「 【戦争による死が日常生活の中にある恐ろしさ。戦争の愚かさを戦時場面一切なしにシニカルに描き出すイスラエル映画。】」運命は踊る NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【戦争による死が日常生活の中にある恐ろしさ。戦争の愚かさを戦時場面一切なしにシニカルに描き出すイスラエル映画。】
ー 三幕構成の映画。ー
<第一幕の印象的な場面>
・ミハエルとダフナ夫婦に息子ヨナタンの戦死が突然軍役人から告げられる。呆然とするミハエルと失神するダフナ
・葬儀段取りを事務的に説明する従軍ラビ
・ミハエルの兄、アヴィクトルの訃報の文を推敲する姿
・ミハエルが施設で暮らす母に息子の死を告げに行った際、フォックストロットのステップで踊る男女達
・ヨナタンの死が誤報だったと告げられ、激高するミハエルと落ち着きを取り戻す妻、ダフナ
<第二幕の印象的な場面>
・イスラエル国境付近ののどかな検問所前をゆっくりと歩むラクダ。暇を持て余すヨナタン達若き兵士
・夜中、検問中にある小さな出来事がきっかけで起こる惨事。それを”戦時中には何でもありうる、何もなかったことにする”という上官
<第三幕の印象的な場面>
・冒頭のミハエルと妻ダフナの遣り取りで、ヨナタンの死が仄めかされる。誤報ではなかったのか? そして、真相を語る淡々とした映像
<戦争に起因する死が日常の中にあるイスラエルの現状が、静かなトーンで語られる反戦映画の秀作。>
ミハエルを演じるリオール・アシュケナージー(テルアビブ生まれ)とダフナ演じるサラ・アドナー(パリ生まれのイスラエル人)の演技も印象的であった。
追記:サラ・アドナーはこの作品の少し後に公開された「彼が愛したケーキ職人」でも拝見した。少し、シャルロット・ゲーンズブールを想起させるアンニュイな雰囲気が印象的な素敵な女優さんである。
<2018年9月29日 劇場にて鑑賞>
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