劇場公開日 2018年4月14日

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「【”我々の言葉は、間違いなく彼らの武器より強い” シリア北部の街、ラッカで起きてしまった、現実の出来事とは思えない事を克明に映し出した、苛烈なポリティカル・スリラー・ドキュメンタリー。】」ラッカは静かに虐殺されている NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”我々の言葉は、間違いなく彼らの武器より強い” シリア北部の街、ラッカで起きてしまった、現実の出来事とは思えない事を克明に映し出した、苛烈なポリティカル・スリラー・ドキュメンタリー。】

2021年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館、VOD

悲しい

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知的

ー 2014年6月 戦後史上最悪の人道危機と言われるシリア内戦下、過激思想と武力で勢力を拡大していた「イスラム国」(IS)が、北部の街ラッカを制圧。
  その後、ISはラッカを首都とし、公開処刑が繰り返され、市民は死の恐怖におびえながら過ごす過程は、映画に描かれている通りである。
  そんな中、海外メディアに、ラッカで何が起きているかを伝えるために、市民ジャーナリスト集団”RBSS ラッカは静かに虐殺されている”が秘密裏に結成される。
  RBSSは、ラッカでの非人道的なISの行為をスマホで撮影し、SNSに投稿する。
  だが、危機を強めたISは彼らや彼らの親族を標的に、非道な行為を次々に行っていく。ー

◆感想
 ・苛烈なポリティカル・スリラー・ドキュメンタリーとしか、書きようのない映像が次々に映し出される。RBSSの国内組のメンバーは情報を必死で発信するが、次々に暗殺されていく。

 ・主にトルコに逃げた国外組のメンバーもISによる、暗殺の恐怖に耐える日々。そんな中、RBSS創立の共同者ナジがトルコで暗殺。
 彼らの多くはドイツに逃れる。だが、国外組の肉親も、ISに処刑されていく。
 ー 臨場感が、尋常でない。そして、自分の父親がISに処刑されるシーンを見るメンバーの深い哀しみとISに対する怒りと恐れ。ー

 ・ドイツでも、移民排斥運動が激化し、彼らはベルリンから別の土地へ・・。
 ー 2010年ころから、フランスを中心に、移民排斥運動が激化し、その波はネオナチ思想に毒された一部のメンバーの誘導により拡散していった・・。故郷を追われ、異国の地でもIS及び、その国の人々に追われるRBSSのメンバーの哀しみ、不安や如何に。想像もつかない・・。ー

<2021年 ISは今作でもその姿が鮮明に映し出されたアブー・バクル・アル=バクダーディのアメリカ軍の攻撃による死をきっかけに、壊滅状態になっていたが、新たな勢力が萌芽している。
 そして、全ての元凶と言って良いアサドは、圧倒的な勢力を依然保っている。
 ラッカにかつての、美しき街並み、寛容な精神を持つ人が多かったと冒頭で紹介された人々が、再び、穏やかに暮らせる日は来るのであろうか・・。
 今作は、公開当時、ISの非道な所業を、全世界に命を懸けて発信した勇気あるジャーナリスト達の、生の姿を描いている。
 RBSSの代表スポークスマンに対し、世界のジャーナリストがスタンディング・オベーションで称えたシーンは、可なり沁みた作品である。>

<2018年8月18日 京都シネマにて鑑賞>

<2021年8月5日  別媒体にて再鑑賞>

NOBU