万引き家族のレビュー・感想・評価
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花火?
歩いても歩いても、で是枝ファンになった私からすると段々とテーマが重くなって、自分のこととして映画に入り込んで観るのが、難しくなってきているように思います。
別に是枝監督に言われなくったって、家族の間には愛情や優しさがあるのがいいと思うし、日本は長く平和が続いたせいか、綺麗な水がどんどん流れるところと、流れが悪く澱みつつあるところがはっきりし過ぎてきちゃって、なんかまずいぞ、なんか変だぞって感じは結構みんなあるんじゃないのかな。40過ぎて国のありように悶々とする身からすると、映画の中身がこうだったことより、成功を収めた上であの安倍の申し出をきっぱり断ってくれたことがほんとに良かった。
この映画を思い返して良かったのは、あの少年の前向きさ勇敢さかな。あの少年が、優しいけども間違っているあの偽家族、弱さで集った居心地の良さ、そこから決別をはかった勇気。そしてそのきっかけが、あの女の子に盗みを始めさせたくないという衝動からきたところに、グッときた。あの環境にあって心根がきれいだったことに。
少年のおかげでみんな改めて現実と向き合っていくことになる。リリーフランキーはおじさんに戻ると言う。もとの現実には戻るけどもそれが以前とは違うのは、みんなお互いに愛情をやりとりした経験、絆を持ったということで、それを胸に、厳しいであろう現実にそれぞれが向かっていく。
それこそが本来の家族の役割のひとつなんだと、いまこのレビューを書きながら思いました。
あの女の子が薄暗い団地の廊下から、自らビールケースに登って見る、明るい外の景色の中に何を思うのか、そこに果たして出ていけるのか。容易ならぬ環境にあることを想うと100%で明るくはなれないし、この映画をハッピーエンドではないという人が多いけど、ハッピーになれる可能性を秘めたエンディングなんだと思う、というより思いたい。
あの少年は捕まる気だったにも関わらず飛び降りる必要があったのか。そこまでしないと変わらないと思ったんだろうか。みかんが弾みながら広がっていったのを見て、最悪死んじゃったのかと思って観てたので、なんとも残酷な演出に感じたけど、それがいい転機になったことを思うと、もしかしてあれは花火だったのかなと思う。少年は花火の音しか知らなかったけど、その少年がまさに死にものぐるいで打ち上げた(打ち下ろした)、痛々しくも盛大な花火。恵まれた環境にいる人は、頑張ろうとしている人の、決死の、地味な花火を見逃さないようにしたいものだ。
内容が理解できない、ピンとこない人は幸せな人
経験した人しかわからない、という感想を書かれている方がいますが、本当にそう思います。
話がピンとこない、なんだかよくわからない人は凄く幸せな家庭で生まれ育ったんだと思います。
柴田家の人々は全員、いわゆる「機能不全家族」で育った人ではないかと思いました。親から充分に愛されず、愛着障害を抱えて、その足りないものを求めているうちにここに集まったように見えました。
私の主人はまさに殴る蹴る、家に入れてもらえないという虐待を受けて育ったそうです。映画の中の、犯罪に走るほど貧しくても、愛情のある雰囲気になんだか羨ましく感じたそうです。
私も殴る蹴るはありませんでしたが、愛情の絆を築く能力のない親に育てられました。
実家に戻されたりんが、母親にじゃけんにされたあと、服を買ってあげるからこっちへきなさい、と言われたシーンにドキッとしました。たとえ殴られなくても、怒鳴られたり、絶えず言葉で圧力をかけられている感じで、何をしてもらうにも親の機嫌をうかがっていた自分と重なりました。
同じ親に育てられた弟は、不器用、ぐずと言われ続けて育ったあげく、働く気力がわかない、とワーキングプア状態です。
まともな家庭で育っていないことで、自分の能力を信じることができず、ケチな泥棒となった父親が、間違っていることはわかっていても、万引きしか教えられない、子供に何もまともなことを教えてやれない、というやるせない言葉がひしひしと身に沁みました。
まともな家庭で育った人なら、なぜ働いて食っていけないのか、と思うだけで、そう思える健全な心が育たなかった、ということがそもそも理解できないと思います。
りん(じゅり)のその後の人生が気になりました。
いい家族
小湊鉄道! と思った。
いい家族の話だった、という印象。
家族のそれぞれが、それぞれの技で収入を得る、というところがよい。
一方、フィクションの部分は勿論あるにせよ、根本的なところでは、ここに描かれる層を生む政策を、政府は採っているのだと考えさせられた。
さて、小湊鉄道。この線で海水浴に行くというのは映画の中の世界として、ある程度大きな街に住む家族が気動車で海水浴に行くということがあるだろうか? 時代設定はいつだったのだろう? と思った。
そうしたら、都バスが出て来て「みんくる」が付いていた。現代の東京か。
都会から気動車で海水浴というのは、1970 年頃に思える。京都や大阪なら、もう少し後まであった?
ところで、PG12 か。
思った以上に良かった
この父親は確かに社会的にいけない事をしているが、それによって小さな命が救われたのは事実。
男の子もパチンコ屋さんの駐車場から誘拐したんだけど、もし何もしなかったら亡くなっていたかもしれない。いずれにせよ本当の親よりも愛情に包まれ、二人の子供は幸せだったと思う。
社会のルールに縛られていて、SOSを出している子供を救えないのであれば犯罪でも正義なのでは?と思う。その制度のせいで虐待で亡くなる子供のニュースを聞くぐらいなら、誘拐でも愛情もって育ててくれる方がまともに思える。この家族は社会の底辺でも幸せそうだった。ラスト色々な事実が分かり、壮絶だが人間味があり考えさせられる作品です。けど、最後に女の子が親元に戻されたのは残念。ラストの終わり方はもう少し見たかった。
カンヌ国際映画祭で受賞した意味があります。
信じたい
なにかとても美しいものを観た気がする、なんなんだろう。
ストーリーを思い返せば、薄汚いものばかり見せられていたんじゃないかとも思うんだけれど。
こんなはずじゃなかった人生の吹きだまりに、立ちのぼった陽炎のようなものだからでしょうか。必死で目を凝らして見つめてしまった。
ゴミ袋を一人で蹴って、そして立ちすくむ。たまらなく胸に迫りました。
それぞれの本当は欲しかった人生が、陽炎の中でゆらめいて、やっぱり消えて。
でも、そこでしか育むことのできなかったものは確かで力強い。そう信じたいのです。
キャストが見事にハマってました。子ども達が素晴らしかったし、当代一の女優さん達の競演は見応えありました。
樹木希林はもとよりですが、安藤サクラ×池脇千鶴、すごかったぁ。
アキの母親、森口瑤子も絶妙でした。
家族愛というより…
個人的には、家族愛というよりも、貧困などの問題を抱えている者たちに対する世間の冷たさがテーマかなと感じた。
少ない年金で孤独に暮らす老人、その年金を当てにする子供の居ない夫婦、風俗で働く未成年、学校に通えない子、虐待を受けている子、これらの人々は幸せに生きて平和ボケしてる我々の視界には入らない。
血の繋がりは無くても、家族だと思うなら家族だと思う。ただ、血の繋がりがあろうと無かろうと、時に家族は壊れてしまう。
家族の絶妙なバランスを保っていたおばあちゃんが亡くなる。そして治の万引き置引き行為に祥太が疑問を持ち始めたところで「この家族はもうすぐ終わるんだろうな」と予感した。
正直、万引きをしなくても済むくらいの収入があれば、こんなに早く家族が壊れることはなかったと思う。治は愛情はあれど、万引きくらいしか教えられない甲斐性なしの情けない男だが、この情けない姿こそが現実的なのだ。
アラサー女の私としては、信代が警察に詰問され、言葉にならず泣くシーンはかなり心をえぐられた。シクシク涙を流すでもない、わーわー鳴咽を漏らすでもない、無意識に流れ落ちてしまう涙を手で拭っても拭っても涙は止まらない。子供たちにとって自分は母親になれていたのか?自分の自己満だったのか?
そうだ、子供たちに親が必要というより、この夫婦にとって子供が必要だったのだ、と感じた。治と祥太の別れのシーンでも、未練を残しているのは治なのだ。
バラバラになった家族。でも、あのとき、お互いに必要だったのは間違いないのだ、と私は思う。信代が言う通り、楽しかった、のだ。もう一緒に居られないけど。
亜紀が風俗のバイトの時に実妹の名前であるさやかと名乗ったり、治の本名は祥太であったことなどは色々考えた。亜紀はさやかに憧れていたのか?治は自分が成し得なかったことを祥太に託したかったのか?うーむ、皆さまの考察も知りたい。
さすがパルムドール
万引き家族は本当の家族でないけれどアットホームな感じでこれが理想な...
血の繋がりが心の繋がりとはかぎらず、とは言っても血の繋がりほど濃い...
何が正しいかなんて分からない
是枝ブルー
是枝監督が作る画の、なんとも言えない雰囲気が好きで、是枝ブルーとでも言うんでしょうか、いいなぁ。
さて、話題の映画はひたすら闇を描いて話が進んでいく。
もう笑っちゃうほど闇しかない。一層R指定なんかせずに、教育現場でも流して、コレがジャパンだよ、って事を子供にも教えたらいいと思う。港区あたりで生活してる人はほんのひと握り、こんな家族だって意外と近くにいるかも知れないって。
絶望的な話が続いていく中、一瞬垣間見える父性や母性に気持ちが救われる。ラストの演出も心揺さぶられる。
昔は貧しくても慎ましやかに生きられた。今は貧しく慎ましやかにしてたら社会に気づいてすらもらえない。
切ない映画だった。
でもとても長い。途中退席したくなければ直前にトイレを済ませて欲しい。
しかし、是枝監督はいい子役つかまえるなぁ。
この子役達が数年後、また驚くような芝居を見せてくれることを期待してます。
それと、レビュー見てて怖いなって思った。
自分は映画の感想や備忘録に使ってるんだけど、“許す”とか“許さない”みたいなのが混じってて、そう言うのに触れると残念な気持ちになるんだよね。観ない選択だってあるじゃない?それでよくない?
ただ生きる
リリーフランキー演じる治は、一見冴えないコソ泥中年なのだが、運命的に救いが必要な人間に出会い、受け入れ、救済する。
冬の寒い日にアパートの廊下で凍えていた少女。
前夫に殺されるところだった行きつけのスナックの女。
車上荒らし中、パチンコ屋の駐車場で車内に置き去りになっていた赤ん坊。
皆、治が出会わなければ、この世に居なかったであろう人々。
世間の人の目に触れられず、この世を去ってからようやく気づかれる人々。
治は、生活するのに必要なだけ盗み、救われた人々とただ生きる。季節の移ろいと心の触れ合いを糧にただ生きる。
この作品は社会的事件をモチーフに、実際に居る、居たであろう人々に、焦点を当て問題提起しつつも、
治の存在によって、寓話となり、救済の物語になっている。
時代が代わるたび、繰り返し見直されるであろう名作である。
強い女たち
深すぎてわかんなかった
いつまでも胸に残る作品でした
パルムドール受賞もあって、少しのんびり目での鑑賞です。
まずリリー・フランキーを始めとするキャスト達が実に絶妙。彼らの芝居を見ているだけで楽しいのです。
中でも安藤サクラが素晴らしく、ケイトブランシェットが絶賛していたのも納得の演技でした。
そして樹木希林。彼女の芝居には化け物じみたものさえ感じました。実に自然なのに存在感がものすごいんですね。
美術面でも細かい配慮が感じられ、とてもごちゃごちゃした家の中も、なぜか居心地の良い美しさを感じます。是枝作品に見られるあの色使いも良いんでしょうね。
また本当に無駄なカットがなく、最初から最後まで実にきれいに収まっています。ラストの止め方も美しく、全体的にカメラがとても上手だった印象です。
根底には万引等犯罪が横たわっているものの、彼らには家族の絆をとても強く感じ、歪ながらもその家族像には愛おしさすら感じるのです。
どこから見ても優しさに溢れた家族が、この作品では描かれていました。
「捨てたんじゃないです。誰かが捨てたのを拾ったんです」
劇場を後にしてからも、このセリフがずっと胸に残っています。
美しくて、本当に素晴らしい作品でした。
タイトルなし(ネタバレ)
この映画は救われない。
最初が仲のいい"家族"だっただけに、最後の終わり方は非常に胸糞悪い。
でも心のどこかでこうなってしまうのではないか、と心配していた。
普通のような家族。女の子拾ってきて暖かく迎え入れ、そしていつの間にか家族同然として全員楽しい日々を送っていた。
このまま終わるわけが無いと思っていたのだが、やっぱり最後はああなってしまって…。
せめてちょっとだけでも何か幸せに感じる演出があって欲しかった。
でも素晴らしい。
構成、展開、終わり方。全てが完璧で、さすがパルムドールといった映画だ。
今年心に残るかなり上位の映画になることは間違いないと思います。
この映画がつまらん?
この映画のテーマは万引きじゃないですよ。
万引き美化してるように見えます?万引きはダメだよって言ってるようにしか自分は思えなかったですけどね。
この映画のテーマは人と人の繋がり、本当の優しさとは?、家族って?、愛とは?……。今の日本に痛烈な皮肉と嫌味、綺麗なものだけを見過ぎている人たちに真実を教えてくれてる映画です。
万引きや年金の話なんてどうでもいいんですよ。見せたい描きたいのはそんなところじゃないと思いますよ。
絆、ハートですよハート。
奥田さんの娘さんに海で樹木希林さんが、亡くなる前『あなたよく見ると綺麗だね 綺麗よ………』
あの一連のシーンが好きです私……。
深いし本当に優しい映画ですよ………。
この映画良くないって言う人とは自分友達になれませんね。
後半警察とのやりとりなんて正に今の日本、愛の無い上っ面だけで人と話す人たち。そうじゃないだろ?って
スクリーンに向かって思わず声が出そうになってしまった自分。
少なくともこの映画のテーマを理解できる自分は、向こう側の人間じゃない。
とりあえずよかった。
これからも精進して生きていきます。
この映画は良い映画ですよ。
現代のこの国に生きる私たちに向けられた優しさと厳しさ
是枝監督の映画を観ていると不思議と今まで自分が生きてきた中で出会った誰かを思い出す。
あるとき突然夜逃げしていなくなった近くに住んでいた一家の事とか、給食費が払えず学校になかなか来なくなった同級生とか。
ある時まで一緒に普通に過ごしていたはずの子の家庭が少し道を逸れて、普通の生活が出来なくなってしまう。でも、彼らはその後もどこかで生活を続けていて…そんな人たちの事を思い出す映画だった。
そしてこの映画を観て思うのは現在も現実の社会で続く痛ましい事件の数々。犠牲になるのは罪もない人たち。
育ってきた環境や、ふさぎ込まれた世界の中でしか生きてこられなかった人たちがこの社会のどこかにいて、何かのきっかけで爆発するときがやってくるのだろうか。
身内の支えがなくなったとき、辛い状況に置かれた人々はどう生きて行かなきゃいけないのか、同じ時代に生きる者として深く突き刺さる作品だった。
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