「キーワードが聞き取れない」万引き家族 加賀武志さんの映画レビュー(感想・評価)
キーワードが聞き取れない
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最後のシーンの意味も見ただけではわからなかった。
しかし一番重要なのはそのひとつ前のシーンの最後のせりふである。
日本の劇場では誰も聞き取れなかったろう。
カンヌでは「字幕があるので皆聞き取れた」のである。そして感動したのである。すべてを諦めた裸の大人をみて子どもが絆を実感したせりふである。
観客は、本当の心のつながりが生じた瞬間を目の当たりにする。
たぶんこれでパルムドールを獲ったのだろう。
私は、原作本をみてせりふを確認し、不覚にも涙した。
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加賀武志さんのコメント
2018年6月5日
遠慮して書いたけど、何の事かわからないので思い切ってハッキリ書きます。
信代(安藤さくら)の泣きの演技とか、留置所で「(家族ごっこが体験できて、罪をかぶっても)おつりがくる(ぐらい幸せだった。)よ」とのセリフとか、いろいろあるが、一番は修(リリーフランキー)と翔太(城桧吏)の関係の行方が最大の見所だろう。
子どもを誘拐して家族として懸命に育てようとしても最後まで親子にはなりきれなかった。
しかし、故あって共同生活が崩壊し、修が父親としてふるまう事を諦め、素の自分を翔太にさらし、別れをつげたあと、翔太は治との関係の意味に初めて気がつき、バスの中で振り返り「何か」をつぶやいた。それがこの作品の最大の見所である。
その「何か」は残念ながら劇場ではまず聞き取れない。
是非、意識して聞き取って欲しい。この映画の意味がわかるだろう。
もし聞き取れない場合は、原作本で確認する事をお勧めする。
蛇足だが、安藤さくらは俳優奥田瑛二に感謝すべきだ。奥田のストイックで難解な演技の影響を受けつつも軽やかに演じ、世界の名優ケイトブランシェットを泣かせた。