「深く重い…モヤモヤ感が残る」万引き家族 erieeさんの映画レビュー(感想・評価)
深く重い…モヤモヤ感が残る
是枝監督のモヤモヤ映画は鑑賞後も永遠に答えの出ないモヤモヤのループに陥る
沢山の社会問題が詰め込まれ、瞬きしてる間に大事な情報を見逃してしまうのではと思うほどスクリーンに釘付けになる。
善悪を問えば悪なのかもしれないが、そこに至るまでのプロセスを考えると社会…国…行政の至らなさにまで及ぶような問題作ではないかと思う。
身寄りのない独居老人・貧困・虐待・ネグレクト・非行少女・前科者・不倫・タカリ・万引き…
愛に飢え社会からはみ出した者達が集まり一緒に暮らす。それはまるで家族であるが実の家族は選べないが彼等は選んで家族になっているのだから絆は固いと信代は言った。
貧しくても笑いの絶えない戦後の家族のようだ。
古くて狭くガチャガチャと物が溢れかえる家の中は物凄いリアルな生活感。
それぞれが好きなカップ麺を食べコロッケをほうばり、時には鍋を囲む。四方八方から鍋に手がのびる。
老い先短い初江の年金で一家は暮らす。
浩は怪我がきっかけで職を失い、信代はリストラされた。そんなある日、万引きした水着をリンに着せ一家は海水浴に出かけた。
初江にとっては最高に幸せな瞬間だったと思う。
幸せなままコロリと死んだ初江の遺体を床下に埋め何食わぬ顔で初江の口座から預金を引き出し、家捜しする浩と信代を祥太はどう思ったのか?
駄菓子屋のおじさんに妹に万引きさせるなよと言われてから祥太は彼等に疑念を抱く。
祥太が捕まった事で一家の秘密が明らかになる。
リンの誘拐や初江の死体遺棄…浩と信代の前科についても。
亜紀はただ優しく甘えられる初江と一緒に暮らしていただけで初江が亜紀の家族にお金を集っていた事は知らなかった。
信代は自ら罪を認めたが…
拭っても拭ってもじわじわと流れる涙の意味が痛いほどわかる。沢山言いたい事はあるよね。
子供が産めないから誘拐したとか子供に何て呼ばせてたとかお母さんて呼ばれて嬉しかったかとか…攻撃的な言葉…
「子供を産めば母親になれるんですか?」
「産まなきゃなれないでしょう。」
…そんな意味で言ってるんじゃない。そうじゃないでしょ…そうじゃないでしょ…
愛情を持って育てなければ母親じゃないでしょ…
だけどね。どんな親でも子供にとっては親なんだよね。悲しいけど。
未来のある子供にはきちんと陽のあたる生活をさせてあげなきゃいけないね。
樹木希林は入れ歯を抜いて迫真の演技。
みかんの皮までしゃぶりつく姿やお麩をムニャムニャ食べたかと思うとおしるこの噛み切れない餅を亜紀の器にペチャっと投げ入れたり…本当に自然体で良い。
老後を考えた時
こんな風にあたたかい家族団欒を送る事が出来るのだろうか?
偽物でもいいから家族に囲まれて死にたいと思ってしまった。