「方向性がズレている」万引き家族 Λibo.uryyy0さんの映画レビュー(感想・評価)
方向性がズレている
是枝監督の映画は苦手だがこれは面白いだろうと期待して観た。映画「パラサイト 半地下の家族」が面白すぎた為。万引き家族は内容似てるらしいので。
だが結果的に期待外れ。是枝監督のセンスにやはり違和感覚える。私的にそんな監督は他にも世界的な名監督にも多々いるので単に自分の感覚が変なだけだろうが、そこは気にしない。
主人公の男が不細工なうえ演技が単調で、警察の尋問受けてる時が特に残念だった。こういう難しいシーンでは演技力足りない俳優。表情が型にはまっててリアルさの点で物足りない。無難にそこそこの演技をしてるだけなので、この役者である必要性を全く感じない。このリリー・フランキーという俳優を是枝監督はよく起用するが、この役者で満足してるのはセンスおかしい。
貧困がテーマゆえジメジメゴチャゴチャした部屋で納得だが、見せ方もっと工夫して欲しい。例えば映画パラサイトの半地下一家も貧乏ゆえ家ジメジメゴチャゴチャだがある種美しさがあった。そう感じさせる映像。これぞ映画だと思わせる。確かに汚いんだが趣を味わえる。韓国と日本の家事情の差とかの問題ではなく映像の差。
いかにも貧困日本人の家らしさは表現できてるが、そのまんま過ぎる。ドキュメンタリーではなく映画として作ってるなら、観る気にさせるよう工夫して。貧困日本人の家らしさの表現なんて別に一つではないと思う。このままでいくとしても映像処理とかでもっと何とかならんかな。当然処理してるだろうが足りない、もしくはズレてる。何かの記録映像なのかという感覚に陥る。映画としての映像を楽しみたいのに。でも本作以外でもそんな映画沢山あるので別にいいと言えばいいが。
性風俗店が出てくるのが日本らしい。あと主人公の妻が夫よりだいぶ年下なのが若干なんか微妙にロリコンぽくて日本らしい。妻もっと若くするとか徹底しても良かったのでは。だがこの妻役は演技上手いので不満なし。むしろ彼女の演技力のおかげで本作は救われてる。他に良かったのは婆さんや店主の爺さんだがこの人達は上手くて当然。ただ家庭内で婆さん1人だけヤバイ雰囲気を醸してる為いつか大問題起こしそうなトラブルメイカー的な予想してしまったが、あんだけヤバさ醸しておきながらあっさり死んだ。期待してただけにガッカリ。必要以上にヤバさ醸すとミスリードされた気分。婆さんにターゲット絞って見てしまうので。家族全員ヤバさ醸してるならともかく。
子役は居候の小さい女の子が個性的な顔立ちが超可愛らしくて良かった。ちゃんと影もあるので役に合ってる。主人公の息子の少年も個性的な味ある顔なので期待したが、演技パッとせず印象薄くて全然イマイチだった。だが演技含めこの子の良さを引き出せない監督が悪い。父役(主人公)と同じく無難に演技しすぎで観ててつまらないから心揺さぶられる事もない。もっと演技に光るところあれば良かったのに(父も同様)。日本の子役は棒演技が多いけど本作の子役はマシだと思った。是枝監督の「誰も知らない」の柳楽優弥も棒演技ひどかったが圧倒的な魅力があって演技とか超越した存在感あったから本作もあのレベルの子役だったら多少はマシな映画になっただろう。ちなみに「誰も知らない」もイマイチだが柳楽の魅力のみで何とか乗り切った印象。
是枝監督作で毎回思う事だが間のとり方が嫌だ。観てて退屈な間の開きがチラホラある。もちろん上手いと思えるとこもあるが下手のほうが目立つ。下手に感じるのは単に私の好みじゃないからだけど。視聴者をいかに退屈させないかを重視し実現できる監督は有能だと思うが是枝監督はそれが無い(あるかもだが私は感じない)、だから独りよがりな監督だと思ってしまう。別に独りよがりでも映像美で魅せる等あれば逆に名作なり得るがセンス超重要だから是枝監督にはハードル高そう。間を長くとってもそれを感じさせない空気感や映像等あるなら良い。あと必然性をちゃんと感じられるとか。是枝監督はそれらもあまりなく、もしくはあってもズレてるせいで独りよがり感しか感じず観てて退屈。
あと見づらい構図、若干イラつく構図がチラホラある。見づらいからイラつくのだ。こんな構図にする理由は芸術志向だからか。平凡な映画にしたくないとか。監督の頭の中に視聴者の存在は無いのかな。狙ったような構図はあざとい。パラサイトは構図が素晴らしい映画だがあざとさは全く感じずただただ構図に酔える。名監督なら当たり前に出来る事なんだろう。監督の技量の差か、単に私の好みの問題か。彼が作ってるつもりの映像美を映像美とは全く感じないから、是枝監督とはセンスが何もかも合わない、で済む話だが。
是枝監督の映画は見事に好みじゃないからこの監督は無能とすら思う。あざとさなど視聴者にバレたらマズイよ。その点パラサイトの監督もあざとく作ってるだろうがそれを感じさせない技量もあるのでは。それでこそプロ。たまに是枝監督の映画は、技量不足なのに図に乗った学生作品のように感じる時がある。もちろんプロだから上手いと感じる部分もあるが、それ以上に欠点が多いから帳消しになってしまう。
本作はカンヌ受賞作だがカンヌやアカデミー賞とれば名作とは思わない。審査員より自分の感覚信じるべし。まあ本作の良かった点を探すとすれば風俗店での描写は凄く良かった。けど風俗店だけ良くてもなという気分。万引きシーンもそこそこ楽しめた。だが万引きという行為が観てて興味深いというだけの話で是枝の技量関係ない気がした。せっかくの万引きシーンをもっと面白く釘付けにさせてくれるなら別だが、是枝にそこまで期待するのは酷だろう。あと主人公の妻と同僚どっちが退職するのか2人で相談しろって発想はいい。そんな状況悲惨ゆえ面白い。
人物の相関関係が複雑。実は血縁関係なかったり。複雑にする必然性が本当にあるんだろうか。複雑にする事で面白くなってるのか疑問。家族と思わせて実は…と驚きの真実を明かしたつもりでも、それまでの話で心揺さぶられる程の盛り上がり等なく淡々と物語が進んでいた為、ふーん他人同士だったのか程度にしか感じない。
というか万引き家族の話なら、普通に血の繋がった家族にしといた方が面白いし深みも出る気がする。しょせん他人同士ならば今まで見せられた父子の万引き犯罪連携プレーもたいして心が傷まないのだが。本物の父子でやってるから観てるほうも複雑な感傷が残るのであって。是枝監督は感覚ズレてると思う。私的には話を複雑にすればするほど鋭さとか迫力とか減る感じするのだが、本作は元々それらが薄いからマズイ。単純で突っ走って欲しかった。そのほうが万引き家族の迫力が増す。しかし無能監督だと内容が単調になりかねない為、つい複雑のほうへ逃げてしまうのかな。構図にしろ設定にしろ、平凡さを脱したいのかなと感じるが、それなら先にまず人の心について学んで欲しい。当然学んでるかもだがズレてる?基本がズレたままなのに上級目指してしまってるみたいな上昇志向だけは感じる。
終盤の警察の事情徴収時のやりとりが退屈。色々明るみになっていく面白いシーンのはずなのにつまらない。監督の技量不足のつまらなさを安藤サクラの一流の演技力だけで乗り切ってる感ある。妻が泣くあたりのシーンが長くて間延び感があり、気分が徐々に高まる所だからあえて長いんだろうが、演出でもっと短く表現して伝えられる気が。単に長く映すという安易な手法取ってるのが嫌だ。現実味とかリアル表現を意識してるのかもだが、ドキュメンタリーや記録映像的なのを観たい訳じゃないので、そこは演出力でもってリアルさ表現した場面が見たいのだ。現実の時間経過と映画内の時間経過は違うので、短く表現できる箇所は短くして欲しいという私の好みの問題だが。
妻は子供の事言われて泣いてるし血の繋がり無いとはいえ子供達に結構愛情持ってる風だから、妻を主役にした妻視点で物語描いた方が感動できるのでは。それにリリーフランキーは主役の器じゃない事に加え、この夫に深みを感じないから余計この映画に心動かない。主人公は別に良い人である必要は全然ないが個性は欲しい。なのに役柄的に個性もあまり感じないので何故この男が主役なのか不思議。
ラスト近くの「父ちゃんおじさんに戻るよ」という父のセリフは凄く良かった。なので疑似家族の設定でも別にいいかもと最後は思えた。このあたりはリリーも言い方表情ともに凄く上手い。最後だから頑張ったのかな。息子が乗ったバスの追いかけっぷり見ると彼なりに愛情は深かったのかな。ここも凄く感動した。それまで淡々な男だったのに最後に突然ああいう感じになるのは手法ズルいけど上手い。あまり面白い映画じゃないが最後にちゃんと感動させてくれた。終わり良ければ全て良し。と言いたかったのだが、この後エンドロールの音楽がウザく、もっと普通の音楽のほうが味わい出ると思った。音楽さえも狙いに来てるあざとさを感じて、ラストでの良さがココで帳消しにされた。
不満の多い映画ではあるが風俗店のとこだけは凄く出来が良くて、監督の力量を見れたのは良かった。風俗店をテーマに映画作ってくれたら絶対観に行く。あの客役の池松壮亮の演技も最高だったが出番少なすぎた。客の池松や店内などの撮り方も完璧だと思えたし映像も良くて私的にかなり好みだ。という事で、むしろ風俗店以外の当監督の映画は観る気しない。私的には是枝監督の風俗店以外の映画に面白さを見出すのは困難だろう。ラストの出来の良さで持ち直した感はあるが、それならもっと早くして欲しかった。やれば出来るのに姑息に独自感狙いすぎて結果的にズレちゃう感じなのかな。万引き家族という超興味深いテーマなのに方向性がズレてる為つまらない出来になってるのが残念。面白い映画を作れない監督という印象が更に強まってしまった。同監督の「誰も知らない」と本作は若干似てるが本作のほうが出来が多少マシだとは思う。そして映画パラサイトと似てると聞いたが全然似てないのだが。あっちは娯楽志向で本作は芸術志向という印象。だがパラサイトのほうが映像美や構図の素晴らしさがあり芸術性の高さを感じる。是枝監督が狙ってるであろう芸術性が私的には単なる陰気臭さとして映る。せめてユーモアを感じさせるような点が多少なりともあれば良かったがそれも皆無。だからなおさら魅力が薄い。
是枝にはいつか面白い映画作ってくれるよう待っている。自国映画を批判して韓国映画褒めるのは正直微妙な気分もあるのだ。アカデミー作品賞を韓国映画がとったので、とるなら先にまず日本映画だろうという思いもあったが、日本映画の衰退激しいから韓国に先越されてしまったのだ。この前見た半導体競争の番組思い出した。日本映画の復興を願ってるので是枝監督にも期待はしてる一応。
2023/01 VOD