劇場公開日 2018年6月8日

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「「ありのまま」の家族の一例、に見せるすごさ。」万引き家族 Atsuhitoさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5「ありのまま」の家族の一例、に見せるすごさ。

2018年6月10日
iPhoneアプリから投稿

こんなに生々しいってあるだろうかと思った。お互い苦しい状況の中親しい2人のうち片方が辞めなくてはいけない状況での会話や、血の繋がらない家族の狭い家の中での愚痴、そしてその会話の中身の生々しさ。そんなところを描く映画ってなかなか無いと思う。

中でも安藤サクラさんの取り調べのシーン、特に厳しい言葉にふと涙がでてしまうのを必死にごまかそうとするシーンや、「拾ったんです。誰かが捨てたのを。」の一言の場面は、完全に演技の域を超えていたと思う。あれはもう、「映画」を観に来ていると分かっている僕にとっても映画ではなく「現実」だった。

エンディングに向かって収束しないストーリー展開も、作品によりリアリティを生んでいると思う。監督が「こうなってほしい」というものを捨てて描かれた結果だと思うし、それによってこの映画が「メッセージのある映画だったなあ」ではなく「問題提起」として観る人それぞれの解釈を促すような作品になったのかな、と思う。

こういう悲しい気持ちになるけれど観なくてはいけない映画というものが、商業主義の世の中で最高の賞をとるということにも感動した。この映画を多くの人が観るということは、「泣ける」とか「面白い」映画がどうしても好まれる今ものすごく大きな事だと思う。

あとひとつ、樹木希林さんが食べ物を食べるシーンのなんでしょう、あの独特な雰囲気は。

Atsuhito