「コメンタリー込みなら★5」万引き家族 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
コメンタリー込みなら★5
「万引き家族」について、どーしても言いたい事がある。というか、是枝監督にどーしても言いたい!というのが正しいか。
監督は作品の方向をあまり誘導したくない、というお考えだそうだが、それにしてもあまりにも優しくないと言うか、「そこは見せても良いでしょうよ!」というところまで秘密なのはいかがなものか。
と言うのもいくつかあって、まずは海水浴場で初枝が「ありがとうございました」と口の動きだけで告げるシーン。これ、海外では口の動きを読めないので字幕が出るんだそうです。ある意味、日本より優遇されてる!絶対見逃さないもんね!
「食い物にしてる」という亜紀のセリフに象徴されるように、柴田家の家計は初枝の年金でほぼ賄われている。年金目当て、と思われても仕方ない状況で、なお「ありがとうございました」という感謝の言葉が初枝の口から出ることで、この疑似家族の絆が伝わるシーンじゃなかろうか?
みんな離れた所ではしゃいでるんだし、そこは声付きでも良かったと思うんだよね。
祥太の乗るバスを見送り、いても立ってもいられず走って追いかける治のシーン。
散々「父ちゃん」と呼ばれる事を希望していた治に、祥太と決定的な別れが訪れた場面でもあるけど、バスの中で祥太は声にならない状態で「父ちゃん」と呟く。
そこも海外では字幕あるんですよ!出してよ、日本でも!
バスを追いかける治だけでも、じんわりと胸に迫るものがあるけど、「父ちゃん」って最後の最後に呼ぶんだ、と思ったらまず号泣でしょうよ!
で、極めつけ。エンディングのりんちゃんの視線の先に、走ってくる治がいるらしいのだ。信代に教わった数え歌を歌いながら、「本物の家族」という牢獄に囚われたりんちゃんを求め、走る治。姫を拐いに来た王子様じゃないか!冴えないオッサンだけどな!
「選んだのは、絆でした」というコピーに恥じない完璧なシーンだろうに、なんて勿体ない!多分ここで「あんまりよくわかんなかった」みたいなレビュー書いてる人にも伝わったよ!出し惜しみし過ぎ!観客に任せすぎ!
家族ってすごく曖昧で、普遍的な人間の最初の組織なのに個人の経験する家族の形はとても少なくて、自分が「普通」と思ってることが実際普通かどうかなんて怪しいもの。
こんな「家族」があっても良いんじゃないかと思うのも、こんな「家族」は認められないと思うのも、全ては自分の価値観次第。
だからせめて柴田家のそれぞれが「アリ」だったのか「ナシ」だったのか、どう思ってたのか教えてくれても良いと思うんだよね!
出来たら監督はどう思ってたのか、感じたいんだよね!本当に!
是枝監督らしい、と言えば確かにそう。わかってて観たからこそコメンタリーまで鑑賞して大満足。だけど、やっぱりもうちょい監督の思いを感じたかった!
もっとグイグイ来てくれても良いんですよ?