その周りをぐるっと多くの大人たちが取り囲んでいたが、みなニヤニヤと見ているだけで、誰も助けに入らず警察も呼ぶこともない。
残念なことに現在少なくないウイグルの青年たちが、拡散したISに合流して戦闘訓練を受けているという。
いざチャイナ政府が崩壊したり、その力が弱まれば、おそらくそのウイグル人たちはウイグルにいる漢族の民間人を躊躇なく虐殺していくだろう。
今チャイナ政府が行っている弾圧はウイグル人はもちろんだが、将来的にはウイグルに住む漢族をも危険にさらしている。
日本に来る漢族の観光客を見ても彼らはまったく徳育されていない。
今は確かに強国になる道を歩んでいるが、自分たちの利益だけを追求して徳礼に欠けた拡大を続けても、長続きはしないし、一旦落ち目になればその災厄は倍返しになるように思えて仕方がない。
もう一度自分たちが育てあげた徳治主義の歴史を見直すべきだ。
なお同じアジアの同胞が苦しんでいるのに、それに対して同じアジア人として抗議もしないわが国の政財官の人々は情けない。白人国家である欧米が抗議していることを思うと尚更である。
もちろんできることは少ない。
だが声を挙げて寄り添うことはできるはずだ。
我々も経済を優先してチャイナに抗議しないなら、結局それは不徳の小チャイナでしかない。
筆者自身も不徳で欲にまみれた一個人でしかないが、せめてウイグル人の幸福と明るい未来だけは祈りたい。
人間って
貴重な作品
静かではない。早急になんとかすべきと思わされる
平和がどれだけ幸せか
何年か前に どこかのサイトで見た公開処刑の動画。
その時はどこかでフィクションだろうと
軽く見ていた。
今日この映画を見て、
こんなにも残虐な殺し方が
現実に起こっていることを知って
見ていられなくなった。
「まともな死に方をしたい」
「みんなと同じで幸せになりたい。夢がある」
環境が違うだけでこんなにも強く思うのか、
助けたいのに助けられない矛盾で苦しくなった。
無垢な子どもを盾にして、
怯えるシリア住民を盾にして、
武力を武器にして、
イスラム教を利用して、
最凶な黒旗を掲げる者たちの中にも、
仕方なく報復した者もいるだろう。
その人たちひっくるめて戦争の被害者で、
全員が戦争の敗者で、、、様々な思いが錯綜した。
平和を願う全ての人に見て欲しい
現状を知って欲しい
戦争は昔話じゃない
知ってしまった後悔と考える機会をくれた有り難みを感じて、これからも理解を深めて行こうと思う。
リアルは全てを超える
遠いどこかの他人事
東京とラッカ
ふるさとなるもの
『カメラは武器よりも強し』
劇中の言葉が印象的です。
なるほど、今はそうなのかもしれない。
そして私は、後藤健二さんが殺害された翌日の、NHKの「あさイチ」の柳澤秀夫解説委員のオープニングコメントが思い浮かびました。
家族や自身の身の危険まで冒して送ろうとしている情報。
なぜそこまでするのか。
彼らの望みは何なのか。
こういう映画を見て、私たちがどのように解釈するか、とても問いかけてくる映画でした。
難民受入国のドイツで、難民排斥デモが起きている映像が流れます。
「無知」「無関心」によって引き起こされたものだと思いました。
でも、こういう感想をもてたのも、今日この映画を通して、国を出ざるを得なかったシリアの人々の背景を知ることができたからです。
何も知らなかったら、私もデモに加担していたかもしれません。
昨日、韓国の光州事件を取り扱った映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を見たばかりでした。
この2日間で、報道の大切さを痛感しました。
映画を通して感じたことがあります。
一貫して、女性が出てこない。
これらの国々で、女性の立場はどうなっているのか?
そのことが頭から離れなかったので、次は『ガザの美容室』を見てみたいと思います。
幽霊の町
イスラム国に制圧され、ISの首都となってしまったシリアのラッカで、現実を伝えようとする市民によるジャーナリスト集団”RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently)=ラッカは静かに虐殺されている”による、死と隣り合わせの中で行われるSNSによる報道を描く。あの「カルテル・ランド」のハイネマン監督の作品としては、映像としての”現場のリアル”が多くはなかったが、それほどに現場は緊迫していたという事でしょう。それをもっと見せろというのは、あまりにも身勝手な話。ほとんどがシリアを脱出して亡命した先で投稿を行うメンバーにより語られる。国外にいる彼らにさえも命の危険が迫っているというのに、国内で決死の活動を行っているメンバーも多数いる。映画中に何度も彼らの口から語られているが、本当に称賛されるべきは現地に残った名も無い普通の市民たち。彼らの決死の報道は、確かに全世界に伝わった。
まともな死に方をしたい
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