「家族愛というより…」万引き家族 ピーコさんの映画レビュー(感想・評価)
家族愛というより…
個人的には、家族愛というよりも、貧困などの問題を抱えている者たちに対する世間の冷たさがテーマかなと感じた。
少ない年金で孤独に暮らす老人、その年金を当てにする子供の居ない夫婦、風俗で働く未成年、学校に通えない子、虐待を受けている子、これらの人々は幸せに生きて平和ボケしてる我々の視界には入らない。
血の繋がりは無くても、家族だと思うなら家族だと思う。ただ、血の繋がりがあろうと無かろうと、時に家族は壊れてしまう。
家族の絶妙なバランスを保っていたおばあちゃんが亡くなる。そして治の万引き置引き行為に祥太が疑問を持ち始めたところで「この家族はもうすぐ終わるんだろうな」と予感した。
正直、万引きをしなくても済むくらいの収入があれば、こんなに早く家族が壊れることはなかったと思う。治は愛情はあれど、万引きくらいしか教えられない甲斐性なしの情けない男だが、この情けない姿こそが現実的なのだ。
アラサー女の私としては、信代が警察に詰問され、言葉にならず泣くシーンはかなり心をえぐられた。シクシク涙を流すでもない、わーわー鳴咽を漏らすでもない、無意識に流れ落ちてしまう涙を手で拭っても拭っても涙は止まらない。子供たちにとって自分は母親になれていたのか?自分の自己満だったのか?
そうだ、子供たちに親が必要というより、この夫婦にとって子供が必要だったのだ、と感じた。治と祥太の別れのシーンでも、未練を残しているのは治なのだ。
バラバラになった家族。でも、あのとき、お互いに必要だったのは間違いないのだ、と私は思う。信代が言う通り、楽しかった、のだ。もう一緒に居られないけど。
亜紀が風俗のバイトの時に実妹の名前であるさやかと名乗ったり、治の本名は祥太であったことなどは色々考えた。亜紀はさやかに憧れていたのか?治は自分が成し得なかったことを祥太に託したかったのか?うーむ、皆さまの考察も知りたい。