「どの目線から見るかで社会は全く違って見える」万引き家族 Rosaさんの映画レビュー(感想・評価)
どの目線から見るかで社会は全く違って見える
つきことさんのレビューに触発されて、遅まきながら目黒シネマで鑑賞。
現代の家族とは?人と人が一緒に生きることとは何なのか?格差社会、家庭内暴力、児童虐待、高齢化社会…現代の日本が抱える社会問題を凝縮した形で見せながら、しかもどこか明るさや人の優しさ、親しみなども感じさせる秀作でした。
カンヌ映画祭や日本アカデミー賞で、この映画が高く評価されたことに、現代の都市が抱える問題の根深さを痛感するとともに、でもそれを直視しようとする「まっとうな人」がまだまだ多くいることに、一縷の望みを感じました。
ロードショーの時期はとっくに終わり、WOWOWでも放映されるというタイミングでしたが、目黒シネマは朝一の回でも満席でした。観に来ていた人は、60代ぐらいの人が多かったけど、その中に混じって20〜30代ぐらいの若者も何人かいたことが、印象的でした。
先日の池袋駅近くで起きた交通事故の加害者がいまだに逮捕されず、マスコミでも「さんづけ」で報道されていることに対して、ネット上で「上級国民は社会で優遇されてる」と騒ぎになっていると聞きます。こうした問題も、「物事を誰の立場から見るか」によって、見方が大きく変わる問題だと感じます。「万引き家族」は、世間一般から弾き出されてしまった弱い立場の人たちが、一般の社会規範から見たら「違法な行為」によって生計を立てていますが、「こうした人たちの目線から社会を見ると、こう見える」というのを徹底して描いており、しかも映画として高く評価されているという点がとても素晴らしいなと思いました。
日本映画らしい、大げさでないリアリティ重視の表現、役者さんたちの真に迫る熱演、とりわけ安藤サクラさんが終盤の警官による取り調べで心情を訴える場面の演技は、「演技」を越えて役になりきっているように感じました。