「本当にある世界です」万引き家族 Mauさんの映画レビュー(感想・評価)
本当にある世界です
家族に万引きを教えられ虐待を受け
家出をし水商売で働いた経験を持つ私からしたら
全てのシーンやセリフが刺さりました。
万引き家族は犯罪者の集まりです
映画の世界を体験してない、見た事ない人が観たら何も響かない映画かもしれません。
「犯罪家族」「虐待家族」「仮面家族」
毎日虐待を受け続けると判断能力も鈍ります
誰が悪いのかも分からなくなります
信代がりんに言った「叩かれるのはね、りんが悪いからじゃないんだよ。好きだから叩くんだよなんて言うのは嘘なの、好きだったらねこうやってするの 」とハグをした時は涙が止まりませんでした
仮面家族で育った亜紀は存在意義が見つけられず自分の居場所を探し続けています
体を求められているだけでも必要とされる事に喜びを感じ、おばあちゃんが自分の変化を察してくれる事に幸せを覚えるシーンが印象に残りました。
家族によって傷つけられた者同士が自然と集まり
生活しているだけなのに愛情が生まれている
やられた者だけが分かる痛み
冬に出会った6人家族、最初は歪だったのに
花火や海のシーンでは本物の家族のようでした。
犯罪をしていて長く捕まらないはずがありません
祥太は駄菓子屋のおじさんが教えてくれた事で自分が悪い事をしているんだと気付かされますが生活していく上でやらなければならない、妹にはさせちゃいけない葛藤の演技がとても素晴らしかったです。
池脇千鶴さんの演技も素晴らしく
どのセリフも腹が立ちました。笑
「本当の家族だったらそんな事しないでしょ」
「子供にはね、母親が必要なんですよ」
確かに犯罪は駄目です
全てを経験している私からしたらどの家族も最悪です
愛情があるからまだよく見えているだけで犯罪を教えるなんて本当の愛情ではありません
治と信代が働いておばあちゃんの年金でも十分に生活出来るはずなのにしない理由は犯罪者は楽な方に逃げるからだと思います
きちんと働いて稼ぐよりも盗む方が簡単
誠実に生きるよりも邪魔者を殺す方が簡単
ひとつの嘘を隠そうとまた嘘をつくのと同じでどんどん悪い状況に自ら堕ちていく
おばあちゃんを床下に埋めた時に治が祥太に「おばあちゃんは最初からいなかった」と言った顔が怖かったです
一部の情報だけ報道され真実が隠されたまま
りんちゃんは本当の家族に返されまた同じ悲劇を続けるラストがリアルでした
親権がある人間がどんな人であるかを見る前に法的に「親だから」という理由だけで誰も守ってくれないのが今の日本の制度です、というメッセージ性を強く感じました。
この映画で何も響かなかった方はとても幸運です
親は選べませんから普通は
大好きな樹木希林さんの作品で
古傷が少し癒えました、観てよかったです
誘拐までは出来ませんが私も困っている子供がいたらすぐに助けてあげようと思います。