「ずっと余韻が残る、ずっと考えている」万引き家族 kaokaoさんの映画レビュー(感想・評価)
ずっと余韻が残る、ずっと考えている
安藤サクラが気になって、公開してからずっと見たいと思ってて、やっと見ることができた。
きっと考えさせられる映画だろうから、見終わった後に一緒に見に行く人と感想を言いあったりしたいな〜
なんて思っていたけど、実際に見た後に、言葉が出てこない。出てこない。ぺらぺら感想を述べることができなくて、、、
ずっと考えていた。でもいまだに感想がまとまらない。
なので、レビューを書きながら、感想をまとめたいなと思った。
かなりネタバレ含んでいるので、映画を見た方だけに見てもらいたいです。
最初から万引き親子のシーン。
ああ、そうそう万引きだよね〜そういう映画だもんね。
という感じで始まった。
汚い平屋の一軒家。狭い家にひしめき合って生活する人々。
老婆、おやじ、女、少年、娘
一部始終がリアルで、貧乏生活が画面いっぱいに映し出されていた。ゴミのようなたくさんのもので埋め尽くされた家。
食事中に爪を切ったり、決して美味しそうじゃない鍋物を
みんなで突っつきあいながら、唾を飛ばしながら、汚い食べ方をしていた。言葉遣いも汚い。五感で感じるものはまさに『汚い』
それがリアルに感じられた。においや、味、までが伝わってくるようだった。生きるためには犯罪でも犯す。嘘もつく。反省は・・・・・しない。だってそうしないと生きていけないから。そして血のつながらない家族を繋ぐための犯罪でもある。
お店に並んでいる物は、まだ誰のものでもないから、お店がつぶれない程度ならやってもいいんだよ、と教えられる。
最初っからどぎつい内容。
普通に考えて、人としてあかんやろ!という感じ。
でも、だんだんとその集まりの集合体から、表面上のものでない、お互いの思いやり、愛情あることがわかってくる。
万引きした食べ物をみんなで分けて食べる。
全員そろっての食卓シーンが結構多くて、それも家族観がでてた。
普通の家族でもなかなか夜みんなで過ごすことない。
虐待されている女の子が家族の一員になるところから、ますます、
それが感じられたし、あ、この家族はただ、目の前にある
かわいそうな子、人をほおっておけないんだと。それはもしかしたら、自分自身と照らし合わせて救ってしまうのかもしれない、でも単純にそんな気持ちなんだな。って。社会的にとか、そんなのは二の次。なんだって。
子供が捨て猫を拾ってきちゃう。拾ってきたけどおうちで育てるのは難しいけど、でもほおっておけない。そんな子供みたいな
幼稚だけれど、純粋な心を持ってるんだなって。
それからも、この家族は、それぞれが生きるために、犯罪だとしても、偽りの家族に頼り、頼られ、伴に生活をする。本当の名前を知らなくても、何をしてきたのか?しらなくても、一緒に暮らす、伴に生きる。その居場所、その時間を大事にしているんだろう。
どういうわけか、段々とメルヘンな世界に誘導されている気分になってきた。おとぎ話のような感じでもある。この矛盾した関係、
生活に心地よささえ覚えてしまった。ずっとこのまま矛盾した、この人たちの幸せが続きますようにと思ってしまった。
ところが、少年がだんだんと成長する中で今の自分を客観的に見れるようになってきて、今やっていることはよくないんじゃないか。
と感じるようになってきたところから空気が変わってくる。
少女に万引きをさせたくない、そもそも万引きって良くないんじゃないか?学校は家で勉強できない子が行くところと教えられてきたけど・・・拾った教科書を興味津々で見る。学校が気になってきたんだろう。見ている側も、メルヘンな世界から、じわじわと現実に引き戻されていくのがわかった。
海のシーンは本当に良かった。
お父さんと少年の海の中でのやり取り。
おばあちゃんと安藤サクラのやりとり。
おばあちゃんの皆が海の波打ち際で並んでるのを見ながら
つぶやくシーン。
幸せなシーンなんだけど、なんだかスッと寂しい何とも言えない気持ちになった。
この後、おばあちゃんの死をきっかけに、今までの生活が全てなくなってしまう真実がどんどん明るみになってくる。それぞれの人の本性がでてくる。あのつぶやいたシーン。おばあちゃんがキーマンだったんだなって思った。あの家族はおばあちゃんでつながっていたんだ。
そして、おばあちゃんが、全て元ある場所にもどしてくれたのかなと思った。
幻想的な世界の家族から、しっかりと日の当たる世界にそれぞれが
スタートをきっていったような気がした。それぞれが辛い現実が待ち構えているけど、この家族で暮らした時間があったからきっと
乗り越えられると思う。それは、確かな愛がこの家族にはあったから。愛を持っているは困難にも立ち向かっていけると思う。
現実的にやってしまったことの罪はお母ちゃんは代表してしっかり、償い。
少年は施設で暮らしながら学校に通うようになり、
お父ちゃんは、一人暮らしの普通のおじさんに戻り
少女は元の親に戻された。
少女は幸せだったのか?って暗い気持ちになるという感想があったけど、私は、この少女が母親にこっちにおいで、服買ってあげるからといわれたときに、首を横に振ったのをみて、
この子はしっかり生きていけると確信した。
あの家族と出会って暮らして愛情をもらったから、強くなった。
眼の光が戻った。自分を大事にすることを教わったんだと思う。
たとえこれから何があろうともこの少女は幸せになれると思う。
数え歌を唄ってあの家族との幸せな思いでをずっと抱いて生きていくのだと思う。
万引き家族、本当に最高でした。ありがとう。