「家族が、ほしくなった」万引き家族 sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
家族が、ほしくなった
是枝監督が描く「家族」の作品はいつも心に沁みる。
そして、彼が投げかける家族の理想の在り方は、おそらく私が理想とするそれとよく似ていて、それでいつも切なくなるんだと思う。
肩書で見えなくなってしまう本質とか。一緒に過ごす時間の大切さとか。お互いを真摯に見つめることの難しさとか。
本作は、ものすごく極端な家族の話であった。倫理的に問題ありありなんだけども、貧しくも温かくて小さな幸せと笑いに溢れており、ある瞬間は奇跡のように「美しく」すら見える、という皮肉さ。
ただ、単なる美談に留まらないのがこの話のキモであり面白いところ。
成長と老いにより、家族のバランスは少しづつ狂っていってしまう。
リリーフランキー演じる治は子供がそのまま大人になったようなオヤジで、ダメさ全開なんだけど憎めない。安藤サクラ演じる信代もちょっと人生に疲れた力の抜けたおばさん、くらいに思ってたんだけど後半の展開でいい意味で裏切られた。
もう信代の事情聴取のシーンは思い出しても涙が出てくるし、治が面会に来るシーンの信代の「本当に幸せだったからこんなんじゃおつりがくるくらいだよ」という言葉にも号泣。
もちろん犯罪であることも問題があるのもわかってるんだけど、どうかこの家族を元に戻してやってくれないだろうか、一緒に生きる道も探してあげてくれないだろうか、と願わずにはいられない自分がいる。
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