「現代日本を映す鏡」万引き家族 shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
現代日本を映す鏡
貧困という絶対的なファクターを背景にして、児童虐待、不条理な解雇命令、日雇い作業員の労災問題、年金の不正受給等、今の日本社会を投影している。中でも取り分け児童虐待の事件が生々しいだけに、安藤サクラの「子供を産んだから母親なのか?」というか台詞が頭に残る。産んで育て始め、その過程で母親として自らを律し、教育し、日に日になるものではないのか?産んだだけでは言葉の便宜上の意味でしかない。リリー・フランキーの茫洋として捉えどころのない雰囲気が何とも言えない全体のリズムを作っている。決して演技が上手い訳ではないのだが、存在感が無いようで有る。評価のしづらいタレントだ。流石に安藤サクラの演技は素晴らしかった。もはや日本を代表する役者と言えるかもしれない。是枝監督もこの作品を持って、漸くブレイクスルーした感じがする。既に消え去った家族というものはフェイクの中でしか存在しないのかもしれない。家族に対する取り返しのつかない哀しい憧れを誰もが持っているのだろう。
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