「静かなトーンだけど面白い。」万引き家族 てけと2さんの映画レビュー(感想・評価)
静かなトーンだけど面白い。
現代の日本の話でたしかに何処かで起こっている事だと感じさせるリアリティ。時代や国やジャンルが違えば万引きや誘拐の見え方もだいぶ違って見えてくるんじゃないか…アラジンだって万引きするしね。あ、万引きはやったら捕まるしお店も困るし倫理的にも良くない犯罪だってのは理解してます。
良い人は悪い事はしないとか悪い人だから情がないなんてそれだけの話でもなかったなあと。
しょうがないんだが警官の態度は本当に辛辣だと思う。あれ言われたら何にも言えないわって…なるよ。完全に言いっぱなしの世間の声。
人生にケチが1つ付くと生きるのにこんなに大変な事になる。その日その日の事しか考える余裕がない生活。将来を視野に入れられない状態で倫理観を持つのは難しいと思う。悪行はその時払いで善行は保険みたいなものだもの。将来を考えられる状況にない人は保険をかけないもの。
貧乏人は悪人にならないようにじっと耐えてに大人しく小さく小さくなって社会から無視されながら生きろと無言で言ってくるような社会は辛い。どうやったって皆んな一緒の場所でやってくんだから枠から滑り落ちた先が必ず貧困につながるような世の中じゃいけないなぁと思う。
映画の中に馴染みきったキャスト陣、日常から地続きに見える生活を見つめる視線。あり方を考えるためのアンカーになるような映画だった。
登場人物のこれまでや人となりが自然と見えるからか、老人を利用していた偽物の家族という設定の中でそれぞれどうにもならない事を抱えたままでも酷い状況とあたたかい空間を同居させているところのバランスも良かった。
やってる事は応援できないけどなにか外にも救いがほしい。自分たちの関係性の中にしか救いがない。切実な話。