「見えない花火と、蜜柑、ビー玉、雪だるま」万引き家族 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
見えない花火と、蜜柑、ビー玉、雪だるま
初枝おばあさん(樹木希林)の年金と、日雇い労働(リリー・フランキー)やクリーニング工場のパート(安藤サクラ)、風俗店での仕事(松岡茉優)、それに万引きなどの犯罪で暮らしている一家。
一家には小学校学年ぐらいの少年(城桧吏)もいるが、学校に通っていない。
そんな一家はある日、ネグレットされた幼女(佐々木みゆ)を見つけ、いたたまれなくなって、一緒に暮らし始める・・・
といったところから始まる物語で、家族という最も小さな社会集団を撮り続けてきた是枝裕和監督の集大成ともいえる作品。
フィルムで撮影したと思われる(エンドクレジットに「フィルム現像」という役割があった)画面は、これまでの是枝作品の中では、もっとも暗く沈んだ画面で、台詞も耳をそばだたせないと聞き取れないほど不明瞭。
雑然とした一家の家のなかは、ごみごみとしていて、リアル。
どちらかというとあまり好きなタイプの画づくりなのだけれど、観ているうちに、登場人物から目が離せなくなってきます。
「盗んだのは、絆でした。」という謳い文句や、一家団欒の雰囲気が漂うポスター写真などから、わかりやすいヒューマンドラマにみえるように宣伝されているが、内容はそうではなく、家族という最も小さな社会集団と、いわゆる一般社会という大きな社会集団(終盤登場する警察が代表)とを対比して描いています。
そこで描かれるのは、正しいことと正しくないことの境界線のあやふやさと、「正しいこと」を決めつける危険さ。
たしかに、一家がやっていることの多く(そう多くないのかもしれない、成人した3人は何かしら仕事をしている)は、犯罪だったとしても・・・
演出で、はッとさせれたシーンがいくつかあり、是枝監督らしいなぁと思ったのは、
中盤の墨田川の花火大会のシーン。
縁側に、ばあさんと日雇いがふたりならんで音を聞いているところへ、ほかの皆が集まって来て、音を愉しむ。
たぶん、この映画の肝。
花火は見えない、見えないけれどそこにある、音でわかるじゃない、あるってことが・・・
見えないけれど、あるもの。
そして、それは美しいものであるはず。
美しい花火を見えないところで音だけ聞く、というのは、花火の観方としては「正しくない」だろうけれど、それはそれでも善いのではありますまいか。
その他、同じようなモチーフを用いる演出も是枝監督らしい。
少年が幼女の万引きを庇って、自らが店員に追いかけられるようにして、高架道路から飛び降りるシーン。
飛び降りた少年の姿は見えず、その代わりに道路に散らばる蜜柑が映し出される。
少年の中からはじけ出たような、丸い蜜柑・・・
もとの両親ももとに戻された幼女が眺めるビー玉の数々。
色とりどりの丸い綺麗なビー玉・・・
丸いものは、もうひとつ。
雪の日の夜に、日雇いと少年のふたりがつくった雪だるま・・・
丸いものは、何かの象徴。
こういうモチーフをうまく使うあたりが是枝監督らしいですね。
わかりやすいヒューマンドラマドラマではないですが、これぞヒューマンドラマといえる映画で、心にずっしりと来ました。
貧しいのに当の本人達は貧しいことを全く苦にしてない むしろ楽しんでいる毎日を 笑い飛ばしながら生きている。生活の内容は………良いにせよ悪いにせよ。言葉を人に伝える煩わしさ。今の時代、人に何かを説明する、その伝えたい内容を相手は上っ面だけで理解して、話の内容を半分も理解せず勝手に自分都合で理解、解釈して、頼んでもいないのに話しの内容を常識非常識に区別する。今の人たちは常識っていう響きが美しく聞こえるんでしょうね(笑)。目の前に見える真実と見えない真実。上手い書き方しますね(笑)………自分もこの映画の家族、連中のように(笑)毎日を過ごし暮らせたら。精進します。正に花火のシーンは物語ってます。素晴らしいレビューですね(笑)………ご馳走様でした。