劇場公開日 2018年6月8日

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「弱いとは」万引き家族 Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5弱いとは

2018年6月9日
iPhoneアプリから投稿

大きな賞を取ったり、右だ左だと何かと話題の本作

見てみると実に是枝監督らしい、非常に抑制の効いた演出が切実で暖かくて苦しいお話だったと感じた

端的にいってこの映画はこの世界のどこかに実在する 弱者たち のお話だったと思う
弱者 というのはただ貧困に苦しむ人達という意味ではなく、この社会で生きていく中でまるで蝕まれるように人としての 弱さ をかかえてしまった人達として描かれているところが、この映画のミソだった
柴田家は確かに貧困が大きな引き金となって 万引き という犯罪に手を染めてはいるけれどもこの映画はそういった行為に対して決して良しとしているわけではない かといって断罪しているわけでもない
ただ粛々と彼らが生きようとし、必死で家族でいようとする様を見せていくことで見る側に この日本に というか この世界に 確かに弱者は存在していて、彼らは傷ついたり喜んだりしながら確かに生きているのだ ということを見る側に訴えかけてくる
確かに彼らはいびつで、間違っているかもしれない
それでも確かにこの世界で生きている
このあまりにも当然な事実が、観客の大多数がそうでであろう 正しい人達 の前にズッシリと突きつけられる

相手の気持ちになって というと簡単に聞こえるけど実はそれは凄く難しいし特にこの映画で描かれる弱者の領域に正しい人達が踏み込むのは容易ではない

その冷徹さを描くように 正しい人達を代表して出てくる池脇千鶴や高良健吾の丁寧で優しい言葉の一つ一つに傷ついていく安藤サクラの名演が特に印象的だった

弱者は確かにいる そして彼らに思いを馳せた時に
この社会は彼らを救えるのか という問いに対して
そうでありたい と思わせてくれる
そんな苦しい一本だった

Movieアパート