「誰に感情移入するかで見え方が変わる作品」万引き家族 ケバブさんの映画レビュー(感想・評価)
誰に感情移入するかで見え方が変わる作品
いままで是枝裕和監督の作品は広瀬すず主演の『海街diary』しか観た事がありませんでした。観る側のレベルが問われる系の作風なのかなという印象があり、無意識のうち避けていたのかもしれません。
本作においては、ストーリーとしては理解できるが、監督からのメッセージをどこまで理解できたのか、自信がありません。この物語は、登場人物ごとにストーリーがあり、それぞれにエンディングがあり、それぞれが異なる感情を抱いて幕を閉じるものであると認識しました。ゆえに、誰に感情移入するかによって鑑賞後に抱く感情が異なるような気がします。
わたしの場合は松岡茉優役の亜紀に感情移入しました。彼女の視点で物語を追うと、最も寂しい想いをしたのは彼女ではないかと感じ切なくなりました。真実がどうであれ、彼女が警察から突き付けられた言葉はあまりに酷なものでした。ラストのシーン、かつて住んだ家の前に佇む彼女の姿は戸惑いと哀しみ、あの時間が真実であってほしいという僅かな希望、願望が消化し切れていない姿として見えました。彼女が人を信じる心を取り戻すのには多くの時間を要するのではないかなと感じました。
作品を通してのベストカットは、やはり樹木希林さんの海辺のシーンはだと思いました。血のつながりがあったとしても、皆があの感情に到達できるというわけではないので「家族」という概念を改めて考えさせられました。
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